今日は大師が勅により「急就章」等十巻を献上された日

弘仁三年812、七月二十九日は大師が勅により「急就章」等十巻を献上された日です。高野大師御廣傳に「弘仁三年七月二十九日、勅により雑文を献ず。其の状に云

[ 雑文を献ずる表
急就章一巻、王昌齢が集一巻、雑詩集四巻、朱畫（唐の詩人）の詩一巻、朱千乗（唐の詩人）の詩一巻、雑文一枚一巻、王智章の詩一巻、讃一巻、詔勅一巻、訳経圖記一巻、
右伏して昨日の進止を承って探り得るに随ってかつ奉進す。遺るところの表啓等は零ちて他処にあり、今見に人をして覓めしむ。取り来たらばすなわち馳せ奉ぜん。
それ尺水に本万里の鯤なし。培塿（ほうろう・蟻塚）にはなんぞ千丈の幹あらんや。空海瓦礫の人なり。謬って燕石を縅つつめり。謂はざりき聖聡金声を芻蕘（すうじょう・きこり）に索め、華藤を朽しに訪わんとは（麗しい文章を朽ち果てた枝にお尋ねになるとは）。聖綸の下り徹るを喜ぶといえども還って亭箒の愆過を慙ず（古びた箒を誤って貴重なものと思い込んでいるのではないかと恥じる）。謹んで状に随って奉進す、軽しく聖覧を黷す。伏して深く戦越す。謹んで進つる。
弘仁三年七月二十九日　沙門空海進つる。]