能『葵上』の主人公は題名の葵上ではなく六条御息所です。若くイケメンの光源氏は年上の人妻、東宮(皇太子)の妃である美しい六条御息所に憧れ恋に落ち、二人は深い関係となります。楽しい時間が流れますが、源氏が葵上を正妻に迎えると、御息所との関係は次第によそよそしくなり疎遠となります。気位の高い年上の御息所は、東宮に先立たれ次第に権力も衰え寂しい日を送っていました。ある時、気晴らしに葵祭りの見物に出かけ事件が起きます。

見物する場所の取り合いで御息所と葵上の車は争いとなり、御息所の車は、見物しにくい奥の場所に追いやられてしまいます。この屈辱的な行為は正妻葵上に対しての恨み、そして嫉妬心を増長させ御息所は遂に生霊となってしまいます。
無意識の内に病に伏した葵上の枕元に取り憑き、苦しめる御息所。怖ろしい、でも可哀想な熟女なので、私同情してしまいます。

能『葵上』の前場には「車」と言う言葉が多く出てきます。「車」がキーワードです。

昔はシテが車の作物の中で謡う演出もあったようですが、今はいたしません。しかし、ご覧になる方は「御息所は車に乗っている」と想像していただきたいのです。能は観る方の想像にゆだねる世界です。御息所と車はとても関係が深いのです。つづく

品川能楽鑑賞会は11月1日(土)古典の日、喜多能楽堂14時より、第一部に葛西聖司氏のお話がございます。脇・中正面、お席まだ若干残席がございます。車に乗っている六条明生所をご覧いただきたく、ご来場をお待ち申し上げております。

チケット申し込み、akio@awaya-noh.com


写真 泥眼 粟谷家蔵 粟谷家所蔵能面選より
文責 粟谷明生


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