福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

今日天長四年七月二十四日は大師が、藤原冬嗣三回忌の願文を書かれた日です。

2024-07-24 | お大師様のお言葉
今日天長四年七月二十四日は大師が、藤原冬嗣三回忌の願文を書かれた日です。
 
「右将軍良納言(良岑安世)開府儀同三司左僕射(藤原冬嗣)のために大祥(三回忌)の斎を設くる願文
奇きかな、逸婀の徳(奇特にすぐれた徳を有せるのは一つの阿すなわち胎蔵界大日の梵字阿である)。皇いまるかな五転の鑁(広大な徳を持つものは金剛界大日の梵字鑁である,これは発心・修行・菩提・涅槃・方便の五転の徳を有する)。千門を津梁に開き(この金胎両部の法門を利他門に開けば無数の人々を救う)、万戸を抜済に廓(ほがらか)にす。その派を挹む者は各源を得るに奢り(枝葉を得てよろんでいる)、その枝を攀じるものは悉く柢(ね)を極むるに驕る。赫㬢(日光)頓に照し、白瞿(はっく、白牛)風の如く疾く、八遮(八不中道)穢を蕩かし、一真浄(一真法界)を簡ぶ。非を防いで作すことなき(諸悪莫作)は唯蘊湛然(唯蘊無我を主張する声聞と湛然常寂を説く縁覚)、声と非声と(声門外道とそれに反対する者)建と不建と(一切を建立して浄となす建立外道とそれに反対する者)、二辺の名雙んで玄を存するに逮んでは(二の対立軸を出し究極とする)、その祖は唯一にして子孫百計なり。譬えば一天の衆星と、隻竜の雨滴と、色味異なりといえども終に一途に帰するがごとし。一途の詣極(至極の一道)それ唯、金剛に在り。金剛の普門は人法俱に妙なるかな。
伏して惟んみれば、故左僕射贈開府儀同三司藤原朝臣は累代の台鼎(大臣)にして、文武時を佐く。謙恭にして雌(卑)を守る。晏平何ぞ侈れる(倹約家であることは史記の晏平が「以節倹力行重於斉。 既相斉、食不重肉」といわれたのにも勝る)。生徒に温良にして、肩天子に随う。一心に命を授けられて両帝それ僕射(大臣)に簡ぶ。柔和にして物に接して(人材登用)緇素毎にその風に慕う。位、君眄(くんべん、天皇の恩寵)を極め寵、王恩を結べり(天皇の恩をうけて栄達した)。謂うべし、有虞の益・稷(舜帝に仕えた伯益と后稷)、姫年の奭望(せきぼう)(周の太公望)なりと。豈に謂ひきや、星精知名に辺りて(50歳そこそこで)、白城(はくせい、冬嗣の自宅)鄭産(鄭の名宰相の子産)を喪はんとは。嗚呼、哀れなるかな哀れなるかな。舂者相せず(しょうしゃきねうたせず、臼を搗く人は杵唄をうたわないで哀悼した)耕人来(すき)を輟やむ。一人廃朝し、万民訴慕す。蒼々として何か忍ばん。我が阿衡を奪えることを。哀れなるかな、苦しきかな。弟子同衾感じやすく(良岑安世は冬嗣と友愛が深かったので)在原抑えがたし(鶺鴒が居場所を失って飛び泣くようだ)。我を提携すること天に比し(懇切におしえること父のように)我を割亭すること地に同じ(よくそだてること母のよう)。言その徳を思うて答するに帰佛を以てす。
謹んで天長四年孟秋季旬(陰暦七月下旬)をもって、先の左僕射の大祥の奉恩に、金字般若経一十二紙を写し奉る。これを延くに龍象をもってし、これを衍ぶるに涌泉(経典)をもてす。方丈の草堂は法果(法界)を呑んで蟇芥(たいかい)たり。花山の松林は宝樹に変じて刹説す(良岑の花山の別荘の松林は珍宝の樹となり説法する)。梵曲は魚山の如く、錦花は竜淵(仏のいます竜淵)の如し。金剛の句句に結(煩悩)を断じ、解を証す。玉振の字字に障を除き、滅を得ん。
伏して願わくはその恵日を掲げて頓に昏夜を朗かにせん。心を飛閣い遊ばしめて神を翔桜に賞せん。当に法界を有って覚尊王と称せん(宇宙の覚王となることを)。寰中(かんちゅう畿内国内)の一分は必ず貫三(王)に帰す。仰ぎ願わくは、皇帝陛下、金輪、四天に転じ、智剣三障を斫らん。魔軍、面縛して海内波なからん。人は知足に等しく、寿は有頂に同じからん。太上天皇(嵯峨天皇)、藐山の逸楽(仙洞御所の楽しみ)契り桃椿よりも久しく、汾河の盤興の期(仙洞御所の楽しみの期間)芥石よりも永からん。関鳩甡甡として(かんきょうしんしん、皇后が多く)鳳閣瓞瓞(ぼうかくてつてつ、子孫が多く内裏が栄える)たらん。瓊夏玉葉(皇族)文傑武雄、労を日月の明に尽くし、誉を山河の盟に流さん。十一の生類(金剛般若経、卵生・胎生・湿生・化生・有色・無色・有想・無想・非有想・非無想・それら全部)無余に入って度せず(無余涅槃に入ってそれ以上度する者はいない)。九種の譬剣有為を破して住するところなからん(能断金剛般若経に、一切有為法は、星・翳・灯・幻・露・泡・夢・電・雲のごとし、と)。愛溺をこの涯に忘れて、恵撥(智慧の筏)を彼岸に捨てん。
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