黙祷の間、蝉の声だけは現実からの逃避を許してくれませんでした・・・
都農町で行われた畜魂祭に参加させていただきました。
生産者代表の長友正直さんによる追悼のことば
「・・・4月20日から言葉は言い尽くせない悪夢のような日が続きました・・・風評被害などにより他産業にも大打撃を与えてしまい、二重三重の苦しみを負っています・・・それでも家畜の犠牲に報いるためにも、必ず復興を成し遂げます。」
自衛官を思わせるハキハキとした言葉で語られていましたが、その緊張で必死に押さえ込もうとしている悲しみがにじみ出ていました・・・
河野正和都農町長は、挨拶の冒頭から隠すことなく涙を流されました・・・
「・・・なんとか前を向かんといかん・・・向かんといかん・・・それでも思い返せば悔しくて悔しくて・・・それでもこの畜魂祭を境に、今までより素晴らしい畜産を、今より素晴らしい都農町にしなければ、家畜たちの魂はうかばれません・・・小異を捨て、大同団結し爆心地である児湯が連携し、組織的防疫体制を確立し、全国に誇れる畜産地帯を創ってきます。」
畜魂祭の挨拶では珍しく会場から拍手が湧き上がり、多くに人が流れる汗と一緒に涙を拭われていました。
立派な畜魂碑が建立されました。
これも地元の石材店と建設会社からの寄贈ということで、町全体でこの苦難を乗り切ろうという気持ちの集結でもあると思います。
式典の中で、参加者全員による黙祷が捧げられました。
我々の生活を守るために犠牲となった家畜の安らかなる眠りを祈ると共に、この信じがたい出来事が幻であってはくれないか・・・
この黙祷がとけたら夢から覚めるように口蹄疫はなかったことに・・・
そんな淡い願いは、暗闇の中に容赦なく飛び込んでくる蝉の声にかき消されていきました・・・
蝉は限られた生命を謳歌せんと必死に鳴いています・・・
目を開けると、その鳴き声とは正反対のところに畜魂碑はたたずんでいます・・・
頑張るしかない!