能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
能の世界も個人の生活もご紹介しています!

『望月』その2

2017-01-26 09:26:03 | マジメ能楽 楽屋表話

明日、東京新聞に第100回粟谷能の会の記事が記載されます。
ご購入、ご高覧のほど、よろしくお願い申し上げます。

いよいよ三日後に「喜多流特別公演」(1月29日)『望月』が迫って来ました。
『望月』は劇的な仇討ち物語で明解で判りやすく、どなたでも楽しめる作品です。

私たち演じ手は
「能としての様式美を崩さず品位を保ちながらも、戯曲の面白さを伝えることに充分気を置くこと!」
と、先人より教えられ、私もそれを守り勤めたいと思っています。

舞台展開は中盤以降、仇討ち場面へと進行し、望月秋長・ワキ(殿田謙吉)や望月の従者・アイ(山本則重)と、小澤友房・シテ(粟谷明生)と花若・子方(大島伊織)の四人の謡のやりとりから、緊迫感溢れる場面がはじまります。

地謡は曽我物語を謡うクセがメインです。ここは秘技が隠され特別な謡い方で場面を盛り上げていきますので、その辺りをお聞きいただければ、と思います。

さて、サシからクセはお座敷で曽我兄弟(兄・一萬と弟・箱王)が親の敵を討つところを歌うことになりますので、お話の内容をここでご紹介しておきます。

河津三郎の子、一萬と箱王の兄弟が五歳と三歳の時に従兄弟の工藤祐経に討たれます。 
二人が七歳と五歳になると、幼けない心にも父の敵を討つ、と思いはじめます。
あるとき兄弟が持仏堂で兄の一萬が仏様の不動明王にお香を焚き、花をお供えすると、弟の箱王がそれを見て、「仏の名が宿敵の工藤、しかも剣と縄を持って自分たちを睨んで立っているのが憎い」と走り寄り首を斬り落とそうとするので、兄が「仏の名は不動、敵は工藤だ、」と諭し、弟は抜いた刀を鞘に差し不動に向かい手を合わせ「どうぞ敵を討たせて下さい」、と、その瞬間、花若はしびれを切らし友房に
「いざ討とう(今だ、あいつを殺せ!)」
と叫んでしまいます。

この場面、演者達に動きはまったくありませんが、力強い地謡の謡と強い掛け声と音色による囃子方の演奏は興奮を誘い見どころです。




いよいよ終盤、八撥(鞨鼓)を舞う花若役の大島伊織君と、私演じる明生友房の獅子舞が最大の見どころとなります。

どうぞ皆様のご来場をお待ち申し上げております。

(チケットのお申込・お問い合わせ)
喜多能楽堂事務所 電話 03-3491-8813
粟谷明生事務所 akio@awaya-noh.com

文責 粟谷明生
写真 『望月』シテ・粟谷明生 撮影 あびこ喜久三



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