hiyamizu's blog

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川上未映子『深く、しっかり息をして』を読む

2023年12月31日 | 読書2

 

川上未映子『深く、しっかり息をして』(2023年7月7日マガジンハウス発行)を読んだ。

 

マガジンハウスの内容紹介

川上未映子、12年間の軌跡。
雑誌Hanakoの連載エッセイ「りぼんにお願い」が書籍化!


どれだけ時間が過ぎても言葉にできないことが
それぞれの胸にあるのだと思う
              ――川上未映子

 

2011年から2022年。小説『すべて真夜中の恋人たち』、『夏物語』、『黄色い家』を世に出し、さらには出産、育児、プロモーションやシンポジウムなど海外への渡航…。目まぐるしい変化の中で川上未映子さんは毎月、雑誌Hanakoでのエッセイ連載「りぼんにお願い」でそのときどきの喜びや悲しみ、悩み、読者へのエールを綴ってきました。「Hanako読者のことを想像しながら文章を書くことは、いつも、すごく楽しかった(中略)心と体も、移動するような気持ちになれた、暖かそうな、光がたまってる方面に」(あとがきより)。

メイクやファッションの悩みから、季節の移り変わり、社会の中での女性の変化について、ときにユーモラスに、ときに勇敢に、ときに暖かく、読者へと語りかけるように書かれたエッセイには、小説作品とはまた違った、著者自身の思いや12年間の変化が綴られています。

[コンテンツ紹介]
● 連載245回の中から厳選した、80のエッセイを収録。
● 新規書き下ろしとして、2011年から2022年まで、1年ごとの「当時の自分と社会」についての振り返りエッセイ

 

全体の話は上にある詳しい内容紹介で十分なので、私が気になった箇所を幾つかご紹介。

(文章は、私が一部簡単化しています)

 

別れのリトマス試験紙

もうよくわからなくなっている恋人や夫婦といった人間関係をどのように見直せばよいのか? 

「この人を手放すことができるかどうか。わたしと彼との関係を、彼が今後、他の人と築いても許せるかどうか。平気かどうか」そこに未練がないのなら、とるべき道はただひとつ。

 

エライんである

実際に妊娠&出産してみると、聞いてきたことはすべてそのとおりなのだけど、…もう、全然ちがうのである! これまでの理解はやっぱりどこまでいっても言葉によるそれであった、その理解からは、当然のことながら「身体」だけがごっそり抜け落ちていたのであった。

24歳ぐらいで出産、授乳しているタレントが「ああキツイ。マジでキツイ、でもこれが20歳だったらマジで余裕だったのに」とブログに書いていた。36歳で出産した未映子さんは、24歳が20歳の身体を求めるということに衝撃を受けた。……

最年長を生きている今が、裏を返せばいちばん若い今でもある。

 

みみずく、美しい生き物

梟(フクロウ)&みみずくは生肉を食べるが、血から栄養を摂るので血抜きされて販売されているものではダメで、飼い主がラット、つまりネズミなどをその都度に捌(さば)いてあげる必要があるのらしい。

 

花よ、いとしいきみ

「クリスマスローズ」が好き。地味で、特徴のないこの感じ。でも、見つめていると、こう、胸の奥から「いとしい」とか「素敵だなあ」といった気持ちがむくむくとわいてくる。日にむかって顔をあげてないところもいいのかも。

 

息のすべて

「なんか気分がのらんな」という状況のときにハッと気づいたのが「呼吸」なのだった。…わたしの場合、なんか調子があがらんなというとき、じつは呼吸が浅くなっていることに気づいたのだ。…しっかり呼吸することを意識すると、あれあれ、心身が開いていくような。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

川上さんの11年間、出産などに伴うプライベートや、夏物語の海外での高評価など作家活動の変化がリアルタイムでわかる。川上未映子の作品のファンなら、五つ星。

 

女性差別については、特に厳しい視点で、キツイ口調ではっきりと攻撃する。戦闘的、攻撃的で、周囲を気にしない性格だなと思う。一方で、大阪弁もあってやわらかく、ユーモラスな語り口調だ。さらに、本人は自分はネイティブ・ネガティヴだと言う。

 

高校卒業後、弟を大学に入れるため、昼間は本屋でバイト、夜は北新地のクラブでホステスとして働いた。歌手デビューして地方のレコード店回りもしたが、売れなかった。その時のレコード会社の担当者が元夫。苦労人であるはずだが、あっけらかんと傍若無人な雰囲気を持つ不思議な人だ。

 

 

川上未映子の略歴と既読本リスト

 

コメント
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