炎症, ワクチンそして現代の医療について
2014年9月22日月曜日チャンドラー・マーズ博士
英文へのリンク
HPVワクチン有害反応の中核となる症状のひとつに、説明不能と思われるが観察可能な脳の炎症と白質崩壊がある程度含まれることは、当然であろう. 脳の炎症には、多数の異なる名称と診断があり、そのいくつかは領域が特定されている例えば小脳 異常であるが、それ以外にもより広汎におよぶ障害があり、例えば、急性散在性脳脊髄炎(ADEM), 筋痛性脳脊髄炎(ME), 慢性疲労, 多発性硬化症(MS)などの病変としてしられるもの, そしてそれらのかなでも最も新しくおそらくより先見性のある, アジュバント誘発性自己免疫/炎症性症候群、すなわちASIAと定義される一連の病状がある. それは、ワクチンアジュバントへの暴露に関する中枢性および末梢性慢性炎症を意味する.
脳の免疫は特別なのか?
多くのHPVワクチン被害者に脳の炎症が観察されているにもかかわらず、多くの医師、そしてFDAやCDCも、アルミニウムリポ多糖アジュバント賦活ウイルスベクターが神経炎症応答を誘発することを認めることを拒否しているようであり、障害後の患者を途方にくれさせている.
脳の炎症をワクチンの反応と結びつけることを困難としているは、血液脳関門が末梢からの侵入者にたいして頑丈に保護されていると信じ込んでいたからである. 長いこと、脳は、末梢の免疫機能とはほとんど伝達のない「免疫の特権」が与えられていると考えられていた. 実際、血液脳関門が侵入不可能であるという認識はとても強いものであり、脳と身体の分離は、まるでボトルの中の脳と、断頭された身体という具合に考えられているかもしれない.
論理的には、これが本当ではないとわかっている。脳/中枢神経系の免疫と、身体の免疫の間には、クロストークがあるはずである. もし2つの部分がそれほど完璧に分離されているなら、一体どうやって私たちは生存できるのであろうか? 最近になってその論理が一般的になりつつある. ここ何十年かの研究の結果、長く信じられていた脳免疫特権の概念は、完全に間違っていたことが示唆されている. 事実、免疫系は初期の神経発生を先導するだけでなく(それゆえ、母親の免疫機能が重要である)、長期にわたって脳の形態変化に影響を与えている. 同様に、脳からのシグナルは、末梢免疫機能に絶えず影響を与えている.
免疫系は、通常の機能の間も、病気においても、神経系に影響を与えているようである. 慢性感染症や重度の病気は、通常の神経-免疫クロストークのバランスを阻害し、発達中の脳に永久的な構造上の変化を起こし、および/または後の人生における病気を誘引する. 「免疫」シグナル伝達分子の多様性、乱雑性、重複性のおかげで、免疫系および神経系の両者にとって必要である、活性と正確なシグナル伝達経路の複雑な協調が可能となる.
したがって、末梢での栄養状態や毒物への暴露が、身体で中枢神経系の機能に影響を与え、脳の炎症を誘発することが可能であること、そしてその逆の経路が可能であることも、驚くべきことではない.そして、おそらく、それは私たちが理解している以上に影響を与えあっているであろう.
脳の炎症について再考する
ADEM, ME, MS や他の脳の炎症の症例や研究、定義などを読んでいると、末梢における生化学的病変が神経炎症反応に関連しているという考えに、関心が寄せられていないことに気が付く. にもかかわらず、もし、身体中および身体に対して起こることは身体の中に留まることは無いという仮定を受け入れるなら、脳の炎症へのアプローチの仕方を再構成することが可能である.
具体的には、炎症をより包括的にみて、何が炎症を引き起こしたのかだけでなく、その場所に関係なく、何が炎症を慢性的に持続させているのかとも問いかけることができる. もし進行中の末梢炎症反応があれば、たとえ、今ある画像装置の性能では炎症を可視化できなかったり、あるいは脱髄、ニューロンやアクソンの膨張、他の慢性脳炎症を示す徴候を観察するには早期すぎたとしても、同様の反応が中枢神経系内でも起こっているかもしれないと疑うことは慎重を欠くことであろうか? 私は、慎重を欠くことではないと考える.
ワクチンアジュバント: 脳の炎症へ導く道
HPVワクチンそして実際他のすべてのワクチンは、接種者の免疫応答を押し上げるために添加される化学毒性物や金属アジュバントの混合物と、不活性化したウイルスベクターを含有しており、免疫応答の増加は、ワクチン後の炎症マーカーの増加により測定される.これらのアジュバント (データーにより示されている)なしには、接種者の免疫応答の活性化は、ウイルスからの「保護」を享受するには不十分であると考えられている. 免疫応答の強さや大きさは、保護の成功と等しいとみなされる.
このため、過度の免疫応答が、慢性的に継続し、自然系がうまく作動しなくなり最後には「自己免疫」と分類されても、それは失敗や副作用ではなく、極度の成功の一例としてみなされる、つまり、免疫応答が大きいほど、ワクチンは強力である. このように観察することは歪んでいるようにみえるけれども、現行のワクチンパラダイムでは、実際には「副作用」は存在できない. 設計の点からは、炎症、脳の炎症でさえあるべきことであり、強いほど、より良いことになる. さらに設計の点からは、金属や脂質可溶物のアジュバントは血液脳関門を通り抜け、直接脳の炎症を引き起こす.ワクチンが脳の炎症を起こさないとか起こせないということは、無知であり、そうでないというなら、全く怠慢なことで, ただ論理に逆らうことである. 再び、慎重さと安全のために、身体の炎症反応が中枢神経系の何らかの調和反応を開始させるかもしれないと想定すべきではないのか?
どうして私たちのすべてがワクチンの被害を受けるわけではないのか?
明らかなことは、最も毒性の強いワクチンに暴露しても、ワクチンを接種したすべての人が、少なくとも観察可能な程度の害を受けるのではない. (しかしながら、ワクチン後に健康に見える人たちも、より正確な脳の炎症を観察する道具があったなら、少なくとも急性のそしておそらく進行性の中枢炎症応答がみつかるかもしれないと私は思っている).ワクチン後、特にHPVワクチン後に、大丈夫だったように見える人たちと、深刻な、死にいたることもあるような被害を受けた人たちとは、何が違っているのだろうか?
ワクチン副反応を示す人とそうでない人の根本的な違いは、微生物やミトコンドリアの健全にあるという考えにより傾いている. 実際、すべてのワクチン, 医薬品、環境毒物は、多数の機序で、ミトコンドリアを損傷し、かつ細菌のバランスを変えてしまう.
これらのミトコンドリアの障害に個々人が耐えられるかどうかは、3つの変数のバランスに強く依存している: 1) ジェネティックおよびエピジェネティックな、遺伝子レベルのミトコンドリア機能不全; 2) 生涯にわたる毒物への暴露の頻度と程度;および3) 栄養状態.
これらの変数が、ミトコンドリアを介して、ワクチン後の炎症の程度と慢性度に影響を与える. 特にHPV ワクチンでは、ワクチンのタイミングが、思春期にちょうど入る時期で、ホルモン系が機能し始め、将来の生殖に関する健康へのいまだ認識されていないさらなるリスクを課すかも知れない.
ミトコンドリアと細菌叢
すでに、私たちが何度も書いてきたように、ミトコンドリアは、細胞エネルギーだけでなく、細胞の生死も制御している. 身体のすべての細胞、脳のニューロンも含めて、適切に機能するためには健全なミトコンドリアを必要とする. 健全なミトコンドリアは、栄養素の濃度と密接に関連しており、それは、食事の考慮だけでなく腸管細菌叢のバランスも必要としている.
腸管細菌は、必須栄養素を合成し、食事からの栄養素を吸収代謝し、ミトコンドリアを育てる. 実際、進化の観点から、ミトコンドリアは細菌叢から進化し、生命体の健康を調整する共生関係を築いた. 腸管細菌が乱れると、病原性の感染や慢性炎症が増加するだけでなく、使用できる栄養素が減少する. これだけでも、ミトコンドリアが損傷する可能性がある.
栄養素の欠如および/または毒物への暴露のために、ミトコンドリアが損傷すると、エネルギーを節約し、合理的にできだけ長く細胞を生かすための生化学反応のカスケードが引き起こされる. 生存することが不可能になると、ミトコンドリアの隔離、最後には、死が訪れるが、それはしばしば、よく調節されたアポトーシス(予定死)ではなく、ネクローシス(壊死)による死である. ミトコンドリアが死ぬと, 細胞が死に、組織が死に、器官の機能が損なわれる. ステロイドホルモンの産出が、ミトコンドリアの重要な機能であるので、ホルモン調節不全, 卵巣障害、生殖能力の低下が、若い女性におけるミトコンドリア損傷の具体的なマーカーとなるかもしれない.
ミトコンドリアと炎症
ミトコンドリアは、免疫系の活性化および炎症を調節し、それゆえ、炎症は、ミトコンドリアの損傷のサインであり、脳の炎症でもそうである.ミトコンドリアのシグナル伝達の専門家によると:
細胞危険応答 (CDR)は、進化的に保存された、細胞と宿主を危害から守る代謝応答である. それは、細胞がホメオスタシス(恒常性)を維持する能力を超えるような化学的、物理的、生物的脅威に曝されることでトリガーされる. 結果として起こる、使用できる原料と機能的な能力の間の代謝的なミスマッチが、細胞の電子の流れ、酸素消費量、酸化還元、膜の流動性、脂質の動態、バイオエネルギー、炭素と硫黄源割り当て、タンパク質折りたたみ構造と凝集、ビタミンの入手可能、金属のホメオスタシス、インドール, プテリン, 1-炭素とポリアミンの代謝, ポリマー形成への変化のカスケードを起こす.
危険信号の最初の波は、ATPやADPなどの代謝中間体, クレブス回路中間体, 酸素 および活性酸素種 (ROS)の放出からなり、プリン作動性シグナル伝達により持続される. 危険が消滅したり無効化されると、抗炎症経路および再生経路が組み込まれたシーケンスが活性化され、CDRを逆転し治癒する. CDRが異常に持続すると、身体全体の代謝と腸管の細菌がかく乱され、多数の臓器系の集団的な性能が劣化し、挙動が変わり、慢性疾患が起こる.
炎症を抑制すること
多くの炎症を促進させる経路の一つを阻害することで薬理学的に炎症を抑制することが、好ましい治療法方だと、我々は本能的に考える. けれども、この方法は、ミトコンドリアの損傷を追加し、さらに腸管細菌叢のバランスを変え、免疫をさらに活性化するだけで、ミトコンドリアや細菌の健全を回復することには役立たないかもしれない. 緊急の急性のケースでは、これは正当な方法であるかもしれない、この場合には、即座の、たとえ一時的にでも、炎症を抑えることが必要とされている. しかしながら、炎症を短期間抑制したことによる利益は、ミトコンドリアの損傷を増やし、慢性および/または進行性炎症のリスクを増やしたことで無効化される. 全体のプロセスが、医療のもぐらたたきとなるリスクがあり、医薬品売り上げのメリットがあり、長期に及び炎症性病状の痛みを伴って生きる人々には惨憺たるものである.
障害を受けたミトコンドリアが炎症性経路を活性化し、ワクチン、医薬品そして環境毒物がミトコンドリアの損傷を引き起こすという事実を鑑みれば、おそらく、腸管細菌の健全性とミトコンドリアの全体的な機能を回復することを考え始めなくてはならないであろう. そして、話は多少それるが、たぶん、持続する炎症は自己炎症性反応ではなく、進行中のミトコンドリア機能不全の徴候としてみる必要があるであろう.
(訳注:記事の中の意見には、その意見のベースとなる論文へのリンクが付いています)
2014年9月22日月曜日チャンドラー・マーズ博士
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HPVワクチン有害反応の中核となる症状のひとつに、説明不能と思われるが観察可能な脳の炎症と白質崩壊がある程度含まれることは、当然であろう. 脳の炎症には、多数の異なる名称と診断があり、そのいくつかは領域が特定されている例えば小脳 異常であるが、それ以外にもより広汎におよぶ障害があり、例えば、急性散在性脳脊髄炎(ADEM), 筋痛性脳脊髄炎(ME), 慢性疲労, 多発性硬化症(MS)などの病変としてしられるもの, そしてそれらのかなでも最も新しくおそらくより先見性のある, アジュバント誘発性自己免疫/炎症性症候群、すなわちASIAと定義される一連の病状がある. それは、ワクチンアジュバントへの暴露に関する中枢性および末梢性慢性炎症を意味する.
脳の免疫は特別なのか?
多くのHPVワクチン被害者に脳の炎症が観察されているにもかかわらず、多くの医師、そしてFDAやCDCも、アルミニウムリポ多糖アジュバント賦活ウイルスベクターが神経炎症応答を誘発することを認めることを拒否しているようであり、障害後の患者を途方にくれさせている.
脳の炎症をワクチンの反応と結びつけることを困難としているは、血液脳関門が末梢からの侵入者にたいして頑丈に保護されていると信じ込んでいたからである. 長いこと、脳は、末梢の免疫機能とはほとんど伝達のない「免疫の特権」が与えられていると考えられていた. 実際、血液脳関門が侵入不可能であるという認識はとても強いものであり、脳と身体の分離は、まるでボトルの中の脳と、断頭された身体という具合に考えられているかもしれない.
論理的には、これが本当ではないとわかっている。脳/中枢神経系の免疫と、身体の免疫の間には、クロストークがあるはずである. もし2つの部分がそれほど完璧に分離されているなら、一体どうやって私たちは生存できるのであろうか? 最近になってその論理が一般的になりつつある. ここ何十年かの研究の結果、長く信じられていた脳免疫特権の概念は、完全に間違っていたことが示唆されている. 事実、免疫系は初期の神経発生を先導するだけでなく(それゆえ、母親の免疫機能が重要である)、長期にわたって脳の形態変化に影響を与えている. 同様に、脳からのシグナルは、末梢免疫機能に絶えず影響を与えている.
免疫系は、通常の機能の間も、病気においても、神経系に影響を与えているようである. 慢性感染症や重度の病気は、通常の神経-免疫クロストークのバランスを阻害し、発達中の脳に永久的な構造上の変化を起こし、および/または後の人生における病気を誘引する. 「免疫」シグナル伝達分子の多様性、乱雑性、重複性のおかげで、免疫系および神経系の両者にとって必要である、活性と正確なシグナル伝達経路の複雑な協調が可能となる.
したがって、末梢での栄養状態や毒物への暴露が、身体で中枢神経系の機能に影響を与え、脳の炎症を誘発することが可能であること、そしてその逆の経路が可能であることも、驚くべきことではない.そして、おそらく、それは私たちが理解している以上に影響を与えあっているであろう.
脳の炎症について再考する
ADEM, ME, MS や他の脳の炎症の症例や研究、定義などを読んでいると、末梢における生化学的病変が神経炎症反応に関連しているという考えに、関心が寄せられていないことに気が付く. にもかかわらず、もし、身体中および身体に対して起こることは身体の中に留まることは無いという仮定を受け入れるなら、脳の炎症へのアプローチの仕方を再構成することが可能である.
具体的には、炎症をより包括的にみて、何が炎症を引き起こしたのかだけでなく、その場所に関係なく、何が炎症を慢性的に持続させているのかとも問いかけることができる. もし進行中の末梢炎症反応があれば、たとえ、今ある画像装置の性能では炎症を可視化できなかったり、あるいは脱髄、ニューロンやアクソンの膨張、他の慢性脳炎症を示す徴候を観察するには早期すぎたとしても、同様の反応が中枢神経系内でも起こっているかもしれないと疑うことは慎重を欠くことであろうか? 私は、慎重を欠くことではないと考える.
ワクチンアジュバント: 脳の炎症へ導く道
HPVワクチンそして実際他のすべてのワクチンは、接種者の免疫応答を押し上げるために添加される化学毒性物や金属アジュバントの混合物と、不活性化したウイルスベクターを含有しており、免疫応答の増加は、ワクチン後の炎症マーカーの増加により測定される.これらのアジュバント (データーにより示されている)なしには、接種者の免疫応答の活性化は、ウイルスからの「保護」を享受するには不十分であると考えられている. 免疫応答の強さや大きさは、保護の成功と等しいとみなされる.
このため、過度の免疫応答が、慢性的に継続し、自然系がうまく作動しなくなり最後には「自己免疫」と分類されても、それは失敗や副作用ではなく、極度の成功の一例としてみなされる、つまり、免疫応答が大きいほど、ワクチンは強力である. このように観察することは歪んでいるようにみえるけれども、現行のワクチンパラダイムでは、実際には「副作用」は存在できない. 設計の点からは、炎症、脳の炎症でさえあるべきことであり、強いほど、より良いことになる. さらに設計の点からは、金属や脂質可溶物のアジュバントは血液脳関門を通り抜け、直接脳の炎症を引き起こす.ワクチンが脳の炎症を起こさないとか起こせないということは、無知であり、そうでないというなら、全く怠慢なことで, ただ論理に逆らうことである. 再び、慎重さと安全のために、身体の炎症反応が中枢神経系の何らかの調和反応を開始させるかもしれないと想定すべきではないのか?
どうして私たちのすべてがワクチンの被害を受けるわけではないのか?
明らかなことは、最も毒性の強いワクチンに暴露しても、ワクチンを接種したすべての人が、少なくとも観察可能な程度の害を受けるのではない. (しかしながら、ワクチン後に健康に見える人たちも、より正確な脳の炎症を観察する道具があったなら、少なくとも急性のそしておそらく進行性の中枢炎症応答がみつかるかもしれないと私は思っている).ワクチン後、特にHPVワクチン後に、大丈夫だったように見える人たちと、深刻な、死にいたることもあるような被害を受けた人たちとは、何が違っているのだろうか?
ワクチン副反応を示す人とそうでない人の根本的な違いは、微生物やミトコンドリアの健全にあるという考えにより傾いている. 実際、すべてのワクチン, 医薬品、環境毒物は、多数の機序で、ミトコンドリアを損傷し、かつ細菌のバランスを変えてしまう.
これらのミトコンドリアの障害に個々人が耐えられるかどうかは、3つの変数のバランスに強く依存している: 1) ジェネティックおよびエピジェネティックな、遺伝子レベルのミトコンドリア機能不全; 2) 生涯にわたる毒物への暴露の頻度と程度;および3) 栄養状態.
これらの変数が、ミトコンドリアを介して、ワクチン後の炎症の程度と慢性度に影響を与える. 特にHPV ワクチンでは、ワクチンのタイミングが、思春期にちょうど入る時期で、ホルモン系が機能し始め、将来の生殖に関する健康へのいまだ認識されていないさらなるリスクを課すかも知れない.
ミトコンドリアと細菌叢
すでに、私たちが何度も書いてきたように、ミトコンドリアは、細胞エネルギーだけでなく、細胞の生死も制御している. 身体のすべての細胞、脳のニューロンも含めて、適切に機能するためには健全なミトコンドリアを必要とする. 健全なミトコンドリアは、栄養素の濃度と密接に関連しており、それは、食事の考慮だけでなく腸管細菌叢のバランスも必要としている.
腸管細菌は、必須栄養素を合成し、食事からの栄養素を吸収代謝し、ミトコンドリアを育てる. 実際、進化の観点から、ミトコンドリアは細菌叢から進化し、生命体の健康を調整する共生関係を築いた. 腸管細菌が乱れると、病原性の感染や慢性炎症が増加するだけでなく、使用できる栄養素が減少する. これだけでも、ミトコンドリアが損傷する可能性がある.
栄養素の欠如および/または毒物への暴露のために、ミトコンドリアが損傷すると、エネルギーを節約し、合理的にできだけ長く細胞を生かすための生化学反応のカスケードが引き起こされる. 生存することが不可能になると、ミトコンドリアの隔離、最後には、死が訪れるが、それはしばしば、よく調節されたアポトーシス(予定死)ではなく、ネクローシス(壊死)による死である. ミトコンドリアが死ぬと, 細胞が死に、組織が死に、器官の機能が損なわれる. ステロイドホルモンの産出が、ミトコンドリアの重要な機能であるので、ホルモン調節不全, 卵巣障害、生殖能力の低下が、若い女性におけるミトコンドリア損傷の具体的なマーカーとなるかもしれない.
ミトコンドリアと炎症
ミトコンドリアは、免疫系の活性化および炎症を調節し、それゆえ、炎症は、ミトコンドリアの損傷のサインであり、脳の炎症でもそうである.ミトコンドリアのシグナル伝達の専門家によると:
細胞危険応答 (CDR)は、進化的に保存された、細胞と宿主を危害から守る代謝応答である. それは、細胞がホメオスタシス(恒常性)を維持する能力を超えるような化学的、物理的、生物的脅威に曝されることでトリガーされる. 結果として起こる、使用できる原料と機能的な能力の間の代謝的なミスマッチが、細胞の電子の流れ、酸素消費量、酸化還元、膜の流動性、脂質の動態、バイオエネルギー、炭素と硫黄源割り当て、タンパク質折りたたみ構造と凝集、ビタミンの入手可能、金属のホメオスタシス、インドール, プテリン, 1-炭素とポリアミンの代謝, ポリマー形成への変化のカスケードを起こす.
危険信号の最初の波は、ATPやADPなどの代謝中間体, クレブス回路中間体, 酸素 および活性酸素種 (ROS)の放出からなり、プリン作動性シグナル伝達により持続される. 危険が消滅したり無効化されると、抗炎症経路および再生経路が組み込まれたシーケンスが活性化され、CDRを逆転し治癒する. CDRが異常に持続すると、身体全体の代謝と腸管の細菌がかく乱され、多数の臓器系の集団的な性能が劣化し、挙動が変わり、慢性疾患が起こる.
炎症を抑制すること
多くの炎症を促進させる経路の一つを阻害することで薬理学的に炎症を抑制することが、好ましい治療法方だと、我々は本能的に考える. けれども、この方法は、ミトコンドリアの損傷を追加し、さらに腸管細菌叢のバランスを変え、免疫をさらに活性化するだけで、ミトコンドリアや細菌の健全を回復することには役立たないかもしれない. 緊急の急性のケースでは、これは正当な方法であるかもしれない、この場合には、即座の、たとえ一時的にでも、炎症を抑えることが必要とされている. しかしながら、炎症を短期間抑制したことによる利益は、ミトコンドリアの損傷を増やし、慢性および/または進行性炎症のリスクを増やしたことで無効化される. 全体のプロセスが、医療のもぐらたたきとなるリスクがあり、医薬品売り上げのメリットがあり、長期に及び炎症性病状の痛みを伴って生きる人々には惨憺たるものである.
障害を受けたミトコンドリアが炎症性経路を活性化し、ワクチン、医薬品そして環境毒物がミトコンドリアの損傷を引き起こすという事実を鑑みれば、おそらく、腸管細菌の健全性とミトコンドリアの全体的な機能を回復することを考え始めなくてはならないであろう. そして、話は多少それるが、たぶん、持続する炎症は自己炎症性反応ではなく、進行中のミトコンドリア機能不全の徴候としてみる必要があるであろう.
(訳注:記事の中の意見には、その意見のベースとなる論文へのリンクが付いています)