PART25「さらに低迷期」はこちら。
さて、ついにどん底まで落ちた朝ドラに、NHKは放映時間帯変更という形でテコ入れを行った。8時15分スタートを15分くりあげ、8時ジャストにしたのである。50年近くつづいた視聴習慣をひっくり返そうというのだ。
よくぞゴーサインが出たと思う。なぜなら、一度NHKはそれで失敗しているのだ。子細は忘れたけれども、ラジオ体操の開始を朝6時半から10分だか15分遅らせようとしたら壮絶な反対にあったので断念した経緯がある。たしかそうだったと思う。ちょっとネットで調べてみよう……うーん、ないなあ。存在するのは虚構新聞ネタだけです(笑)。
まあそれはともかく、特に保守的なNHKの視聴者は、こういう変革を極端に嫌う。大河ドラマを、半年ごとに題材をチェンジしたときの視聴率の壮絶な低下はトラウマだろうしね。
で、そのリスキーな朝ドラのトップバッターは「ゲゲゲの女房」。もうみんな結果は知っているでしょう。NHKのギャンブルは大成功だった。視聴習慣の変更もあってか、あるいは前番組の低視聴率の影響か、史上最悪の初回視聴率だったものの、次第に評判が評判を呼んで視聴率はうなぎのぼり。ドラマとしての評価も高く、これ一作で朝ドラは息をふきかえした。
成功の要因はいくつかある。
・水木しげるという、誰もが知っている漫画家が題材だった(「マー姉ちゃん」パターン)
・主題歌のいきものがかり「ありがとう」の大ヒット
・落ちるところまで落ちたので、松下奈緒と向井理という、ほとんど実績のない新人を起用でき、しかもふたりともただのタマではなかった
・脚本がとにかくよくできていた(山本むつみはその後大河ドラマ「八重の桜」を書く)
……SMの女王が似合うにちがいない松下奈緒が徹底して控えめな妻で、いじめられっ子ルックスの向井が奇矯で頑固な亭主という設定は確かに効いていた。
うちの妻も熱狂。ガロの愛読者だった彼女は「長井(勝一)さんの役が村上弘明よ。キャー、つげ義春はこの人ね(斎藤工!)」と騒がしいことではあった。わたしも松坂慶子の貸本屋のエピソードには泣いたなあ。ということで次回につづく。
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