23日にYahoo!ニュースでこんな記事を見た。
検索したら、「対レイシスト行動集団 C.R.A.C.」のサイトに発言の書き起こしが載っていた。
これは確かに事実誤認だ。通名で犯罪歴を全部消すことなど出来はしない。
何故なら、通名は本名とともに登録するものであり、セットになっているからだ。
竹田氏が言うのはこういうことだろう。在日朝鮮人李正煕(仮名)が罪を犯し、犯罪歴が記録された。李は通名として田中一郎(仮名)を登録し、再び罪を犯し、検挙された。しかし捜査機関や裁判所は田中一郎は李正煕と同一人物であるとは見抜けず、田中一郎の新たな犯罪歴のみが記録された。李は今度は通名を山田大助(仮名)に変更し、みたび罪を犯し、検挙された。今度も捜査機関や裁判所は山田大助が元・田中一郎であり本名李正煕であることに気付かず、山田大助の新たな犯罪歴が記録されるにとどまった……。
そんなことは有り得ない。
通名は登録するものなのだから、調べればアシがつく。
だいたい、そんなことがまかりとおっているのなら、それこそ既に大問題になっているだろう。
わが国の捜査機関や裁判所の目は節穴か、わが国の法制度はザルなのか、ということになる。
竹田氏は、そんな常識も持ち合わせていないのだろうか。
こうした人物にしたり顔でわが国の歴史を語ってもらいたくないと改めて思った。
いや、「たとえば通名っていうのがあって、日本人の名前に変えることによって、……全部消すことができて」というくだりからすると、そもそも通名というものについてどれほど理解しているのかも怪しい。通名とは在日が日常で用いている日本人風の名前であり、本名で生活している在日が、犯罪歴を消すために突然申請するといった性質のものではない。もちろん普通はコロコロ変えるものでもない。
もっとも、中にはコロコロ変更して別人を装い、悪用する者もまれにはいるだろうし、実際にそうした者による犯罪もあったと聞く。しかしそれは、養子縁組を繰り返して姓を変えて悪用する日本人がいるのと同じことである。そして、そういう手段では、結局のところ検挙されてしまうだろう。
竹田氏は、皇室やわが国の歴史については詳しいのだろうが、このいわゆる在日特権の問題については、ロクな知識もないままに在特会などの主張を真に受けているにすぎないのではないだろうか。
BLOGOSを見ていると、このコリアNGOセンターによる抗議の報道について、木走正水氏が22日付の記事「「読売テレビ:在日コリアン発言で抗議 NPO法人」(毎日新聞記事)報道について少し補足してみる~国籍に関わらずしっかりと背景を掘り下げた分析報道を望みたい」で次のように論じていた。
として、韓国の大手紙、朝鮮日報の日本語版のコラム「萬物相」の「身分ロンダリング」という記事で、韓国で改名の要件が緩やかになった結果、犯罪者が改名によって身分をロンダリングする事例が相次いでいるとの記述があることを挙げ、
と締めくくっている。
しかし、ここで朝鮮日報のコラムが述べているのは、改名、つまり本名の変更であって、通名の話ではない。
また、本国において改名が可能である以上、在日韓国人においてもそれは制度上は可能であるのかもしれないが、それが本国人と比べて容易であるとは思えないし、在日においてそれがどの程度行われているのかも明らかではない。
まして、それが犯罪歴のロンダリングに用いられているかどうかはなおさら。
それに、これは韓国の話であって、北朝鮮では事情はまた異なるだろう。
この朝鮮日報のコラムには確かに「犯罪者たちが警察の追跡を逃れるために改名し、身分を「ロンダリング(浄化)」する事例が相次いでいる」とあるが、それが「06年には10万件、09年には17万件と急増した」改名のうちどの程度を占めているのかは明らかではない。「相次いでいる」という表現から、おそらくごく一部にすぎないのではないだろうか。
韓国は、わが国よりずっと以前からいわゆる国民総背番号制を採用していると聞く。ならば改名していようがその履歴の確認は容易ではないかと思うのだが、そうした利用方法には制限がかけられているのだろうか。だとしてもそれは制度なり運用なりの不備であり、改名自体が悪いわけではない。
いずれにしろ、これは韓国本国における改名の話であって、わが国における通名使用の、いわゆる「在日特権」の問題とは全く関係ない。
何の「背景」も「掘り下げ」ていないし、何の「参考に」もならない。
「在日コリアンに対する「明らかに事実に反し、偏見を助長する」発言は厳につつしむべき」と言うなら、木走氏は、まず竹田氏の発言がそれに値するのかどうかを語るべきではないのか。通名の使用や通名の変更により犯罪歴や金融関係の経歴を全部消すことができるのかどうかを。
それには何の論評も加えず、無関係な韓国での改名による「身分ロンダリング」の話を持ち出すようでは、在日韓国人もまた改名による「身分ロンダリング」を行っているのではないかと疑わせる(そしてその根拠は全く示されていない)という点で、木走氏もまた「偏見を助長する」発言を行っているように思われる。
そして、在特会や竹田氏に対して、木走氏自身が「腫れ物に触るような」対応をしているように見受けられた。
<読売テレビ>在日コリアン発言で抗議 NPO法人
毎日新聞 10月22日(火)11時54分配信
読売テレビ(大阪市)が今月20日に放送した番組「たかじんのそこまで言って委員会」で、出演者が在日コリアンに対する差別を助長する発言をしたとして、在日外国人の人権保障に取り組む大阪市のNPO法人「コリアNGOセンター」が22日、同社に対し、抗議した。放送倫理・番組向上機構(BPO)にも、審理を申し立てた。
番組では、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」によるヘイトスピーチ(憎悪表現)の問題が取り上げられた。パネリストで出演した作家の竹田恒泰氏が「在特会が活動したおかげで在日の特権の問題が明らかになった」とし、「例えば、通名というのがあって、日本人の名前に変えることによって、犯罪歴や金融関係の経歴を全部消すことができ、また新たな犯罪ができる」と話した。
「コリアNGOセンター」は抗議文で「発言は明らかに事実に反し、偏見を助長する」と指摘。読売テレビに対し、「放送は事前収録だったのに、虚偽の内容に基づく番組を放映した責任は重い」とし、放送内容の訂正を求めた。
読売テレビは「抗議を受けたことに対して、現在詳細に検討しています」とコメントしている。
検索したら、「対レイシスト行動集団 C.R.A.C.」のサイトに発言の書き起こしが載っていた。
竹田恒泰「私は在特会が…いいこともしたんです。別にしゃべってる内容がいいというわけじゃなくて、在特会が活動したおかげで、在日の特権というものの問題が明らかになったわけですよ。これまでほとんど誰も知らなかったんですけど。たとえば通名っていうのがあって、日本人の名前に変えることによって、今までの犯罪歴から、金融関係の経歴から全部消すことができて、また新たな犯罪ができるとか、そういうことをですね、かなり表現したんですね。だから在特会は表現についてはいろいろと意見が分かれるところですけども、在特会が問題提起したことというのは、かなり重要なことも含まれているんです。ただ、私はああいう表現はしないですけども、在特会には在特会の意義はあったと思うんですね」
これは確かに事実誤認だ。通名で犯罪歴を全部消すことなど出来はしない。
何故なら、通名は本名とともに登録するものであり、セットになっているからだ。
竹田氏が言うのはこういうことだろう。在日朝鮮人李正煕(仮名)が罪を犯し、犯罪歴が記録された。李は通名として田中一郎(仮名)を登録し、再び罪を犯し、検挙された。しかし捜査機関や裁判所は田中一郎は李正煕と同一人物であるとは見抜けず、田中一郎の新たな犯罪歴のみが記録された。李は今度は通名を山田大助(仮名)に変更し、みたび罪を犯し、検挙された。今度も捜査機関や裁判所は山田大助が元・田中一郎であり本名李正煕であることに気付かず、山田大助の新たな犯罪歴が記録されるにとどまった……。
そんなことは有り得ない。
通名は登録するものなのだから、調べればアシがつく。
だいたい、そんなことがまかりとおっているのなら、それこそ既に大問題になっているだろう。
わが国の捜査機関や裁判所の目は節穴か、わが国の法制度はザルなのか、ということになる。
竹田氏は、そんな常識も持ち合わせていないのだろうか。
こうした人物にしたり顔でわが国の歴史を語ってもらいたくないと改めて思った。
いや、「たとえば通名っていうのがあって、日本人の名前に変えることによって、……全部消すことができて」というくだりからすると、そもそも通名というものについてどれほど理解しているのかも怪しい。通名とは在日が日常で用いている日本人風の名前であり、本名で生活している在日が、犯罪歴を消すために突然申請するといった性質のものではない。もちろん普通はコロコロ変えるものでもない。
もっとも、中にはコロコロ変更して別人を装い、悪用する者もまれにはいるだろうし、実際にそうした者による犯罪もあったと聞く。しかしそれは、養子縁組を繰り返して姓を変えて悪用する日本人がいるのと同じことである。そして、そういう手段では、結局のところ検挙されてしまうだろう。
竹田氏は、皇室やわが国の歴史については詳しいのだろうが、このいわゆる在日特権の問題については、ロクな知識もないままに在特会などの主張を真に受けているにすぎないのではないだろうか。
BLOGOSを見ていると、このコリアNGOセンターによる抗議の報道について、木走正水氏が22日付の記事「「読売テレビ:在日コリアン発言で抗議 NPO法人」(毎日新聞記事)報道について少し補足してみる~国籍に関わらずしっかりと背景を掘り下げた分析報道を望みたい」で次のように論じていた。
今回はこの問題について少し補足説明を試みたいです。
竹田氏は通名の問題の一例として「例えば、通名というのがあって、日本人の名前に変えることによって、犯罪歴や金融関係の経歴を全部消すことができ、また新たな犯罪ができる」としていますが、韓国人においては2005年の法律改正以降、本名の改名が原則として許可されており改名しやすくなり、改名申請者が年々増えている現実があります、そのため韓国本国においても「身分ロンダリング」するため犯罪者の改名も相次いでいるわけです。
として、韓国の大手紙、朝鮮日報の日本語版のコラム「萬物相」の「身分ロンダリング」という記事で、韓国で改名の要件が緩やかになった結果、犯罪者が改名によって身分をロンダリングする事例が相次いでいるとの記述があることを挙げ、
「あまりに簡単に改名を申請し、すぐに許可を下す世の中となったことで「身分ロンダリング」というおかしな副作用が起きている」のも、韓国の報道機関自身が認めているよろしくはない事実なのであります。
在日コリアンに対する「明らかに事実に反し、偏見を助長する」発言は厳につつしむべきであります。
しかしながら韓国籍の人ならば改名は比較的簡単にでき、それが犯罪者たちが警察の追跡を逃れるため等「身分ロンダリング」という「おかしな副作用」を招いてる事実もあります。
当然ながら本国においても在日の韓国籍の人においても「身分ロンダリング」は可能な事実があります。
在日コリアン関連の報道では、例によって日本のマスメディアは腫れ物に触るような事実報道しかしないのですが、本来は国籍に関わらずこのような社会問題では、しっかりと背景を掘り下げた分析報道を望みたいものです。
今回はこの問題について読者が考察する上で参考になればと、「読売テレビ:在日コリアン発言で抗議 NPO法人」(毎日新聞記事)報道について少し補足してみました。
と締めくくっている。
しかし、ここで朝鮮日報のコラムが述べているのは、改名、つまり本名の変更であって、通名の話ではない。
また、本国において改名が可能である以上、在日韓国人においてもそれは制度上は可能であるのかもしれないが、それが本国人と比べて容易であるとは思えないし、在日においてそれがどの程度行われているのかも明らかではない。
まして、それが犯罪歴のロンダリングに用いられているかどうかはなおさら。
それに、これは韓国の話であって、北朝鮮では事情はまた異なるだろう。
この朝鮮日報のコラムには確かに「犯罪者たちが警察の追跡を逃れるために改名し、身分を「ロンダリング(浄化)」する事例が相次いでいる」とあるが、それが「06年には10万件、09年には17万件と急増した」改名のうちどの程度を占めているのかは明らかではない。「相次いでいる」という表現から、おそらくごく一部にすぎないのではないだろうか。
韓国は、わが国よりずっと以前からいわゆる国民総背番号制を採用していると聞く。ならば改名していようがその履歴の確認は容易ではないかと思うのだが、そうした利用方法には制限がかけられているのだろうか。だとしてもそれは制度なり運用なりの不備であり、改名自体が悪いわけではない。
いずれにしろ、これは韓国本国における改名の話であって、わが国における通名使用の、いわゆる「在日特権」の問題とは全く関係ない。
何の「背景」も「掘り下げ」ていないし、何の「参考に」もならない。
「在日コリアンに対する「明らかに事実に反し、偏見を助長する」発言は厳につつしむべき」と言うなら、木走氏は、まず竹田氏の発言がそれに値するのかどうかを語るべきではないのか。通名の使用や通名の変更により犯罪歴や金融関係の経歴を全部消すことができるのかどうかを。
それには何の論評も加えず、無関係な韓国での改名による「身分ロンダリング」の話を持ち出すようでは、在日韓国人もまた改名による「身分ロンダリング」を行っているのではないかと疑わせる(そしてその根拠は全く示されていない)という点で、木走氏もまた「偏見を助長する」発言を行っているように思われる。
そして、在特会や竹田氏に対して、木走氏自身が「腫れ物に触るような」対応をしているように見受けられた。