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ジェノサイド 価格:¥ 1,890(税込) 発売日:2011-03-30 |
「このミス、今年の発売日はいつですか?」
近所の書店の親父に。
「えーと(12月)10日だったかなあ」
「じゃ、とりあえずランクイン確実のこれ買っていきます」
「これ、入るかい?」
「絶対ですよ」
もちろん手にとったのは高野和明「ジェノサイド」。
結果は「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリベストテン」ともに第1位。予想が当たったことを自慢しているわけじゃない。誰だってわかる。どう考えても今年は「ジェノサイド」の年。
まずタイトルが周到。大量殺戮を意味するわけだし、舞台がコンゴとくれば伝染病のお話だと読者は想像する。エボラ出血熱がモデルかな、と。
でも、物語は“大量”に“殺戮”するのではなく、“ただひとつの個体”を“救う”経過が中心。それなのになぜジェノサイドを名のっているかがうまいのだ。
『任務遂行中に、見たことがない生き物に遭遇したら、真っ先に殺せ』
という指令がありながら、その生き物を日本に連れてくる展開にはうなった。作戦名ガーディアン(守護天使)はおみごと。
帯には「世界水準!」というフレーズが使ってあって、日本のミステリはとっくに世界水準じゃん、と思ったけれど、時間をかけて綿密に下調べを行い、二転三転するストーリーをユーモアまじりに語る……というスタイルは確かにグローバルスタンダードかも。日本の作家は忙しすぎるからね。
特に、ある目的のためにコンゴに潜入した傭兵たちが、「出アフリカ」したあとに空中戦になる力業は、こりゃディーヴァーっぽい。「コフィン・ダンサー」並みの展開。一気読みしました。おもしれー。
なにより『法律用箋(リーガル・パッド)』『薬になりそうな(ドラッグライク)』なんて単語が物語に自然になじんでいるあたり、つくづくとうまい。
難があるとすれば、アメリカの前政権批判に(完全に首肯するとはいえ)もうひとひねりほしかったところか。ブッシュが使えねー野郎だったのはみんな知ってるしねぇ。