昔の記事にponさんという方からこんなコメントを頂いた。
初めまして。ブログ拝見させて頂きました。
私は京都の加茂川上流に住んでいて、近所の川でオオサンショウウオをよく見かけます。
交雑種は本来日本に「いるはずがない」ものです。中国と日本のオオサンショウウオは、気性や文化も全く違います。食べ物にどん欲な交雑種がいることによって、現に加茂川の鮎は急激に減っています。これは悪い影響ではないのでしょうか?
レスを書こうとして少し調べていると、いろいろ思うことところがあったので新記事にする。
ponさん、はじめまして。
鮎が交雑種の食害にあっているとは初めて聞きました。
交雑種についてのこれまでの新聞報道には、そんな話はなかったように思います。
この問題の専門家であるらしい松井正文・京大教授の『外来生物クライシス』(小学館新書、2009)にもそんな話は出ていません。
しかし、コメントいただいた記事に「現実論」さんもコメントで紹介しておられましたが、少し前にNHKで放送された「
ちょっと変だぞ日本の自然 新型生物誕生SP」という番組では、この問題が取り上げられ、松井教授も出演されていたそうですね。
「
老兵は黙って去りゆくのみ」というブログで、詳しい内容が紹介されていました。
この方によると、こんなシーンがあったそうですね。
交雑種オオサンショウウオには日本のオオサンショウウオに見られない特徴がある。それはエサを与えたときの反応です。
交雑種オオサンショウウオの池に切り身のエサを放りこむ映像が出てきた。
ぞくぞくとエサに集まってきます。1分足らずで大混乱。エサに群がり、さらに噛みつき合いも始まりました。エサに興奮しているのです。
日本固有のオオサンショウウオの池に切り身のエサを放りこむ映像が出てきた。
何と、15分待ってもエサに変化はありません。それもそのはず日本のオオサンショウウオは獲物を待ち伏せして捕まえます。獲物を追いかけて捕まえることはほとんどありません。
人が外来種を持ち込んだゆえに生まれた新型オオサンショウウオ。日本固有のオオサンショウウオを始め、鴨川上流の生き物たちに大きな影響を与えているのです。
なるほど確かに交雑種と日本固有種とでは餌のとり方や気性が違うようですね。
ただ、これまでの新聞報道にはそんな話もなかったように思いますし、上記の松井教授の『外来生物クライシス』にもやはりありません。オオサンショウウオについて解説しているホームページをいくつか確認しましたが、見当たりません。
本当に、そこまであからさまな差があるのでしょうか。
例えば、交雑種にはしばらく餌をやらないで空腹にさせておき、固有種には餌をやったばかりの満腹の状態で、餌をやったとすれば、上記のような映像を撮ることは可能でしょう。
また、交雑種は切り身の餌に慣らしておいて、固有種には生き餌ばかり与えていても、同様のことが可能です。
あるいは、餌である魚の種類を、オオサンショウウオが好むものとそうでないものを使い分けることによっても。
映像を全く見ないで言うのも何ですが、私はテレビというのはそういう仕掛け(彼らは「演出」と言う)を平気でやるメディアだと見ています。あるいはテレビは関知せずとも、撮影に協力した研究施設の方でそのような作為を加えることは可能でしょう。
本当にそのような歴然とした差異があるのか、私はやや疑っています。
「
大山椒魚ウオッチング」というサイトによると、待ち伏せだけでなく餌を求めて歩き回ることもあるそうです。
羽束川での調査では、仕掛けておいたカニ籠に入っていました。このときの餌は、アジやイワシでしたから目の前に来たものだけでなく、餌を求めて歩き回っていることが分かります。ウナギの流し針仕掛けに食いついて発見されることも多いです。
さて、交雑種により鮎が急速に減っているとのことですが、鮎が減少して餌を得ることができなくなれば、オオサンショウウオもまた減るのではないでしょうか。
そのようにして様々な生物が増えたり減ったりして、生態系のバランスが保たれるのではないでしょうか。
また、上記の「老兵は……」さんの記事によると、NHKの番組では、京都府賀茂川漁業協同組合が毎年鮎の放流を行なっているが、最近鮎を放流しても上流ではいつのまにかほとんどが消えてしまうと紹介されていたようです。
わざわざ餌となる鮎を放流すれば、それを捕食する動物が増加するのは当然のことでしょう。
それでは生業が成り立たない、放流はしたいが捕食されるのは困るというのであれば、交雑種のオオサンショウウオに限っては保護動物ではなく害獣であると公的に指定してもらって、駆除するしかないでしょう。
しかし、チュウゴクオオサンショウウオもまた国際的な保護動物ですから、それと固有種との交雑種を害獣指定するのは容易なことではないでしょう。
仮に指定し得たとしても、固有種は保護動物のままなら、一体一体DNA鑑定する必要があるということになり、たいへんなコストがかかります。
そんな作業に予算を付けることに、国民は納得するでしょうか。
おまけに、この放流されている鮎は、賀茂川産ではないようです。
ウィキペディアの「鴨川(淀川水系)」の項目には、現在次のような記述があります。
天然アユは戦前まで遡上していたが、1935年に発生した2度の水害対策で川底の掘り下げと多数の堰の設置で、鮎の遡上が妨げられた。そのため現在は賀茂川漁協が琵琶湖産の鮎を放流している。
つまり、あなたの言う交雑種同様、放流されている鮎も本来賀茂川に「いるはずがない」ものなのです。
もちろん、鮎で生計を立てている人がいる以上、その食害は問題です。
しかし、鮎は水産資源であるから他の地域産のものであっても放流してもかまわないが、オオサンショウウオは外来種も交雑種もその存在を許さないというのは、何だかおかしな話だと思います。
それに、この交雑種による食害は、それほど重大な問題なのでしょうか。
もしそうなら、交雑問題自体よりももっと伝えられていてもいいはずですが、私は聞いたことがありません。
地元紙である京都新聞のサイトで検索しましたが、見当たりません。
賀茂川漁協のサイトも見てみましたが、やはり見当たりません。
「漁協の取り組み」という項目で、
川鵜対策は挙げられています。
賀茂川には色々な鳥が行き来しています。中でも川鵜という鳥から鮎の稚魚を守るために4月頃から鮎の稚魚を放流しますが、成長するまでは川鵜に食べられないように川にロープを張り、対策しています。
トップページの「川日記」で、NHKの番組については触れられていますが、
11/8/12(金) 先日TVで賀茂川出てましたね!日本の生態系が変?みたいな番組でした(^_^;)熊田曜子が出てたやつです。
賀茂川のオオサンショウウオのほとんどが中国産と混ざっていると言う話でした!!
純国産と違って獰猛で、放流した鮎や他の魚を食べ尽くす(-.-;)その上人まで噛まれる事もあります!!
川遊び中にオオサンショウウオを発見しても絶対に顔付近には手を近づけ無い様に気をつけてください(^_^;)
番組の内容をなぞっただけで、どうも深刻さに欠けるような。
交雑種を問題視したい研究者とセンセーショナルな番組を作りたいNHKがタッグを組んで、問題を大げさに吹聴しているのではないかという気が私にはします。