もうすぐ統一地方選。夕張のそばに位置する
「同じ規模の」
「同じ産業構造の」
「同じような多選の首長がいる」
……幌岡市という舞台設定。要するに夕張のモデル小説。
佐々木譲のダイアリーで、多くのディープスロートたちから情報提供をうけていることは察せられたが、しかしその情報にふりまわされるのではなく、意外なほどお行儀よくまとめられている。
ただ、高級娼婦出身のコミュニストや、選挙カーに嫌がらせのためにつきまとう女性たち、なんて存在はモデル小説ならではか。チームの立ち上げが意外にしょぼい場所だったり、怪文書的内容をとくとくと載せる地元ミニコミ誌の出現など、あるある。
財政破綻した自治体の首長が、(給料などがあきれるほど下がるのに)なぜもう一期やることにこだわるのか、あたりのミステリ的興味でひっぱり、参謀として有能な広告屋が、幌岡の選挙にこだわった理由も読ませる。
まあ、登場人物たちがもう少し生臭くても……いやいや、わたしはちょっとそれはいやかも。しかも、ここに出てくる羽柴秀吉が今度の夕張市長選で勝つかもなんて予想を聞くともう。