自分は戦の経験がなく、にもかかわらず戦死者をやたらと悼みたがる人が、圧倒的多数で首相に再選されたとき、自ら戦争に従事し、首相の靖国参拝を諌め、自衛隊の海外派遣に反対し続けた後藤田正晴がなくなってしまった。この国の政治状況を象徴的にあらわしているように思われる。今では、首相を諌める政治家など一人もいまい。それどころか、政治学者として軍縮を訴えた者が、世界でも数少ないイラク派兵を喜んで行った政党に請われて国会議員となり、初登庁の日に夫婦で政治学をやってきて、今実際の国政に関われるまでなったと、目を潤ませる。あなた、党の方針に反したらすぐにも首をすげかえられる、その代替としての自分がわかっているのですか。党が、海外派兵を決めたら唯々諾々と従うのですか、と問うてみたい。上から下まで、この国は節操がなくなってしまった。そうした政治屋を選択する国民が愚かだということか。後藤田という一人の政治家を失ったことは、一人の死にとどまらずこの国の節度も同時に葬ってしまったように思われる。
とはいえ、ではお前は何ができるかと問われれば、せいぜいこんな場所に泣き言を並べるくらいしか、何もできないのだ。情けない限り。
とはいえ、ではお前は何ができるかと問われれば、せいぜいこんな場所に泣き言を並べるくらいしか、何もできないのだ。情けない限り。