能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
能の世界も個人の生活もご紹介しています!

鰹節削り 

2016-09-27 08:43:14 | 言いたいこと・伝えたいこと 
先日、友人宅で久しぶりに鰹節を削るところを見た。最近は、薄く削られた鰹節パックが市販されているので、わざわざ削り器を使うことは少なくなったが、鰹節を削る音は子供の頃を懐かしく思い出させてくれた。

身を粉にして、と言う言葉がある。古臭い感じがしないでもないが好きな言葉だ。

身を粉にして謡う、
これは父の言葉。

謡は独特な発声をするが、その声は能役者の体内に無尽蔵にあって永遠に出るもの、とお思いの方もおられるだろうが、さにあらず。謡の声は消耗品だと思う。
専門的な説明になるが、謡いの声は、「豎(しゅ)」と「横(おう)」に大きく分かれ、息は「出す」と「引く」の二つがあり、それを「祝言(陽)」か「望憶(陰)」の心持ちで発声する。

そして優れた謡い手はその声のエネルギー(心)を自分自身へ圧(ストレス)をかける、すると「いい謡」になる、そう教わっている。このエネルギーとストレスこそ、「身を粉にして」粉ではないか、と勝手に信じ込んでいる。

声質よく、調子もよく、無理なく楽にエネルギーを出しながら謡えたらなんていいんだろう、と思う時があるが、どうも私にはその素質は無さそうなので、ならば身を粉にして謡わなくては、と心がけている。

消耗していくのを覚悟の上で、観客のため、同じ舞台にいる仲間にも、そして自分自身にも、精一杯謡い勤めたい、と思っている。

人は加齢すると己大事になってしまうようだが、人のため精一杯謡わなくては!
そう覚悟すると、意外に気持ちって楽になる。
61歳寸前でしみじみと思ったりしている。

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お申し込み先
粟谷明生事務所
akio@awaya-noh.com

文責 粟谷明生

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