トラッシュボックス

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シュミット元西独首相のインタビューを読んで

2006-12-05 23:16:17 | その他の本・雑誌の感想
 ヘルムート・シュミット元西独首相のインタビューが今日の『朝日新聞』の朝刊に載っている。この秋、「隣人の中国」と題した討論集を出版するなど、「アジア各国の事情に通じたヨーロッパ人の視点から発言を続」けているという。87歳。
 興味深い発言もあるのだが、疑問に思う点も多い。特に最近の日本についての認識。

《-歴史認識をめぐって「後世の歴史家に評価はゆだねるべきだ」と考える政治家が少なくありません。》

とするインタビュアー(木村伊重・ヨーロッパ総局長)に対し、

《「政治家は自国の歴史を語らなければならない。同時に安倍首相は日本の国民に対しても、自国や他国の歴史についてもっとよく知ってほしい、と言うべきだろう。」
「例えば、漢字や儒教、禅宗といった精神文化が古代の中国から、あるいは朝鮮半島を通して日本に伝来したことさえよく知らない日本人が少なくない。中国や韓国の対日不信の根源が、19世紀後半から20世紀前半にかけての日本の行動にあったことを学んでいない人もいる」》

と述べているのだが、そんな日本人がどこにいるというのだろうか。中韓の反日的な動きに対する反発が昨今の日本でかまびすしいのは事実だが、そのように反発する人々でも、漢字や儒教が中国で発生したことや、19世紀後半から20世紀前半にかけての日本の行動が反日の論拠になっていることなど、知らぬはずもない。何やら、右傾化が進んでいると言われる昨今の日本の状況が、非常に歪んだ形で伝えられているように思える。
 もう一つ、中国の現状についての認識。今後、中国が東アジアの不安定要因になるという見解に対し、

《「それは米中央情報局(CIA)やペンタゴン(国防総省)がつくり上げた話だ。実にばかばかしい。確かに陸上兵力の規模は巨大だが(中略)海上、航空兵力はまだ取るに足りないし、国外に軍事力を展開する必要を彼らは感じていない。日米安保体制が中国を仮想敵国に考えるなら、愚かなことだ。中国から見れば、台湾や沖縄、日本本土、韓国といった空母にいつも囲まれているような気分に襲われている」》

と言うのだが、あまりにも楽観的すぎはしないか。確かに今現在の中国の海軍、空軍はさしたるものではないかもしれないが、中国は建国後着々と軍事力を増強してきた。核兵器も保有している。好調な経済を背景に、今後もますますその傾向が進むのではないかとの疑念を日本や周辺諸国が持つのは当然だと思うのだが。日中戦争での日本の敗戦からも明らかなように、中国の周辺諸国が中国を征服するのは至難の業だ。しかし、中国(支那)が周辺諸国を征服した例はいくらでもある。結局、ドイツにとっては差し迫った問題ではないから、あまり危機感を覚えないのだろうか。