能楽・喜多流能楽師 粟谷明生 AWAYA AKIO のブログ

能楽師・粟谷明生の自由気儘な日記です。
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能がわかる40代

2012-06-29 06:49:51 | 能はこうなの、と明生風に能の紹介

ごく一般的な話である。今舞台で活躍されている能楽師の方々の大半は、若い時から稽古を始め、今に到っている。たぶん。

私自身、3歳で初舞台、120回の子方を経験して、舞台に上がった回数は6月現在、通算1132回だ。しかし反感を買うのを覚悟で言うが、能はいくら若い内に始めても、能の本質、能の魅力、能そのものを知ることが出来るようになるのは40代になってからだ。

40代は、異性のことも知り、親にもなり、そして死別を経験する。四季の花にも目が行くようになり、人としての成長の幅、奥行き、厚味が出る最初の時期だ。若い時から始めるのが意味ないと言っているのではない。若いころから積み上げてこそだが、本当の花は40代にならないと開花しない、と申し上げている。


能は様々な人間ドラマから、杜若や芭蕉の精などを主人公にしたとても抽象的なよくわからぬ物語までもが平気で残っている。それが能の魅力かもしれないから不思議だ。


観る者も演じる者も人としての円熟期を迎えないと判らぬ、大人の演劇だと言っていい。

能をどなたにも知っていただきたいのはやまやまだが、敢えて40代の男女諸君に、今からが能がわかる時期である、適齢期だ、是非とも能楽堂に足を運んでほしいと言いたい。もちろん最初は意味が判らず、ノンビリ演じているようで、面白くないかもしれない。

ところが「それが面白い!」と真逆な発想が生まれるかもしれないのだ。

そんなわけで、日本古典芸能の能はちょっと変わっている。だからこそ今これに注目してほしい。20代、30代からかじり始めるのもいい。だが40代は能の本当の滋味を味わう時期だ。この滋味がわかるかわからないか、能で自分を試してみてはいかがかな?

写真提供 粟谷明生 撮影 石田 裕 
能『白是界』『百萬』 シテ 粟谷明生
 


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