葉月のブログ

命題:ウイルスの糖鎖はヒトの糖鎖と同一なので病因とはならない

ライデン大学の論文から新型コロナウイルスの変態ぶりを考察する その1

2020-06-26 | 新型コロナ

ライデン大学では、2002年のSARSの研究を過去17年間続けてきました。SARS-CoVの単離ウイルスは、フランクフルトで作成したものを使用し、Vero E6細胞で17年間継代培養してきましたが、変異は観察されていません。

ライデン大学の論文で使用した新型コロナウイルスの単離ウイルスは、オーストラリアで作成したもので、 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7228321/#mja250569-sup-0001 Vero/hSLAM細胞(ヒトシグナル伝達リンパ球活性化分子発現アフリカミドリザル腎細胞) という、Vero細胞にリンパ球を活性化させるためのタンパク質を移入した細胞を使用し、2回継代して培養増殖しています。


ライデン大学では、実験を始めるにあたって、オーストラリアから送付された単離ウイルスを、Vero E6細胞で2回増殖させ、p1 stock およびp2 stockと名前をつけています。

まず、ウイルスが単離されているかを確かめるために、プラークアッセイを行っています。その結果が、以下の図です。




プラークの大きさや形を表現型(フェノタイプ)といいますが、もしウイルスが単一のものであれば、表現型は同一のものとなることが期待されます。

オーストラリアで単離された新型コロナウイルスを、ライデン大学でVeroE6細胞を使って培養し作成した p1 stockのプラークは、大きさの違う様々なプラークができています。

次に、小さいものと大きいものをそれぞれ選んで、培養し、それぞれの上澄みをさらに培養し、合計3回継代したものをプラークアッセイで表現型を調べました。

上が小さなプラーク、下が大きなプラークからとったウイルスをそれぞれ培養したものです。

大きなプラークは、表現型が同一ですが、小さなプラークは、培養を続けると、大きなプラークに変わっていくことがわかりました。

次に、小さなプラークと大きなプラークのゲノム配列を決定しています。
2つの大きさの違うプラークから得られたゲノムの違いは、たった一つの核酸で、その核酸は、スパイクタンパクの切断部位近辺にあり、この変異によりアミノ酸がアルギニンからグルタミン(Arg682 to Gln)に変わるものでした。

この切断部位は、SARS-CoV-2とMERS-CoVにみられ、SARS-CoVやコウモリのCoVのいくつかにはなかったというものです。そして、この部位が、細胞内のフーリン様タンパク分解酵素に認識され、その結果、細胞外へウイルスが放出されると考えられており、また、この切断により細胞への感染が開始されるとも考えられていますが、この部位がなくても、ウイルスが細胞に感染することは、 SARS-CoVとSARS-CoV-2で実験的に確かめられているということです。

(15-nt CCTCGGCGGGCACGT encodes five AAs: PRRAR (681-685), locating at 23603-23617 of Wuhan-Hu-1 complete genome)


そして、このような「変態」は、オーストラリアの単離ウイルスだけでなく、他の臨床単離体でも観察されているということです。

In addition to the BetaCoV/Australia/VIC01/2020 isolate used in this study, similar observations were made for a variety of other clinical isolates (data not shown). 

また、上の表の下の方には、5から10のアミノ酸が欠失している変異も観察されており、このような変異は、Vero細胞で培養していない臨床サンプルでも観察されているということで、さらに研究が進められているということでした。

These variants contain either single point mutations or deletions of 5 to 10 aa (Fig. 1b), resembling variants recently reported by other laboratories [30, 70, 71]. Interestingly similar changes were also observed in some clinical SARS-CoV-2 isolates that had not been passaged in cell culture [70]. 

これは、一体どういうことなのでしょうね。

オーストラリアで単離されたというウイルスは、小さいプラークのもので、VeroE6細胞で培養すると、大きいプラークのもの(切断部位に変異がひとつあるもの)に変わったという事。培養を繰り返すと、この大きいものが増えていること。その中に、アミノ酸が5から10個欠失する変異も起きてくるという事。
この欠失は、細胞培養していない臨床サンプルでも報告されているという事。

選択圧により、切断部位が欠失していくということ?
この切断部位が、ウイルスが感染した細胞から放出されるときに使用される部分。

ウイルスの弱毒化?

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