能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
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能『小塩』その2

2021-05-18 08:22:35 | 能はこうなの、と明生風に能の紹介
能『小塩』は、京都市西京区西部の大原野での出来事です。
若かりし頃、能『小原御幸』(他流は大原御幸)の京都市左京区の大原と間違えていたことを恥ずかしく思い出します。
 
ちょっと脱線してしまいますが、京都在住の喜多流能楽師の高林呻二氏からの情報が、とても興味深いので引用いたしますと
「寂光院の大原は「おはら」、小塩の大原は「おおはら」と読み分けていたのですが、デュークエイセスの「女ひとり」の辺から「おはら」も「おおはら」と呼ぶのが主流になってしまったようです」
とのことです、さて話を戻します。
 
大原野には藤原家を祀る大原野神社があります。
能『小塩』は、その藤原家出身の二条の后(藤原高子)が、行幸された時に昔恋仲だった在原業平も同行していて
♪ 大原や小塩の山も今日こそは
神代の事も思い出づらめ ♪
 
と、后との恋路を懐かしみ詠んだ和歌をテーマに金春禅竹が作ったと言われています。
 
業平52歳、后(高子)35歳、
 
17歳違いの二人が駆け落ちしてから17年経っての出来事です。
 
昔、好きだった人との再会で、淡い恋を思い出し歌を詠むのは歌心があれば出来ますが、私は残念ながら思い出すだけです。もっとも、思い出として自分の中にそっとしまっておくのが良いのかもしれませんね。
 
「会わなかった方がよかった!」
と、後悔するより。
 
52歳の業平は後悔しなかったんだろうなあ・・・
などと、思いながらお稽古しています。
 
写真 能『小塩』シテ 粟谷能夫
 
撮影 あびこ喜久三
 

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