葉月のブログ

命題:ウイルスの糖鎖はヒトの糖鎖と同一なので病因とはならない

ピッツバーグ大学でも、VeroE6細胞での継代でスパイクの変異を報告

2020-06-30 | 新型コロナ
感染研やCDCの「単離」ウイルスは大丈夫なのか?

ピッツバーグ大学 2020年6月20日投稿

実際に感染し入院したCOVID-19患者の血清を使用し、SARS-CoV-2の増殖、フーリン切断部位の適応変化、及び中和を研究した論文

使用した単離ウイルス
継代4回のCDC単離ウイルス CDC/2019n-CoV/USA_WA1/2020 
継代1回のミュンヘンの単離ウイルス SARS-CoV-2/München-1.1/2020/929

使用した細胞
Vero-E6

単離ウイルスをVero-E6で、更に2回継代

患者
ピッツバーグ大学病院の入院患者3人

図1
A ワシントン州のサンプル P4=継代4回目
B ミュンヘンのサンプル

継代すると、プラークが大きくなって、フーリン切断部位近辺に置換や欠失などの変異がみられる










CDCの単離サンプルは、VeroE6細胞で4回継代培養したのに変異がなかった

2020-06-30 | 新型コロナ
ライデン大学と香港大学の研究者が独立して、VeroE6細胞で継代培養するとSARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパクのフーリン切断部位周辺で変異や欠損ができることを報告しているのに、CDCや感染研が決定した配列は、オリジナルとされている武漢のサンプルから変異が全くなかった。

武漢のサンプルは12月下旬のもので、CDCのサンプルは1月中旬にワシントン州で発症した中国人のもので、感染研のサンプルは                       
Japan/TY-WK-521/2020EPI_ISL_408667Japan / Tokyo2020-01-31
1月31日に東京で分析されたものと思われる。

SARS-CoV-2の最初の患者が、11月中旬以前となっている現在、12月下旬の武漢、1月中旬の米国、1月下旬の東京、京都、愛知のすべてのサンプルが、全く同一のゲノムを有するものであることの解釈は困難であるが、それ以上に、米国CDCや日本の感染研がVeroE6細胞を使用して継代培養したのにも拘らず、変異や欠失が報告されていないことは、ライデン大学や香港大学の報告と大きく矛盾している。


以下は、CDCの単離の報告から
「We subsequently generated a fourth passage stock of SARS-CoV-2 on VeroE6 cells, another fetal rhesus monkey kidney cell line. We sequenced viral RNA from SARS-CoV-2 passage 4 stock and confirmed it to have no nucleotide mutations compared with the original reference sequence」

下線部が、スパイクタンパクのフーリン切断箇所
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感染研の単離ウイルスのスパイクタンパクのアミノ酸配列

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デングウイルスはエクソソームを利用して感染を広げることができる

2020-06-29 | 新型コロナ

Isolation and characterization of exosomes released from mosquito cells infected with dengue virus

デングウイルスに感染した蚊の細胞から放出されたエクソソームの単離とキャラクタリゼーション

要点

蚊細胞からのエクソソームは、ヒトのテトラスパニン(膜タンパク)と相同であるタンパクを含む

デングウイルスに感染した蚊細胞からのエクソソームは、未感染細胞のエクソソームより大きい

デングウイルスに感染した蚊細胞からのエクソソームは、未感染の蚊細胞を感染することができる

エクソソームは、ウイルスを伝播する役割を果たす

アブストラクトから

「Thus, the exosomes released from DENV-infected C6/36 cells were isolated, purified and analyzed using an antibody against the tetraspanin CD9 from human that showed cross-reactivity with the homologs to human CD9 found in Aedes albopictus (AalCD9).」

ヒトのテトラスパニンCD9に対する抗体が、ヒトスジシマカにおけるこれの相同体に対して交差反応を示す


参考
エクソソームってプラークアッセイもできるらしい



エクソソームにスパイクに似た膜タンパクがありそうなこと

2020-06-29 | 新型コロナ
エクソソームの構造 2015年の論文より
左上の膜タンパク質が、SARSのスパイクタンパクに似ている
これが何なのかは、情報があまりない
エクソソームがアンジオテンシン変換酵素2を使用して細胞と相互作用することは報告されている

SARSのスパイクタンパクに対する抗体が、このエクソソームの膜タンパクと交差反応すると大変なことになる、本当に大変なことになる


参考



新型コロナウイルスの変態ぶり 香港大学編

2020-06-28 | 新型コロナ


ライデン大学の論文と似た欠失が報告されています。
香港の患者から「単離」したとされるサンプルを、VeroE6細胞で培養し、プラークアッセイをしたとき、大きさの違う2つのプラークが形成され、香港大学のサンプルでは大きいプラークがワイルドタイプで、小さいプラークでスパイクタンパクの切断部位近辺に大きな欠失がみつかりました。




オーストラリアの単離ウイルスに特有の出来事ではなかったようです。

感染研はプラークアッセイどうだったのだろう・・・

ライデン大学の論文から新型コロナウイルスの変態ぶりを考察する その6

2020-06-28 | 新型コロナ

最後に、SARS-CoV-2の治療に使用できる化合物のスクリーニングのための細胞変性効果に基づくアッセイの確立のため、4つの化合物、レムデシビル、クロロキン、アリスポリビルおよびペグ化インターフェロンα(PEG-IFN-α) について試験した。

これらの化合物の効果は、インターフェロンα以外では、SARS-CoVとSARS-CoV-2の間でほぼ同じであった。

インターフェロンαによる効果は、SARS-CoV-2で顕著に高かった。



クロロキンについて
An alternative hypothesis to explain their anti-SARS-CoV activity is based on their impact on glycosylation of the ACE2 receptor that is used by SARS-CoV [56].

ライデン大学の論文から新型コロナウイルスの変態ぶりを考察する その5

2020-06-27 | 新型コロナ

SARS-CoV-2とSARS-CoVのサブゲノムmRNAの量の比較



参考資料






サブゲノムmRNAの量が異なっている

ゲノムmRNAを、まずマイナス鎖のサブゲノムmRNAに転写して、それからさらにプラス鎖のサブゲノムmRNAに転写して作るらしいのだけれど、どうやって量を調節しているのかが、よくわからない。

比較した結果、SARS-CoV-2では、mRNA7と8が、それぞれ4倍、2倍と増えていたという結果がでているということ。

ORF7aタンパクは、アポトーシスやセルサイクルアレストと関連。
ORF7bタンパクは、膜タンパクであるが機能不明。
この二つが欠失しても、SARS-CoVの複製には影響なし。
SARS-CoVのORF7bは、CaCo-2やHuH7細胞での複製を有利にするが、Vero細胞ではその機能なし。
ORF8タンパクは、膜タンパクと関連、小胞体ストレスを誘導。
SARS-CoVで、そのうちの29核酸が欠失した。ヒト宿主への適応のためか。
欠失のないORF8を導入したら、23倍複製能が増えた。
病原性に関連するのか、更に調べる事が大切である。

ライデン大学の論文から新型コロナウイルスの変態ぶりを考察する その4

2020-06-26 | 新型コロナ

ライデン大学で、VeroE6細胞を使用してオーストラリアの単離ウイルスを継代培養したとき、ウイルスが変異したことを「その1」でご紹介しましたが、その変異部分について補足します。

下の表のS5p1が、オーストラリアの単離ウイルスと同じゲノムを持つワイルドタイプで、プラークアッセイでは小さいプラークを形成たものです。

大きいプラークを形成した変異ウイルスは、L8p1で、変異はスパイクタンパクのフーリン様切断部位でした。




この切断部位は、以下のようになっています。
Current Biology 30, 2196–2203.e1–e3, June 8, 2020 


この切断部位は、RmYN02のコウモリを例外としてSARS-CoV-2に特異的なもので、パンゴリン、コウモリ、SARS-CoVにはありませんでした。

ライデン大学で変異したウイルスは、この部分の682のRがQに変わったものでした。

ライデン大学で、継代培養をさらに続けたときのサンプルが、S5p2とS5p3になり、
継代するに連れ、675-679の5個のアミノ酸欠失、679-688の10個のアミノ酸欠失しているウイルスが増えています。

大きいプラークはR682Qの変異で安定して継代されていくのに、小さいプラークは、一部が大きいプラーク、一部が5個のアミノ酸欠失、一部が10個のアミノ酸欠失、さらに一塩基変異のものが多数(ただし、変異はRのみ)という不思議な現象が起きているようです。

フレームシフトしない塩基の欠失の方が起こりやすいというのがよくわからないのですが。

同じような変異はすでに中国の患者や、細胞培養ウイルスでも報告されています。
広州CDC
Identification of common deletions in the spike protein of SARS-CoV-2



シンガポールでは、382個の塩基が欠失して、ORF8がほぼ消失している

米国アリゾナでは81個の塩基が欠失して、ORF7aがほぼ消失している

やっぱりキメラなのだろうか?

参考
SARS-CoV-1 2002年のSARSでのORF8の欠失


The spike glycoprotein of the new coronavirus 2019-nCoV contains a furin-like cleavage site absent in CoV of the same clade



ライデン大学の論文から新型コロナウイルスの変態ぶりを考察する その3

2020-06-26 | 新型コロナ

次に、SARS-CoV-2の複製サイクルの特徴を、ウイルスのタンパク質にたいする抗体を使用して調べています。


SARS-CoVの構造タンパクと非構造タンパク(nsp)に対する抗血清が、SARS-CoV-2のタンパク質と交差反応をした様子。
SARS-CoV-2を感染させたVero E6細胞を、12時間または24時間後に固定し、抗血清で標識し、免疫蛍光法で観察した図。青が細胞核。
(a) nsp4緑、dsRNA赤 (b) nsp4緑、Nタンパク赤 (c) nsp3 緑 (d) nsp13 緑 (e) Mタンパク 緑

Bar is 25 µm for (a) and (b); 100 µm for (c), (d) and (e).


ウイルスの非構造タンパク質(nsp)、構造タンパク質、そしてウイルス複製オルガネラの微細構造の変化は、SARS-CoVとSARS-CoV-2とでは、ほぼ同じでした。

VeroE6細胞での複製速度は、この二つのウイルスで、同等でしたが、最終的な感染力は、SARS-CoV-2の方が50倍小さくなっていました。

感染力は小さいけれど、SARS-CoV-2の方がRNAの合成が早く始まり、また最終的な合成RNAの量はも多いという事でした。

これが示唆するのは、SARS-CoV-2にウイルスの構築や成熟の点で問題があるのか、ウイルスと宿主の相互作用が異なるためではないかと、考察しています。

電顕で、SARS-CoV-2にスパイクが少なかったことから、この問題をもっと追及する必要があるとしています。

下の写真で、SARS-CoVには、スパイクがみえますが(n)、SARS-CoV-2にはスパイクがみえません(r)。



CDCの論文でも、臨床サンプルをHuH7細胞で培養すると、スパイクがなくなっていましたが、これも併せて考えると、何か仮説が立てられるかもしれません。

ライデン大学の論文から新型コロナウイルスの変態ぶりを考察する その2

2020-06-26 | 新型コロナ

過去6ヵ月に投稿された多数の論文で、SARS-CoV-2がVero E6細胞で容易に増殖することが報告されています。

Vero E6細胞(アフリカミドリザル腎細胞由来)の特徴としては、コロナウイルスが感染に利用する受容体であるACE-2受容体が多く発現していることと、ウイルスの増殖を阻止するインターフェロンの産生能力が欠如していることです。

ライデン大学での実験で明らかになった、「継代培養することでSARS-CoV-2のスパイクタンパクに変異が起こること」を、Vero E6以外の細胞でも確認してみることを提案しています。

実際にこの論文では、HuH7細胞(ヒト肝癌細胞由来)では、オーストラリアの単離ウイルスは感染性増殖はないことを確認していますが、 他の論文では、臨床サンプルを増殖させたと報告しています。

この4つは、臨床サンプルをHuH7細胞で培養できることを報告

CDCの単離ウイルスをHuH7細胞で培養


ゲノム解析からは、ほぼ同じウイルスのはずなのに、この矛盾は、どうやって説明するのでしょうか。


ライデン大学の論文から新型コロナウイルスの変態ぶりを考察する その1

2020-06-26 | 新型コロナ

ライデン大学では、2002年のSARSの研究を過去17年間続けてきました。SARS-CoVの単離ウイルスは、フランクフルトで作成したものを使用し、Vero E6細胞で17年間継代培養してきましたが、変異は観察されていません。

ライデン大学の論文で使用した新型コロナウイルスの単離ウイルスは、オーストラリアで作成したもので、 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7228321/#mja250569-sup-0001 Vero/hSLAM細胞(ヒトシグナル伝達リンパ球活性化分子発現アフリカミドリザル腎細胞) という、Vero細胞にリンパ球を活性化させるためのタンパク質を移入した細胞を使用し、2回継代して培養増殖しています。


ライデン大学では、実験を始めるにあたって、オーストラリアから送付された単離ウイルスを、Vero E6細胞で2回増殖させ、p1 stock およびp2 stockと名前をつけています。

まず、ウイルスが単離されているかを確かめるために、プラークアッセイを行っています。その結果が、以下の図です。




プラークの大きさや形を表現型(フェノタイプ)といいますが、もしウイルスが単一のものであれば、表現型は同一のものとなることが期待されます。

オーストラリアで単離された新型コロナウイルスを、ライデン大学でVeroE6細胞を使って培養し作成した p1 stockのプラークは、大きさの違う様々なプラークができています。

次に、小さいものと大きいものをそれぞれ選んで、培養し、それぞれの上澄みをさらに培養し、合計3回継代したものをプラークアッセイで表現型を調べました。

上が小さなプラーク、下が大きなプラークからとったウイルスをそれぞれ培養したものです。

大きなプラークは、表現型が同一ですが、小さなプラークは、培養を続けると、大きなプラークに変わっていくことがわかりました。

次に、小さなプラークと大きなプラークのゲノム配列を決定しています。
2つの大きさの違うプラークから得られたゲノムの違いは、たった一つの核酸で、その核酸は、スパイクタンパクの切断部位近辺にあり、この変異によりアミノ酸がアルギニンからグルタミン(Arg682 to Gln)に変わるものでした。

この切断部位は、SARS-CoV-2とMERS-CoVにみられ、SARS-CoVやコウモリのCoVのいくつかにはなかったというものです。そして、この部位が、細胞内のフーリン様タンパク分解酵素に認識され、その結果、細胞外へウイルスが放出されると考えられており、また、この切断により細胞への感染が開始されるとも考えられていますが、この部位がなくても、ウイルスが細胞に感染することは、 SARS-CoVとSARS-CoV-2で実験的に確かめられているということです。

(15-nt CCTCGGCGGGCACGT encodes five AAs: PRRAR (681-685), locating at 23603-23617 of Wuhan-Hu-1 complete genome)


そして、このような「変態」は、オーストラリアの単離ウイルスだけでなく、他の臨床単離体でも観察されているということです。

In addition to the BetaCoV/Australia/VIC01/2020 isolate used in this study, similar observations were made for a variety of other clinical isolates (data not shown). 

また、上の表の下の方には、5から10のアミノ酸が欠失している変異も観察されており、このような変異は、Vero細胞で培養していない臨床サンプルでも観察されているということで、さらに研究が進められているということでした。

These variants contain either single point mutations or deletions of 5 to 10 aa (Fig. 1b), resembling variants recently reported by other laboratories [30, 70, 71]. Interestingly similar changes were also observed in some clinical SARS-CoV-2 isolates that had not been passaged in cell culture [70]. 

これは、一体どういうことなのでしょうね。

オーストラリアで単離されたというウイルスは、小さいプラークのもので、VeroE6細胞で培養すると、大きいプラークのもの(切断部位に変異がひとつあるもの)に変わったという事。培養を繰り返すと、この大きいものが増えていること。その中に、アミノ酸が5から10個欠失する変異も起きてくるという事。
この欠失は、細胞培養していない臨床サンプルでも報告されているという事。

選択圧により、切断部位が欠失していくということ?
この切断部位が、ウイルスが感染した細胞から放出されるときに使用される部分。

ウイルスの弱毒化?

ライデン大学とCDCの実験での矛盾点

2020-06-24 | 新型コロナ

オランダ・ライデン大学で、オーストラリアの単離株を使用して、VeroE6細胞とHuH7細胞での増殖実験をした結果。
HuH7細胞では、Sars-cov-2は増殖性感染はしないと結論。



CDCによる単離の実験
米国ワシントン州の患者の臨床サンプルを使用
HuH7細胞でも、まぁまぁ増殖したという結論。
ただし、スパイクはなかった。


HuH7では、感染しても、すぐに細胞の外にでてこないようだった


単離株は、ヒト由来
VeroE6は、アフリカミドリザル由来
HuH7は、ヒト由来

ヒト由来のタンパク質を、アフリカミドリザルの細胞に添加すると、異物と認めてスパイク付きエクソソームが放出されるのではないか?

オーストリア単離株との相違は不明 → 要調査
臨床サンプルと単離後のサンプルの違いか?

追記 ライデン大学の論文から

2002年のSars-covと比較するために、Sars-cov-2の単離サンプルを得ようとしたとき、匿名の臨床サンプルからの単離物の「所有権」の問題から行政的に阻止された。

We set out to establish the basic features of SARS-CoV-2 replication in Vero cells and compare it to the Frankfurt-1 SARS-CoV isolate from 2003 (32, 33). When requesting virus isolates (February 2020), and in spite of the rapidly emerging public health crisis, we were confronted - not for the first time - with administrative hurdles and discussions regarding the alleged ‘ownership’ of virus isolates cultured from (anonymous) clinical samples. From a biological and evolutionary point of view, this would seem a strangely anthropocentric consideration, but it ultimately forced us to reach out across the globe to Australian colleagues in Melbourne.

2002年のSars-covでは、電顕でVero細胞から放出されたウイルスがスパイクを持っているのに、Sars-cov-2は、スパイクが無い方が多かった
whereas spikes were clearly present on SARS-CoV progeny virions, a relatively large proportion of SARS-CoV-2 particles seemed to carry few or no visible spike projections on their surface, perhaps suggesting a relatively inefficient incorporation of spike proteins into SARS-CoV-2 virions

(m)(n) SARS-COV
(g)(r) SARS-COV-2

SARS-CoV-2は、VeroE6細胞で継代培養すると、フリン様切断部位に変異か欠失がおこる。
An important difference between the two viruses is the fact that - upon passaging in Vero E6 cells - SARS-CoV-2 apparently is under strong selection pressure to acquire adaptive mutations in its spike protein gene. These mutations change or delete a putative ‘furin-like cleavage site’ in the region connecting the S1 and S2 domains and result in a very prominent phenotypic change in plaque assays. 

ライデン大学では、プラークも大きさが違うものが2種類できた模様
a mixed plaque phenotype [~1 : 3 ratio of small versus large (plaques; data not shown)]


In general, for both viruses, the accumulation of viral RNAs followed the growth curves depicted in Fig. 2a. The relative abundance of the individual RNAs was determined using the  12,  14  and  24  h  p.i.  samples  (averages  presented  in  Fig. 3b) and found to be largely similar, with the exception of  SARS-  CoV-2  mRNAs  7  and  8,  which  accumulated  to  about  four  and  twofold  higher  levels,  respectively. 


オランダのエイズ研究者、マレーシア航空の墜落事故で死亡したんだよね

新型コロナウイルスが単離されているのかを精査する オーストラリア編

2020-06-24 | 新型コロナ
メルボルン大学
2020年3月9日

Isolation and rapid sharing of the 2019 novel coronavirus (SARS‐CoV‐2) from the first patient diagnosed with COVID‐19 in Australia

採取日 1月25日 変異4 ギャップ 10
there were three previously described single nucleotide polymorphisms and a 10 base pair deletion in the 3’ untranslated region (3'UTR)



サプリメントから

2.1 Cell culture of  and electron microscopy
SARS-CoV-2の細胞培養と電顕

Vero/hSLAM cells (African green monkey kidney cells transfected to express the human signaling lymphocytic activation molecule (SLAM; also known as CDw150) were grown at 37C, 5% CO2 in maintenance media consisting of 10mL Earle’s minimum essential medium (EMEM), 7% fetal bovine serum (FBS) (Bovogen Biologicals, Keilor East, AUS) 2mM L-glutamine, 1 mM sodium pyruvate, 1500mg/L sodium bicarbonate, 15 mM HEPES and 0.4mg/ml geneticin to 95% confluency in 25cm2 flasks. Prior to use for isolation, maintenance media was removed from the flask and 500μL of respiratory swab inoculum was overlaid on the cell monolayer. The flask was returned to the 37C incubator to allow the virus to adsorb for 1 hour before addition of 10 mL viral culture media (EMEM as above but FBS reduced to 2%). Flasks were monitored for viral cytopathic effect and 140μL aliquots of supernatant removed every 48 hours to assess virus burden by TaqMan real-time RT-PCR. First passage culture grown virus isolate was subsequently shipped nationally and internationally in packaging compliant with UN 2814 Category A shipping requirements using credentialed, specialised courier services under the appropriate Australian government export approvals processes and receiving country import permissions.

他の実験と違うところは、Vero/hSLAM細胞(ヒトシグナル伝達リンパ球活性化分子発現アフリカミドリザル腎細胞)を使用しているところ。麻疹ウイルスが増殖しやすいらしい https://cellbank.nibiohn.go.jp/~cellbank/cgi-bin/search_res_det.cgi?ID=8631

後は、他の論文と同様、臨床サンプルを精製しないでそのまま培養している