トラッシュボックス

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朝日社説「住基ネット 離脱の自由を認めよ」

2006-12-06 00:23:13 | 未整理
 先日の大阪高裁での違憲判決を受けて、『朝日新聞』が5日朝刊の社説「住基ネット 離脱の自由を認めよ」で、
 
《行政機関に勝手に個人情報を使わせないためには、第三者による監視機関を設ける必要がある。目的外に利用していいかどうかは、監視機関で審査する。自分の情報がどのように使われているのかを知りたい場合には、監視機関に問い合わせができるようにすればいい。政府はそうした対策を急がねばならない。
 だが、それでも不安がぬぐえないという人たちには、やはり住基ネットに加わらない自由を認めるしかあるまい。 》 

と、選択の自由を認めよと主張している。
 しかし、住基ネットとはそのような性質のものだろうか。

 私は、住基ネットについてよく知らない。政府が、電子政府による効率化に必要だとか広報していたので、ああそうなのかなと思っている程度だ。反対している人の論理も、あまりよくわかっていない。
 しかし、判決が、「自己のプライバシー情報の取り扱いについて自己決定する権利(自己情報コントロール権)は憲法で保障されているプライバシー権の重要な一つになっているとし」(朝日の本判決の記事から引用)、住基ネットを違憲と判断したことには疑問を覚える。

 行政機関が個人情報を扱うのはその性質上当然のことで、効率化のためそれを統一してネットで利用しようというのもよくわかる話だ。
 自己情報コントロール権なるものは、行政機関に対しても認められるものだろうか。それを認めれば、現在の住民登録や登記といった制度自体の是非が問われることになるのではないか。

 「具体的な漏洩の危険は認められない」(同)のに、「制度自体に欠陥があると断定した」(同)というのもよくわからない。

 社説はさらに妙なことも述べている。

《住基ネットをNHKの受信料集めに利用することも検討されている。視聴者の引っ越し先を突き止めようというのだ。これが認められれば、利用範囲がどこまで広がるか、不安はさらに募るだろう。 》

 これは本当だろうか。NHKが引っ越し先を把握するために住基ネットを利用できるというのだろうか。NHKは行政ではないので確かにこれは目的外使用だが、「検討されている」とのことなので実現するかどうかも定かではない。仮にこれが認められたとして、利用範囲がどこまで広がるというのか。何が不安なのだろうか。

 住基ネット導入のころ、反体制色の強い人々ばかりか保守派の櫻井よしこまでが反対していたのが印象に残っている(現在はどうだか知らない)が、何をそんなに危険視しているのかよくわからなかった。国民総背番号制で何がいけないのだろうか。先進諸国の多くが実施していると聞くが。

 もう一点。仮に選択制にすると、その差異により行政機関に何かと不都合が生じるばかりか、不参加者がかえって行政上不利な扱いを受けることにはならないか。秩序を乱す人間とのレッテルを貼られるおそれはないか。住基ネット自体の廃止ならともかく、選択制はおよそ検討に値しない暴論だと思う。