能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
能の世界も個人の生活もご紹介しています!

ゆかたの女性

2012-08-08 08:34:46 | 言いたいこと・伝えたいこと 
濃紺色に薔薇模様のゆかたを着て、赤紫色の帯で艶っぽく、ちょっと気になる美麗な女性が目の前にいる。22~3歳かな。いやあの艶気は27、8歳だろうか。
昔から女性の年齢が判らぬ私だ。

視線を下ろすと、なんと履物は白色に靴紐が派手な赤色のナイキの運動靴だ。
普通、下駄か草履だろうが・・・と思ったが、まあかわいいから靴でも許そう。

もう一度視線を上げると、今度は鞄が気になった。
なんだかゆかたに似合わぬ洋物を抱いている。その端にピンク色の小さな熊の縫いぐるみが付いているが、これが薄汚い。

急にこの女子が十代に見えた。

それがどうしたと言われたらそれまでで、確かになにを着てもいい、その人の自由なのだが、ただファッションはトータルで全体のバランスというのも必要だろう。
似合わぬ一品で、折角のよい雰囲気がだめになるのは勿体ない。

「あれさえなければね~」
と、思わぬ一品で、美しい物・者が幼く汚く見えてしまうから、気をつけたいものだ。別に私は飛び抜けてファッションセンスが良いわけではないが、気になった。

能の世界でもある。
上手な能役者と言われながら、
「なんであれを着るの。なんであんなの付けるの」
と、私を驚かす人がいる。

シテ方の能役者は演者でありながら、何を着て、面は何を選ぶか、これも重要な仕事で、デザイナーでもありスタイリストにもならなければいけない。

喜多流は昔、家元や師匠筋、親が面、装束すべてを選んでくれたが、今は自分で選べる時代になった。良いことだ。

まさか白足袋に替えてホワイトソックスなんていう時代は来ないと思っているが、適切な効果が上がるものを身につけるのもひとつの技である。

ということを、ゆかたの女の不似合いな縫いぐるみが再認識させてくれた。

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