20代、結婚してからも酔っぱらうと、「30までに何もできなかったら死んだ方がましだ」なんてことを口走っていました。自分の高校生、大学生のころ多くの友人先輩が、自死あるいは事故死しました。友人二人の追悼文集を編みました。次は自分の番か、という漠然とした思いを同世代の仲間は、しばし共有していました。大学生になる時は70年安保に遅れて参加した者たちでした。何か若者の間に寂寥感とでもいうものが、漂っていました。そうだ、『20歳の原点』が刊行されたのは、自分が在学していた時だったか前年か。
そして、何ら成果も挙げ得ぬまま30歳は過ぎ去り、今やその倍の歳を越してしまいました。若くして逝ってしまった彼らは、時が止まったままですのでいつまでも青春時代の顔をしています。ここまで長らえてしまった自分は、老いた姿をさらしています。とはいえ、と思います。20代のころより今の方が経験知は多いし、たくさんの本も読んでいる。あのころでは対応できない突発的な事態にも、今なら対応できます。40代のころも、わが子を前にしても酔っぱらうと、「こんなんじゃ、死んだほうがましだ」などとつぶやいていました。ところが今になると、当時よりずっと平均余命からも現実味があるのに、「死んだほうがましだ」とは口走らなくなりました。己の能力を自得したのか、本当に死ぬのが怖くなったのか、吾ながらよくわかりません。ともかくも、まだこれからだという思いがあります。「見るべきものはみつ」といえるようになるためには、まだまだ時間が必要です。
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