能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
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『正尊』を勤めるにあたって その3

2015-01-31 08:27:28 | 能はこうなの、と明生風に能の紹介
能の作品で土佐坊正尊が実際に登場する曲は『正尊』と『七騎落』です。
土佐坊正尊が金王丸と同一人物とすると、『朝長』の前シテ・青墓の長者が「武具したる、四五人内に入り給う、義朝御親子鎌田、金王丸とやらん」と謡いますが登場はしません。

『七騎落』は伊豆で平家討滅の旗揚げをした源頼朝が土肥の杉山の合戦に敗れ、舟に乗って西国へ逃れようとしますが、主従八騎は先例が不吉であることから、一人を舟から下ろす物語です。舟に乗っている武将を紹介する場面の謡いに「また三番には土屋三郎、四番は土佐坊」とあり土佐坊は「長範頭巾(ちょうはんずきん)を被りシテ連が勤めます。

写真『正尊』後シテ・粟谷菊生
『正尊』の場合は、前シテは「角帽子(すみぼうし)」を沙門(しゃもん)の形につけ、後シテは伝書には「長範頭巾」と記載されています。しかし「長範頭巾」は風格を考えると不似合いなので、近年は「袈裟頭巾(けさずきん)を使っています。私も「袈裟頭巾」で勤めるつもりです。

文責 粟谷明生


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