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前回の「『景清』鑑賞手引き・その4」で投稿しました『景清』の謡「あ~い、な~~れ」は「粟谷菊生・能語り」編・粟谷明生に載っていますが、ここで一部をご紹介します。
あるお弟子様が「遊女と相馴れ!」と大きな声で謡うので、僕は「二人は抱き合っているんだ、女の子ができるんだ。そんな謡い方ではだめだ!」と言って何度も何度もやり直しをさせたことがある。
そうしたらやがて良い感じで「相馴れ(あ~い、な~~れ)」が謡えるようになった。その方が亡くなったときに、弔問に伺うと、奥様が
「あの頃、主人は、朝から晩まで あ~いなれ、あいなれ、でした。そのうちとても良いように謡えるようになったんで、本当にどこかで相馴れたのではないかと心配しましたよ」
とおっしゃった。
能は理屈ではない。人生そのもの。
父は謡は何度も謡っていくうちにその人のものになる、と言っていました。
私が編集した「粟谷菊生・能語り」ぺりかん社 ¥3200+税 や「景清 粟谷菊生の能舞台」ぺりかん社¥4200+税には、このようなエピソードがたくさん載っています。
私の『景清』をご覧になる前に、ご一読なさるのもよいかと思い、宣伝も兼ねてここでご紹介させていただきました。