幸せになろうね 改め しあわせだね

日々の生活の中のほんの小さな出来事をどう捉えるかで
私達はすぐにも幸せになれるのです。

ムカデにびっくり、ムカデもびっくり

2009年07月05日 21時09分16秒 | ひとりごと
その日、夜中二時過ぎ、私は仕事を終え、ようやく風呂に入った。
湯船につかり、ふと入り口のドアに目をやると・・・・・ひぇっ~~~~~!!
なんと10センチ以上はあるだろうと思われる大きなムカデがへばりついているではないか。
主人を呼んで何とかしてもらおうにも彼はすでに高いびき。虫に強い娘も今夜は珍しく先に風呂に入り寝てしまっている。全く、なぜこんな日に限ってムカデなんかがいるのだろう。この家に住んで23年。一度だってこんな事はなかったのに。
仕方がないので、なるべく彼(?)を刺激しないよう、湯船の中で静かに静かに過す事に努めた。
そうして、こちらの方に来てもらっては困るので、ひたすらそうならないようにと祈りながら、彼の動向を監視した。
彼はドアの縁を上ったり下りたりしながら、どうにかして外へ出ようとしていた。しかし、風呂で使う水が漏れないようになっているドアから外へ出る事は出来ないらしく、隙間に入って一旦姿が見えなくなっても、結局はまた戻ってくるのである。

最初は、ドキドキしながら、恐ろしかった私であるが、それを見つめているうちに
なんだか彼が気の毒になってきた。
娘が入った時には彼はまだ、ココにはいなかったに違いない。おそらく排水溝から上がってきたのだろう。暗くて静かな風呂場に行き着いてしまい、この後、どう進もうかと思案していたのかもしれない。そんな時、急に明るくなり、大きな動物が入ってきたかと思うと、ジャアジャアと大きな音を立てて水を使い出した。びっくりしたのは彼のほうであろう。思わず叫んだ事だろう。ひぇっ~~~~~!!と。

やがて彼はドアに見切りをつけ、タイルに覆われている壁と床の角に沿って移動し始めた。けれどそこに身を隠すものはひとつもなく、全く無防備な状態である。
もし私に攻撃されたらひとたまりもない場所なのだ。急ぐ急ぐ!!さっきのドアのところでの動きとは全く異なり、彼は一目散に駆けた。それこそ、冷や汗が全身から飛び散っていそうな気配だ。
そうして、ドアとは反対側の壁までたどり着くと、その角に置いてあった腰掛の陰に隠れた。なんだかその陰からこちらを窺っているような気さえして来た。もしかしたら、恐る恐るこちらを覗き込み、私が動かないのを見てほっとしているのかもしれない。
暫くして、今度はその壁を登り始めた。しかし、つるつるしたタイルに覆われた壁を登ることは彼にとっても容易ではなかった。
何度も落ちて何度も上ってを繰り返していたが、結局、再び腰掛の陰に隠れたのである。

私はこの夜、髪を洗う事はおろか、身体さえ洗わずに風呂から出た。
もちろん、あんなに大きなムカデと格闘する気はないし、かといってシャワーで彼を流してしまう事には抵抗があったからだ。
しかし、一番の理由は早く彼をほっとさせてあげたかったからである。
風呂場のドアはきっちりと閉め、絶対に洗面所には出られない事を確認してから、電気を消した。

翌日、風呂場に彼の姿はなかった。