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事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

光る君へ 第31回「月の下で」

2024-08-19 | 大河ドラマ

第30回「つながる言の葉」はこちら

万城目学の新刊「六月のぶりぶりぎっちょう」は楽しい本だった。直木賞をとった「九月の御所グラウンド」につづく、歴史上の有名人登場シリーズ(勝手に名付けました)なのだが、1作目よりも万城目らしいユーモアがぎょうさん仕込まれております。直木賞万年候補のころのような、息苦しい感じが消えている。だからもっとはやく直木賞をやればよかったのに(森見登美彦にもはやくあげてください)。

さて、そのぶりぶりぎっちょうには中篇が二作。表題作と、「三月の局騒ぎ」で、この三月が実にいい。女子寮に入寮した主人公は、偶然手にした夏目漱石の「坊っちゃん」に夢中になる。特に坊っちゃんと女中の清(きよ)の交流がすばらしいと。わかりますね。坊っちゃんのあのラスト、

「だから清の墓は小日向の養源寺にある。」

は日本文学史において燦然と輝いている。

で、その女子寮には「キヨ」と呼ばれる伝説の十二回生がいて、主人公と同室になる。そして、主人公がかつてネットにアップしたエッセイを評価し、もっと書けとはっぱをかける。主人公はキヨのブログを読み、その面白さに驚嘆する。

ある日、主人公はキヨが橋の上で

「春はあけぼの!」

と絶叫するのを見る。そして彼女は消えていく。

おわかりですね、キヨが誰をモデルにしているか。うまく夏目漱石とつなげたなあ。

清少納言が藤原定子を慰めるために枕草子をしたためたのと似た経緯で、まひろは物語を書けと藤原道長に迫られる。彼のリクエストは多分に政治的なものだが、帝という読者を提示されてまひろは書き始める。

「いづれの御時にか」

まさかあれほど長大なお話になるとは本人も思っていなかったでしょうが。

第32回「誰がために書く」につづく

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光る君へ 第30回「つながる言の葉」

2024-08-05 | 大河ドラマ

 

第29回「母として」はこちら

ひどい週末だった。土曜は柿の消毒、日曜はお寺さんの庭木の剪定。どちらも熱中症近く消耗。しかも、終わってシャワーを浴び、エアコンのきいた部屋で休んでいたら、両足が攣る。いわゆる、こむらがえり。痛かったー。

大雨の影響はまだまだ大きく、ポンプ場やカントリーエレベーターが浸水してしまったので、庄内の農産物はいったいどうなることか。

そしてこの時点では知らなかったのだが、元同僚が現役で亡くなってしまった。わたしといっしょに、一日に3回保健室に体重を測りに行ってたバディだったのに。

思えばそのころは、身長180センチの事務職員と170センチの教務主任、そして亡くなった160センチの技能士がガチンコで体重勝負をやっていたのである。体重を意識したおかげで、1年半で15キロも減量できたのだった。

特別支援学級の節分イベントで、彼が赤鬼、わたしが青鬼で教室に突撃したこともあった。上半身裸のわたしたちに、子どもらはマジで豆を投げつけてくるので痛かったなあ。明日は通夜。

気持ちは落ちこみながらも「光る君へ」。

和泉式部登場。演じているのは泉里香。「正直不動産」の銀行員だった人ね。正直言って彼女の高名な日記も源氏物語も枕草子もまともに読んだことのないわたし。だから彼女たちの作品が、政治的暗闘の道具としても機能するあたり、ダークで暴力的な物語にすると宣言した大石静さんの面目躍如だと納得できる。

三人の女性の性格は大きく違っている。

漢文の素養があり、娘の学習でいらつき(わからない、ということがわからない人だったのだと思う)、しかし物語を紡ぐことに熱中する紫式部。

計算などせず、思うがままに歌を詠む和泉式部。

藤原定子(高畑充希)への思慕だけで枕草子をつづり、だから政治的に危険な存在と“なってしまう”清少納言。

いやはや、よくできた物語だ。

第31回「月の下で」につづく

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線状降水帯Ⅱ

2024-07-29 | 大河ドラマ

〈速報|山形大雨〉孤立は解消も被害甚大 酒田市大沢地区

PART1はこちら

まだ、あの大雨の影響が。

特に旧八幡町(映像の大沢地区はその一部です)や遊佐町の被害が甚大だ。近所の人たちや同僚から聞かされ、そして見せられる(スマホの写真)状況のひどさと来たら……

でも、いちおう市街地であるうちの学区でも、通り1本違うだけで状況は全然違う。土地の高低や川との距離などが影響しているんだろうけど、ここまで露骨に顕在化したのは初めてだ。

 

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光る君へ 第29回「母として」

2024-07-28 | 大河ドラマ

第28回「一帝二后」はこちら

先週のオンエアから1週間経ったのか。長かったなあ。それはもちろん酒田や遊佐に降った大雨のせい。えらいことだったんですよ。

まず、市街地に通うわたしは油断してます。職場に着いてクルマのドアを開け

「え」

すでに靴がズブズブに濡れています。そっから先は大騒ぎ。学校が避難所になる、三者面談は中止になる、翌日は休業日になる……冠水、ということをみんななめています。あ、俺だけかな。道路が水で光っていたら、とりあえずそこを通るな、ってこと。アンダーパスは絶対に警戒しないと。

あれから3日経っても、山間地はまだ復旧していません。自衛隊の車両は往来し、ヘリや飛行機が飛びまくり。名物の刈屋の梨はだいじょうぶなんだろうか。

そんな時にわたしは草刈りを終えたあと、映画「ビブリア古書堂の事件手帖」を見ていました。ネタバレになるんですけど、このお話は「違う男の子を妻がはらみながら、そのことを受け入れる」話になっています。

ちなみに、この原作はベストセラーになっているけれども、テレビドラマも映画も残念ながら成功しているとは言い難い。ドラマでは明らかに主役の選択を間違えているし、映画では栞子さんを演じた黒木華が“無垢なのにセクシー”という設定に合っていない(オタクの意見です)。

アバンタイトルで佐々木蔵之介が、実は藤原道長の娘である賢子に、変顔をする(父親らしい行動)ことで退場するあたりの展開はすばらしい。父として、彼はやるべきことはやったということだろう。 

第30回「つながる言の葉」につづく

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光る君へ 第28回「一帝二后」

2024-07-21 | 大河ドラマ

第27回「宿縁の命」はこちら

ひとりの天皇に二人の皇后(中宮)がいることはこの時代までなかったのか。いや歴史知らずのわたしだから、天皇にはありとあらゆる手段を使って後継を用意してもらうのが最大の責務なのかと思っていたので(そう思っている人は今もたくさんいる。週刊新潮とかの読者やら)、ちょっと驚いた。

しかしこれは現在に続く本妻とお妾さんの相克なんでしょ?こうなると大石静さんの筆は絶好調だ。

たくさんの子どもが登場する。その最初はもちろん紫式部(吉高由里子)が抱く女の子だ。藤原道長(柄本佑)の子であることを承知しながら、藤原宣孝(佐々木蔵之介)は溺愛し、賢子(かたこ)という名を与える。

考え方として、左大臣の子を産んだのだから、自分の栄達につながるに違いないと喜んだという発想もあるだろう。でもわたしは違うと思う。そのことをすべて飲み込みながら、まひろはわたしの妻であるということに、充足はしないけれども男としての意趣返しができたと考えたのではないか。

そのことで思い出すエピソードがあります。かつてあの大物作曲家のバート・バカラックは「女刑事ペパー」などでセクシー演技が人気だったアンジー・ディキンソンと結婚していたのですが、マスコミから

「奥さんがその肢体を見せていることをどう考えていますか」

という意地悪な質問に

「全世界の人が妻の身体を見るだろう。でもさわれるのはわたしだけだ」

かっけー。

道長の二番目の妻(瀧内公美)の教育ママっぷりが露骨でいい。そして天皇が溺愛する定子(高畑充希)がこの時点で退場する。

第29回「母として」につづく

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「神の呪われた子 池袋ウエストゲートパーク19」石田衣良著 文藝春秋

2024-07-18 | 大河ドラマ

「ペットショップ無惨」はこちら

このシリーズも長くなった。

フルーツショップの店番をしながら池袋のトラブル解決していくマコトと、池袋に君臨する帝王タカシの物語。

基本的にマコトが頭を使い、タカシが動員力と格闘担当。すべてのエピソードがこのパターン。仁侠ものにイメージは近い。

しかし思い浮かぶのは高倉健と池部良のコンビではなく、長瀬智也と窪塚洋介なのだ。宮藤官九郎脚本のあのドラマが、いかに強烈だったか。

同い年の石田衣良が、どんなことに義憤を感じているのかもうかがえるシリーズでもある。

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光る君へ 第27回「宿縁の命」

2024-07-14 | 大河ドラマ

第26回「いけにえの姫」はこちら

先週の大河はお休み。東京都知事選の開票速報のため。

わたし、毎回言っているんだけど、一地方の首長選挙のために、どうして大河ドラマをお休みまでしなければならないのだろう。そして、当のその都知事選が、今回も壮大な茶番だったわけで。

おそらく日本の政治家のなかで、やっていていちばん面白いのは東京都知事だというのは理解できる。地方交付税云々を気にしなくていいので国の意向を忖度しなくてもいい。やりたい放題である。

陣笠議員のような苦労をしなくても、日本一浮動層が多い地方だから、知名度が高ければ当選の可能性は高い。そしてそれ以上に、都知事選に出馬することで知名度があがり、いやそれどころか……

首都東京には海外からの客も多い。いったい候補者があれほど乱立した掲示板を見て、彼らはどう思ったろう。そしてその掲示板のスペース自体が、売り物になっていることを知ったらと思うと恥ずかしい。日本というのはどれだけ民度が低い国なのか。

そして、第二位となった候補を、若者たちがああも簡単に支持してしまうあたりが危うい。本気で都政をあの人物にまかせようとしたのか。

マスコミもよくないですよね。面白おかしく報ずることが通例になっているので、こんなことになってしまう。よくわからないのは維新で、どうして候補者を出さなかったのだろう。おかげであの人物が165万票もとったことに今ごろあたふたしている。やれやれ。

あ、大河のお話でした。むかしつきあっていた男と久しぶりに出会ってしまい、そしてあろうことかすぐに寝てしまう。で、妊娠。夫がいない時期だったので誰の子かは……

すごい通俗(笑)。でもこれが紫式部と藤原道長の話だと格好がつく。吉高由里子と佐々木蔵之介の関係だから格好がつく。千年も前のお話だからありかもしんないでしょ、という大石静さんの開き直り。うん、ありかもしんない。

第28回「一帝二后」につづく

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光る君へ 第26回「いけにえの姫」

2024-06-30 | 大河ドラマ

第25回「決意」はこちら

おお。今回の演出はあの黛りんたろうですか。黛敏郎の息子で、奥さんが平淑惠のこの人は華麗な画面で有名で、松竹(だった)の奥山プロデューサーとの確執でも知られる。映画「RAMPO」(江戸川乱歩が竹中直人で明智小五郎が本木雅弘)のとき。

さて、今回は安倍晴明によって、“お宝”を差し出せとされた藤原道長(柄本佑)が、妻(黒木華)の反対がありながらも、娘を入内させることになる。

「あんな引っ込み思案な娘を……」

と道長も妻も思う。でも、世の中は天皇の子を誰が産むかレースの渦中にあったわけで。しかも中宮の定子(高畑充希)は産気づいているのだ。

自分の好きな年上の幼なじみを溺愛したことで政治をないがしろにした一条天皇と、はるかに年の離れた若い紫式部を嫁にした藤原宣孝(佐々木蔵之介)は、もっと若い娘を求めているという苦み。なんでもありな時代なんだなあ。

宣孝がその財にものをいわせて贈り物攻勢。そのひとつが精巧な鏡だ。

「どうだ?まひろ(吉高由里子)、自分の顔は」

「まあ、思ったとおり」

美人女優でなければ許されない発言(笑)

今週はようやくあのフェミニズムのかたまりである「バービー」と、政府にはなんのチカラもないので自分でアフガニスタンに用水路をつくり、そして亡くなった医師、中村哲さんの映画を観て、いろいろと考えさせられた。それどころか、この大河を観る直前まで「ジョン・ウィック」の最終作を観て、やっぱりいろいろと考えさせられたのでした。すべて傑作でしたしね。

オープニングに「ファーストサマーウイカ」と「ユースケ・サンタマリア」というカタカナのキャストが出ると、大河も変わったなあと思う。これから出てくるかもしれない和泉式部には、ぜひシシド・カフカかマツコ・デラックスを!

第27回「宿縁の命」につづく

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光る君へ 第25回「決意」

2024-06-23 | 大河ドラマ

吉高由里子主演NHK大河ドラマ「光る君へ」脚本家・大石静の本音が意外すぎた!

第24回「忘れえぬ人」はこちら

今回は、紙のお話。越前が和紙の産地だとは初耳だったが、紫式部はその紙に子どものように執着する。

自身が想像もしていなかっただろう。彼女の作品「源氏物語」は、紙に書かれていたからこそ千年ものあいだ、語り継がれていたのだ。清少納言の「枕草子」にしても、中宮へのファンレターとしてだけでは歴史に埋没していたろうが、紙で宮中に広げることでエバーグリーンになっていく。

永井紗耶子の新作「きらん風月」を読んで、紙に書かれていることがどれだけ後世に影響を与えるかが示唆され、隠居したのにいまだに政治への色気むんむんの松平定信を震撼させるのとシンクロしました。

映画「追憶」の話でしたね。脚本の大石静さんが激賞しているのがこのバーブラ・ストライサンドとロバート・レッドフォードの恋愛劇なんです。意外だなあと思いました。作風が違いすぎじゃないか。

この映画はわたしも若いころに観て、それなりに感動したんですよ。特にラストシーン。別れたふたりが再会して(このふたりは思想信条の違いで別れている)、ノンポリのレッドフォードは左翼のビラを配っているストライサンドにこう語る。

「今は、幸せかい?」

「ええ、幸せよ」

ふた通りの解釈があって、ストライサンドが無理をしているととるひともいれば、本当に幸せなんだととるひともいる。その微妙さがすばらしい。

その論議を、来日したシドニー・ポラック監督は、日本人にそこまで深く読みこんでもらえたのかと感じ入っていた。なめちゃだめだよ日本人を(笑)。

だから今回の「不実な女でもいい?」という問いかけは、紫式部を使って日本のテレビドラマもここまできたかと。

藤原道長の苦衷に関しては来週から。どんどん面白くなってる。

第26回「いけにえの姫」につづく

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光る君へ 第24回「忘れえぬ人」

2024-06-17 | 大河ドラマ

第23回「雪の舞うころ」はこちら

紫式部をめぐる三人の男PART2。

東京都知事選は前代未聞の大騒ぎになっているようだけれど、立候補表明を先にやったほうがいいのか後出しジャンケンが有利なのかという話はちょっと面白い。

三人の男たちがどの順番でまひろ(吉高由里子)を口説くか、ではなくて大石静さんが男たちにどんな順番をつけるかが妙味。彼女はどうしたか。

いきなり宣孝(佐々木蔵之介)に

「ありのままのおまえを丸ごと引き受ける」

「あの宋人と海を渡ってみたとて、忘れえぬ人からは逃げられまい」

以降の周明(松下洸平)と道長(柄本佑)との関係をまず一蹴してみせる。やっぱり佐々木蔵之介はうまいし、配列として彼を最初にもってきた大石脚本もみごとだ。

で、毎週大河を観ているものだから、いろんな形で紫式部をめぐる話が目についてくる。

橋本治の追悼本に、中央公論社の社長だった嶋中行雄さんが寄稿していて、橋本治が「窯変 源氏物語」を執筆するために、中公は軽井沢にある執筆寮を提供したのだという。さすが老舗出版社は寮まで用意しているのかと驚いたが、そこで橋本治と村上春樹はよくいっしょになって、

「橋本さんは天才だなあ!」

と意気投合していたとか。まあ、軽井沢で橋本は散歩し、村上春樹は走りまくっていたというのはさもありなん。

そしてその寮の名物管理人に橋本は質問したそうだ。

「仕事部屋の窓から見える樹は、なんという名前ですか」

「あら先生、ご冗談ですか。あれは『紫式部』ですよ」

次回は映画「追憶」がらみを。

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