事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「百年の誤読」~愛される理由

2008-06-23 | 本と雑誌

18610828 誤読も佳境に入ってきた。前回の「気くばりのすすめ」篇はこちら

 さあ、ベストセラーが良書でなくてもよい、それどころか、はっきり言って良書であることが邪魔な世の中なのではないか、そう感じさせる究極の一冊の登場だ。どうぞご堪能を。

愛される理由」 二谷友里恵 平成2年

豊崎 全篇これムカつく本ですね。本を開いて二ページ目、<日本では学校にも車で通い>ときたもんです。

岡野 しかも、駐禁の女王。で、どこに駐車しているかといえば、なんと大学正門並びにある接骨院の急患用の路上駐車帯。この人の車があったら、急患大変困ります。

豊崎 そのことを別に悪いこととも思ってない。常識なさすぎ。高速道路で時速180㌔出すし。こんなヤツ、交通刑務所にでも入れてやれ。

岡野 決めつけも激しい。ドイツに行くと、高速道路の料金所で長い列ができていた。それもこれもみんな車を止めるたびにエンジンも止めるからだ、と。で、友里恵は怒ってるんだけど、これってノンアイドリングを実践してるってことだろ。80年代からすでに環境を考えた運転をしてたドイツ人は褒められこそすれ、けなされる謂われはないよ。

豊崎 偏見もはなはだしいですよね。そんなこんなですっかりドイツが嫌いになったもんだから、ニューヨークに戻ってきてホッとすんのね。そこで一言。<まわりの人々は誰も、あのフガフガ鼻にかけたような不快な発音で喋ったりしていない。巨大なソーセージもここにはない>。ホント、失礼でヤな女。こいつのどこに“愛される理由”があるんだっつーの!

……いやーすごいですね。かえって読んでみようと思わせますもの。いったい郷ひろみの“自分”というものはどこにあったのだろう。そういえば昔つとめていた学校で、職員が生徒におすすめの本を紹介する企画があり、何を血迷ったか体育主任が「愛される理由」を挙げ「いろいろと考えさせてくれるので……」って確かに考えさせてはくれるけどさあ(笑)。ちなみにそのときわたしがお薦めした文章を思い出せるだけ再録。

ジャズ・カントリー」 ナット・ヘントフ著 晶文社 講談社文庫

Jazz 『きっとこんな場所でこんな人間が紹介する本なのだから、お説教くさい本だと思うでしょう。大当たりです。全篇お説教の嵐。ミュージシャンをめざすニューヨークの白人少年が、(たくさんのお説教をうけながら)旅を続ける。それだけの話。わたしは夢見る十代の頃に読んでめちゃめちゃに感動してしまいました。若かったなあ』

こんないい本の100倍は売れちゃったわけだな二谷。あーあ。

次回は「マディソン郡の橋」と「ハリー・ポッター」

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「キング・アーサー」King Arthur(’04)

2008-06-23 | 洋画

 

わたしはどうにも間男の話が苦手で(なんでだ)、だからアーサー王、ランスロット、グィネビアの三角関係のドロドロはいやだなあと敬遠していた。でもこの映画は「円卓の騎士たち」の素直な映画化ではなくて、中世以前、ローマ帝国治世下のイングランドにアーサー王が実在した……という仮定で描かれている。そのせいか間男関係はあっさり。ちょっとホッとする(だからなんでだ)。その分エクスカリバーなどのエピソードもなし。なんだ、もっと早く観ればよかった。活劇としてはなかなか。監督は「トレーニングデイ」の人。
グィネビアを演ずるのはキーラ・ナイトレイ

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「百年の誤読」~気くばりのすすめ

2008-06-23 | 本と雑誌

Kikubari 豊崎、岡野の罵倒芸シリーズ「知的生活の方法」篇はこちら

 今号から、重量級の罵倒が始まる。ベストセラーが良書とシンクロするものではない、という法則は昭和50年代から始まったようだが、その傾向を如実に示すのはこの本ではないかと思う。(きわめつけは次号で特集します)

気くばりのすすめ」 鈴木健二 昭和58年

豊崎 他人に気くばりをすすめる前に、お前が気ぃくばれよ。そういう本です。

岡野 <気くばりは技術である>って説いてるんだけどね、その技術の説明自体はほとんどないんだ。で、たまにしてるかと思うと、間違ってんの。松葉杖の人がいたら、シートの真ん中じゃなくて端のほうの席を譲れ。端には手すりがあるから……それはいいんだよ。ところが調子に乗って目の不自由な人を助けるケースにまで口出ししてるでしょ。それが大きな間違いなんだよ。

豊崎 <声をかける前に、かならず目の不自由な人の手を握る>って説いてますけど、知らない人にいきなり手を握られたら、誰だってすごく怖いに決まってる。いわんや、目が見えない人をや。自分がそうされたらっていう想像力がまるで欠如してるんです。

岡野 女性に対する気くばりにも欠けてるよなあ。<女性は考えることがあまり得意ではない><考えるというのは、人間にとって一番面倒なことだから、それはさっさとやめにして、こどもができたのをきっかけに母の座に坐って楽をしよう……という魂胆が見える>だってさ(嘲笑)。

豊崎 <女性独特の見栄と打算と狭いものの見方>とかね。その手の記述を拾い出したら十や二十じゃききません。キャバレーでもてるにはどうしたらいいかってとこで<美人を無視してブスに話しかけると、美人はムラムラと嫉妬してかならず寄ってくる>。あんた、生涯でモテたこと一度たりともないんでしょう?もてない男は女性蔑視によって自尊心を慰めることが、よぉーくわかる本なんですよ。

……まず、気くばりができる人間ならこんなタイトルの本は出さないだろう。NHKのアナウンサー時代、ソフトに見えながらも、陰にちらつく傲岸さは若かったわたしにだって感じることができた。紅白歌合戦を「オレの番組だ」とばかりに振り回した“気くばり”(引退する都はるみに「わたしに一分だけ時間をください」とアンコールを強要した事件は「紅白最大の茶番劇」と呼ばれている)によって、はたしてどれだけまわりが迷惑をこうむったか。気づいていないのは本人だけなのだろうな。

次回は「愛される理由

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