古希からの田舎暮らし

古希近くなってから都市近郊に小さな家を建てて移り住む。田舎にとけこんでゆく日々の暮らしぶりをお伝えします。

『神の国に殉ず』を読みます。

2022年02月23日 15時50分15秒 | 古希からの田舎暮らし
 図書館で『神の国に殉ず』(阿部牧郎 著 平成22年発行・祥伝社)という本を借りました。副題が「小説・東条英機と米内光政」とあります。題名にひかれたわけでもないのに「どうしてこんな本を借りたのか」自分でもわかりません。この本は〈上〉〈中〉〈下〉と3巻になっています。上巻は459ページ。読まないかもしれないから上巻だけ借りました。
 先日300ページ目から読みはじめ、グイッと引き込まれました。
 昭和のはじめ、陸軍の中には二つの派閥がありました。東条英機たちの「統制派」と対立する「皇道派」です。皇道派は2.26事件を起こして首謀者は処刑され、応援していた上官たちは陸軍の中央から追い出されました。
 そんな学校では習わない歴史が、小説としてわかりやすく書かれています。はじめは「右翼とか神がかった小説ではないか」と思いましたが、ちがいます。学校で習わなかった/歴史を知らなかった/老人たちの世代、戦後生まれの世代の人、若い世代の人、があの戦争にいたる歴史を知る「いい本」だと思いました。
 上巻は読んだので次を借りて読むことにします。どんなふうにわかりやすいか。本文をちょっと引用してみます。


 十年(昭和)8月の人事異動にさき立って林陸相は永田(鉄山=統制派)の進言どおり、徹底した皇道派排除の案を作成した。これまで三度の異動期には、真崎教育総監(皇道派の重鎮)の反対で永田の構想に沿う人事ができなかった。こんどこそ。林は不退転の決意で真崎に体当たりした。
「なんだこれは。こんなもの呑めるか」
 案を見て真崎は憤慨した。
 もうやむを得ない。林は真崎教育総監に辞任をもとめる決心をした。(中略)良識派の渡辺錠太郎参議官に支えられていた。(中略)林や統制派にとって真崎は最大の障害だった。
 事実、真崎はことあるごとに、
「これではぶじにおさまらぬ。へたをすると血を見ることになるかもしれんぞ」
 などといって対立する者を脅しあげる。
 いつ若い将校を煽って事件を起こさせるか見当もつかない。宮中も天皇も真崎を嫌って、その排除を願っていた。


 本の題に「小説」とあるように、読みやすい文章です。阿部牧郎は昭和8年生れ。ぼくの4歳年上です。「戦争の本をいっぱい読んで、調べて、書いたんだ。後世の人に、戦争当時の人たちの〈こころ〉と〈歴史〉を伝えたくて」。大部の本ですが読みとおします。
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