事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「百年の誤読」~気くばりのすすめ

2008-06-23 | 本と雑誌

Kikubari 豊崎、岡野の罵倒芸シリーズ「知的生活の方法」篇はこちら

 今号から、重量級の罵倒が始まる。ベストセラーが良書とシンクロするものではない、という法則は昭和50年代から始まったようだが、その傾向を如実に示すのはこの本ではないかと思う。(きわめつけは次号で特集します)

気くばりのすすめ」 鈴木健二 昭和58年

豊崎 他人に気くばりをすすめる前に、お前が気ぃくばれよ。そういう本です。

岡野 <気くばりは技術である>って説いてるんだけどね、その技術の説明自体はほとんどないんだ。で、たまにしてるかと思うと、間違ってんの。松葉杖の人がいたら、シートの真ん中じゃなくて端のほうの席を譲れ。端には手すりがあるから……それはいいんだよ。ところが調子に乗って目の不自由な人を助けるケースにまで口出ししてるでしょ。それが大きな間違いなんだよ。

豊崎 <声をかける前に、かならず目の不自由な人の手を握る>って説いてますけど、知らない人にいきなり手を握られたら、誰だってすごく怖いに決まってる。いわんや、目が見えない人をや。自分がそうされたらっていう想像力がまるで欠如してるんです。

岡野 女性に対する気くばりにも欠けてるよなあ。<女性は考えることがあまり得意ではない><考えるというのは、人間にとって一番面倒なことだから、それはさっさとやめにして、こどもができたのをきっかけに母の座に坐って楽をしよう……という魂胆が見える>だってさ(嘲笑)。

豊崎 <女性独特の見栄と打算と狭いものの見方>とかね。その手の記述を拾い出したら十や二十じゃききません。キャバレーでもてるにはどうしたらいいかってとこで<美人を無視してブスに話しかけると、美人はムラムラと嫉妬してかならず寄ってくる>。あんた、生涯でモテたこと一度たりともないんでしょう?もてない男は女性蔑視によって自尊心を慰めることが、よぉーくわかる本なんですよ。

……まず、気くばりができる人間ならこんなタイトルの本は出さないだろう。NHKのアナウンサー時代、ソフトに見えながらも、陰にちらつく傲岸さは若かったわたしにだって感じることができた。紅白歌合戦を「オレの番組だ」とばかりに振り回した“気くばり”(引退する都はるみに「わたしに一分だけ時間をください」とアンコールを強要した事件は「紅白最大の茶番劇」と呼ばれている)によって、はたしてどれだけまわりが迷惑をこうむったか。気づいていないのは本人だけなのだろうな。

次回は「愛される理由

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