能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
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三点から四点へ

2014-03-18 08:27:04 | 言いたいこと・伝えたいこと 
『道成寺』を28年ぶりに再演した。初演の30歳の時も、それなりに必死にいろいろ考え勤めていたつもりだが、今58歳の再演にあたり、曲への取り組み方の再考、体力維持と健康管理、こんなに真摯に、舞台を勤めることに向き合えたことに自分ながら驚いている。やはり、NHKの公開録画収録という強烈なプレッシャーは、自然と「心」「技」「体」の充実を求めたのだろう。歌舞の「技」を極め、精神力の「心」を高め、そして「体」の健康管理にも充分注意した。ソチオリンピックで出場しながら、試合当日に病魔に襲われ欠場したアスリートもいたが、その無念な気持ちが身に染みてわかる。

「三点確保」という言葉は大学時代に山のクラブで学んだ。ロッククライミングや沢登りは手二点と足二点の四点でまず身体を支えるが、登るときは手と足の二点を同時に動かしてはいけない、落ちる危険がある。安全な登攀は必ず三点は動かさずに確保して、一点だけを移動させて登るのが基本、と言われた。

よい興行を行う必須条件とはなにか?を考えてみた。
まずは能役者の三点確保、心技体とふり分けられる。が、あと一点なにか足りない気がする。どうも四点でないと安心出来ない。う~~なにかな?と考えて出た答えが自然現象だ。能役者の能興行の成功は能役者の心技体の充実はもちろんのこと、天候に恵まれ、天災、災害が起こらないことも欠かせない条件ということを再認識した。

『道成寺』再演は公開録画となり、プレッシャーに襲われたが、必死に心技体の向上を目指した。しかし最後にふと、道成寺の演能中になにもアクシデントが起こらない、平穏無事な時間が流れてほしいと願った。
いくら必死に演じ、上手く撮影し、観客の皆様も面白くご覧になられても、大地震や火災が起きたら、もう台無しである。兎に角、なにも起きないことを、神々と仏たちに祈った。なにも起きないこと、それがいかに重要なことかを、『道成寺』再演と、NHK公開録画から学んだ。

「古典芸能への招待 能『道成寺』」NHK・Eテレ
4月27日(日)21時より2時間放送


写真 
仕舞の型 粟谷明生    撮影 森口ミツル 
『道成寺』シテ・粟谷明生 撮影 石田 裕

文責 粟谷明生


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
深いです (竹内)
2014-03-18 11:01:06
私も先生のブログから学ばせていただいていることは本当に多いです。
この四点も又改めて再認識いたしました。
放送楽しみにしております。
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お返事 (粟谷明生)
2014-03-18 12:11:04
竹内様
コメント有難うございます。
調子づくと、バンバン書けるのに、不調だと全然だめ(笑)まあ、プロじゃないから、いいね、ですよね?
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