事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

the good shepherd

2007-11-03 | 洋画

The20good20shepherd アメリカ国民のため謀報活動に身を捧げてきたエドワード・ウィルソン(マット・デイモン)。青年時代、イェール大学でエリートコースを歩んできた彼は軍にスカウトされ、第二次世界大戦中の戦略事務局(OSS)で謀報活動に従事。終戦後、OSSの延長線上に創設されたCIAの一員となり、ソ連との「冷戦」に身を投じる。そしてCIA最大の汚点といわれたピッグス湾事件の失敗の原因を究明する過程で、国を守るか家族を守るかの選択を迫られることに……。

「なぜCIAにはtheがつかないのか、って質問されたよ。GODにtheはつかないでしょう?って答えておいた」

「ヒトラーを支えたのは軍人だと思うか?違うね。公務員だ

お楽しみな名セリフ満載な映画。
デ・ニーロとは名コンビであるジョー・ペシが、キューバに利権をもつマフィアを演じていてエドワードにこう質問する。

「ユダヤ人には信仰があり、アイルランド人には故郷がある。私たちイタリア人には家族と教会があり、黒人(ニガー)でさえ自分たちの音楽をよりどころにしている。……君たちWASP(White Angro-Saxon Protestant)には何があるんだね?」
マット・デイモンは応える。
「アメリカ合衆国だ。この国だ。あなた方はこの国のビジターにすぎない」

Foto09 しつこいぐらいに皮肉な展開も仕込んである。大学時代、女装して笑劇に主演するような陽気な男が、キャリアを積むうちに「石でできた男」The man made of stoneと呼ばれるくらい寡黙になる。そんな彼に東側から贈られた呼び名は「Mother」。

 イェールにおいて秘密クラブにエドワードはスカウトされる。このクラブはエスタブリッシュメントへのリクルートコース。加入の際に求められるのは全員の前で裸になり、自分の秘密を告白すること。彼の秘密は幼い頃に父親の自殺を隠蔽したことだった。その父親がエドワードに最後に言った言葉も皮肉だ。

「決してウソをつくな。友達を騙したら信用してもらえない。誰もいなくなり、安全ではなくなる。

最大の皮肉は、この作品のタイトルが意味するところだろうか。

「わたしは、良き羊飼いである。良き羊飼いは羊のために命を捨てる」(新約聖書

D78c5bc05fa50d65ae84b5f12f9ff338 ……スパイ映画としても一級品。ホテルの一室の画質の粗い写真から、その所在地を特定していく過程もスリリング。役になりきるために体型まで変える完璧主義(デ・ニーロ・メソッドと呼ばれる)で俳優たちに尊敬されるロバート・デ・ニーロ監督作品だから、彼を敬愛する俳優たちが大挙して出演していて壮観。なかでも、エドワードの片腕になるジョン・タトゥーロが渋い。

コメント (3)
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大根課長

2007-11-03 | 社会・経済

Chocolat 本日のお題シリーズ②

「大根2本」で町課長停職に

朝日新聞2001年11月14日 社会面より

「おめだべ、持ってったの」→「おれでね」思わず去る~秋田・阿仁の無人販売所

 道ばたの野菜の無人売り場から秋田県阿仁町の農林課長(54)が料金不足のまま大根を持ち帰った。不足分200円を払うつもりで戻った売り場でとがめられ、慌てた課長は思わず立ち去ってしまった。後で届けたものの、うわさは山間の小さな町に、すぐに広まった。「万引きまがい」と浜田章町長。町は12日、課長会議でこの課長を停職40日(10日付)にした。

 町によると、農林課長が大根を「買った」のは10月26日、無人売り場の1本100円の大根を、300円だけ料金箱に入れて5本持ち帰った。午後、千円札を崩して不足の200円を払おうと現場に足を運んだが、売り主の農家の主婦(60代)に見とがめられた。

「おめだべ、おれの大根持っていったのは」
「おれでね」
 走り去った車のボディーに「阿仁町」の文字。ナンバーを控えられた。

 課長はその後、改めて売り場に戻り、200円を支払ったが、「役場職員が大根を盗んだ」とのうわさは町を走った。
 2日、農林課長が「申し訳ない」と浜田町長に辞職願を出した。町長は助役ら町幹部の意見を参考に処分を決めた。料金不足のまま大根を持っていった点と再訪したのに逃げ去った行為が「過失」とされた。

…………変でしょ?いろんな意味でこれ変だよなー。最初に読んだときからどうもふに落ちなかったが、再読したらますますわからなくなった。

1.まず“事件”自体がよくわからない。課長が不足分のお金を持ってきたのはいいとしても、ばあさんが何故いきなり大根をこの課長が「持っていった」と確信したのか。

2.町長が「万引きまがい」ときつい言葉を持ちだして糾弾しているのは町民向けのポーズだろうけれど、はたしてそれだけか?

3.停職40日、とは「量刑」としてむちゃくちゃ重すぎないか。

4.だいたいこの課長もいきなり辞職願かおい。「おれでね」とタンカをきって(笑)、公用車で走り去った根性はどこへやった。

5.第一このオヤジ、細かいのが300円しかないんなら、3本持ってきゃいいじゃないか(笑)。わざわざ戻って金入れに来るぐらいなら。どうもこの辺、事情があるような気もするんだよなあ。

6.いくら小さな町とはいえ、わずか一週間で「役場職員が大根を盗んだ」なんていう噂が「町を走る」はいくらなんでもオーバーだろう。

Ccl2  ……別にこの課長を擁護するつもりはないのだ。私がむしろ問題にしたいのは朝日新聞の方なのである。過失に「」を付けているところをみると、この課長を本気で指弾したいわけでもないようだが、記事全体が粗雑なのは記者の力量の問題であるにしろ、このネタを全国版に載せるその心根(世間の嘲笑を誘おうとしているんだろう?)がどす黒くはないか。

しかも記事からは片田舎のほのぼの事件として高所から見下ろす尊大さが透けて見え、どうにも居心地が悪い。朝日らしいエリート臭がプンプンするのだ。それからもう一つ。山形版も顕著だけれど、心温まる町のネタ、を採りあげるのはいいけれど、まずは事件を追ったり調査報道をきちんとやった上でのことにしてくれないだろうか。んもーひたすら地方版ってつまらないからなー。

……実はこの町には町長派と反町長派に分かれた壮絶な反目が存在するらしく、この事件はその背景なしには語れないのだった。そちらはいずれ特集するかも。

画像は「ショコラ」
世の中で自分のことを一番エライと思っている民族はフランス人と中国人。これはまちがいのないところ。強力な農本主義と中華意識が、徹底して料理にこだわるその背景にあるだろうか。カトリック云々の問題は私が無宗教なのでよくわかりませんが。

Juliette_binoche1  で、その保守的で尊大なフランスの村に流れてきた母娘。ジュリエット・ビノシュ(「イングリッシュ・ペイシェント」「存在の耐えられない軽さ」)と「ポネット」のちび。二人がチョコレート屋を開いて村の保守性を僅かに覆していく、というお話。美食好きなくせに宗教的戒律のために断食なんかするフランス人がかわいい。魔女伝説やジプシーへの偏見もとりあげて、ただ甘いだけのおとぎ話にはなっていない。でも、ちょっとびっくりする程のハッピーエンドはどうだろう。組合帰りの中年男には胸焼けするほどの甘さだったが。

 久しぶりに変なメイクをしていないジョニー・デップがジプシー役で。いやもうホントにかっこいい。ビノシュは妖艶。監督夫人(知らなかった)のレナ・オリンは「ナインス・ゲート」でもデップと組んでいたが、「存在の~」ではビノシュとも組んでいたのだった。石井ふく子=橋田壽賀子組みたいなもんだろうか。岡本信人かデップは。

 暗ァい「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」「ギルバート・グレイプ」のハルストレム監督作品ということで敬遠する向きもあろうと思いますが(私だ私)、考えてみりゃこの旦那「アバ・ザ・ムービー」で出てきた人だったのだ。妻が感動していた「サイダーハウス・ルール」も観なきゃ。
                                    ギターを弾くデップは必見。かっこいいんだホント☆☆☆★★★

コメント (4)
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授業料の取り立てマニュアル

2007-11-03 | 学校事務職員

Kazahana 本日のお題シリーズ①
「授業料の取り立てマニュアル/是か非か」
いきなり勝手なシリーズを立ち上げてしまいました。久しぶりに事務職員プロパーな問題をピックアップしてハードに考えていってみよう、というわけ。まあ私のことだからそう素直なパターンにはならないだろうと思いますが。反論異論お待ちしています。

第一弾はこれ、2001年10月30日付毎日新聞朝刊から。

授業料取り立て:滞納生徒にバイト勧告 千葉県立高事務長会
 千葉県の県立高校142校の事務長会(秋葉裕会長)が、授業料を滞納する生徒に対して学校側がアルバイトを勧告するなどの「授業料滞納対策マニュアル」を作成していたことが29日分かった。親が授業料を払えないなら生徒自らが働いて納めろ、とも受け取られかねない内容で、秋葉会長は「行き過ぎていた。削除も検討したい」と釈明している。

 マニュアル(A4判29ページ)が作成されたのは今年3月。滞納期間(1~6ヶ月)を6段階に分け、「未納者一覧表を作成し、担任に協力を依頼する(未納1ヶ月)▽「出席停止・退学処分の予告により事態の重要性を保護者、生徒双方に認識させ、早期納入を督促する」(滞納4ヶ月)▽「退学処分を告知する」(滞納6ヶ月)-など、滞納期間に応じた対応策を示している。また、アルバイトについては、滞納期間を示さずに、滞納者が発生した場合、校内に「授業料納入促進委員会」を設置し、生徒指導部や教務部の教師が生徒に勧告するよう求めている。
 県教委財務課は「あくまで選択肢の一つとして示したものと理解しているが、不適切な面もあり今後指導したい」と話している。                     【福沢光一】
◇元高校教員で評論家の佐高信さんの話
教職員が取り立て人になったようなもので、学校や教育にはなじまない。教職員は奨学金の増額を求め、まず教え子を守ることが筋だろう。

……さあどうでしょう。いきなり難問。微妙なところでしょう?一概に切り捨てられるものでもないような気もするし。確かに記者や佐高信が言うように「親が払えないなら子が払え」と受けとられかねない内容。それは確か。県立高事務長会(どうもこの団体胡散臭い)が正直なところ何を企図していたのか今ひとつ分からないのだが、好意的に考えれば“支払いの優先順位において、学校の授業料の位置がこの不況下どんどん下がっている(これは確かだ。日々実感している)ことに危機感を抱いた事務方が、切羽詰まってやむをえず打ち出した苦肉の策”こうだろうか。意地悪くとると “サラ金のノウハウを調子こいて導入した噴飯ものマニュアル”こうも取れる。

Kazahana2  さあ、どう見ます?

 結論を出さずに逃げるようですが、私はとりあえずこう思いました。論点が少しずれますが、義務教育ではない高校には【退学処分】という一種の“切り札”があるからこそ、一層慎重にかまえる義務を負っているのではないか、と。
 この事務長たちも、一度ぐらい夜の家庭訪問をして「ところで集金のことなんですけど……」と切り出すあの気まずさを味わうべきだとも。
 それにしても、このネタ、やっぱり内部告発なのかな。

※給食費未納問題は「払いたくない」シリーズで。

画像は「風花」(‘01)
恒例、組合帰りの山形フォーラムで。浅野忠信と小泉今日子が主演して相米慎二(「翔んだカップル」「お引越し」)が演出。私好みの三人がそろって面白くないわけがない。相米は年寄り(失礼)を使うのがうまいのだが、今回も香山美子からいい味を引き出している。「あ、春」の時の三林京子+藤村志保+冨司純子の強力トリオにはさすがにかなわないが。佐賀出身の文部官僚、という一種の中途半端な役を、浅野は相変わらずうまく演じている。フォーラムでは男の観客は私だけ。コイズミのファンはどうした!
                                  ちょっとオバサンが入ってきたキョンキョンがまたいいのに☆☆☆★★★

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