「頂いた数々の不思議」
(S・T女史。日本巡礼記集成より)
「・・昭和7年、岸和田に天然痘が流行しまして、毎日のように病人が隔離されていきました。巡査も毎日回ってきて『誰も悪い人はいませんか』と尋ねてきます。
その最中に運悪く主人も天然痘に罹ってしましました。
はじめは風邪と思っていたのですが次第に熱が上がってきます。医者に診てもらって天然痘と診断されたら、当該家と向こう三軒両隣は井戸までカルキで消毒されも皆さん水も飲めなくなります。
思い余って病院でなく近くにいたお爺さんでむかし自分が天然痘に罹った経験のある人に診てもらいました。お爺さんは矢張り「天然痘やな。気を付けて診てあげなさい。」といいます。
それからは必至です。私は近くの石切様とお大師様にあたらしい器にお酒を供えて「どうか助けてください」と必死にお願いしました。そして寸暇を惜しんで般若心経を唱えて主人の体を撫でました。
こうして病床の主人を拝んで撫でているうちに何日か経って主人の熱は下がり腫物も萎んでいます。病人も楽になった、と喜んでいます。それから数日後、お礼参りに行きました。お供えしていたお神酒の蓋を取るとお酒の色が変色して真っ青になっていました。見て仏さまが主人の天然痘の膿をここに取って下さったものと分かりました。ありがたい不思議なことはある、と以来、事あるごとにお大師様を拝まさせていただいています。」
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