中島らもは本当に面白い。面白い以上に、病気がうつる感じ。ひいきにしているのは別に巨顔同士だからというわけではない。
初めて目にしたのは「ぴあ」に連載されていた(というより広告だったのだが)「啓蒙かまぼこ新聞」。異様なキャラと関西弁の炸裂。次がいきなり大メジャー、朝日新聞の「明るい悩み相談室」。関西版オンリーだったのに、あまりのおかしさのためだろう、全国版に転載され、おかげで週一回山形の地方公務員も楽しめるようになった。
朝日は、ごくたまにこんな冒険をする。独善的すぎて記事はそう好きではないけれど、毎朝いしいひさいちとしりあがり寿の新作が読めるんだし。
この朝日で一気にブレイクし、次に吉川英治文学新人賞をとったのがこの「今夜、すべてのバーで」。若い時分から睡眠薬、風邪薬(ブロン……今も問題になっている)、そしてアルコールに耽溺して来た経歴を活かした、というか、酒とは、そしてアル中とは何かを考えさせる傑作。酒飲みの亭主をもって苦労している女性二人に一冊づつプレゼントしたら、それはもう、ものすごく喜ばれた。何だったのだあれは。
この本は十年ほど前、妻が入院している時に病室で読んだのだが、あまりにはまった状況のため、自分の肝臓を押さえながらページをめくった憶えがある。特に、中盤にアルコール依存症判定テストが載っていて、これが他人事ではないのだ。ちょっと長くなるけれど無断転載します。次回は電卓のご準備を。