能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
能の世界も個人の生活もご紹介しています!

『敦盛』を演じるにあたって

2014-11-14 14:09:58 | 能はこうなの、と明生風に能の紹介
明日15日(土)、半能『敦盛』を津山文化センターにて勤めます。

半能『敦盛』のあらすじは、一ノ谷合戦で当時十六歳の平敦盛を討ち取った熊谷次郎直実は、あまりの痛ましさに無常を感じ出家し蓮生と名乗ります。

蓮生法師は敦盛の菩提を弔うため、再びかつての戦場一ノ谷を訪れます。蓮生法師が夜もすがら念仏を唱え敦盛の霊を弔っていると、武将姿の敦盛の霊が現れ、平家一門の栄枯盛衰を語り、討ち死の様を見せ、敵に巡り会ったのだから仇を討とうとしますが、後生を弔ってくれる蓮生はもはや敵ではない、と回向を喜び、恨みを棄てて消え去ります。

『敦盛』は主人公(シテ)が若い設定のため若い演者に相応しい曲と思われますが、実は若さだけで立ち向かうと逆に説得力のない能となる、そんな危険性を持った不思議な能です。

通常、修羅物のシテ(主人公)は修羅道に堕ちた武士の苦患の有様を「カケリ」という舞で表現しますが、『敦盛』は「男舞」を舞います。これは武将・敦盛より、音楽好きの若い貴公子を強調したい、との作者の意図かもしれません。

歌舞的な要素に重点を置いた修羅物『敦盛』を59歳の私が、平成7年に勤めて以来再演します。経験を生かして、若き貴公子の可憐さと凛々しさを表現出来れば、と思っています。

文責 粟谷明生
写真 『敦盛』シテ粟谷明生 撮影 三上文規


最新の画像もっと見る