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『エンジェルフライト』 佐々涼子 集英社
国境を越え、"魂"を家族のもとへ送り届けるプロフェッショナルたちの仕事と、海外で亡くなった人を故郷まで運んでもらった家族の逸話、2012年度の開高健ノンフィクション賞を取った。
そういえば、09年の「インパラの朝」10年の「空白の5マイル」も面白かったので、11年の「日本を捨てた男たち」も読まんと。
毎年1年間に400~600人の邦人が海外で亡くなり、エア・ハース社は羽田・成田空港で200~250体の人の遺体修復を取り扱っている。
エジプトのルクソールのテロ、NZの地震など、先ごろは紛争地のシリアで銃撃されたジャーナリストの山本美香さんもここから山梨の実家に送られた。
遺体についての家族の言葉「あの冷たさは本当に怖いんです」
私の母が亡くなった時、お別れのときに額に手を触れたら、陶器のような冷たさだったことを憶えている。
血が通っていないという残酷さを突きつけられたような気がした。
海外で亡くなると保険ケースとプライベートケースがあり、遺体が国境線を越える際の煩雑きわまる手続と莫大な搬送費用がかかる。
プライベートケースだと悲しみ以上の負担を強いられることになるので、海外旅行に行くときは保険必須だ。
エンバーミングとは静脈に防腐剤を注入する防腐処理のことで、アメリカなどは最新最高の処置を受けてくるが、新興諸国ではひどい扱いをされて腐乱していることも少なくなく、エア・ハースの社員は事故であれ病没であれ、遺体がどんな悲惨な状態であっても、パスポートの写真などを元にできるだけ生前の自然な表情になるように手を尽してくれる。
映画「おくりびと」の作業などはファンタジーだというほどの、その業務は苛烈で厳しい。
「親を失うと過去を失う
配偶者を失うと現在を失う
子を失うと未来を失う」
家族のもとへ生前の面影のままに帰してあげたいという強い気持ちがなければできない仕事である。
遺された者が悔いなくお別れして、亡き後も生きていくために、やっぱりお葬式は必要なんだろうな。