民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

南極に立った樺太アイヌ

2020-05-24 11:19:12 | 読書

図書館にリクエストして、『熱源』を読んでいましたが、スケールの大きな話です。樺太アイヌとポーランド独立革命の過程でロシアにつかまり樺太に流された人物を軸に、自然と歴史とのかかわりで物語は展開します。私のくせで、数冊の本を同時進行で読むうえに、考えながらそしてロシア人の長く覚えられない名前を反芻しながらですから、読み進めるのに時間がかかります。そうこうしているうちに、図書館から督促状が届きました。貸出期限を過ぎたので早く返しなさい、ということです。あわてて読了し、図書館に返しに行きました。ようやく図書館も再開して、通常に開館しているのです。返却したのち、カウンターの前にある、新しく図書館に入った本の展示コーナーを見ました。すると、なにこれでした。

あわてて読んだ『熱源』の終わりの方に、樺太アイヌの主人公の一人が、志願して南極探検隊に犬係として行ったことが書かれていました。新刊コーナーで見たその本の表紙に、屈強な犬を連れた男たちの写真がありました。

そして中を見ると、小説で読んでいた人物たちの名前がそのまま出てくるではありませんか。『熱源』はほとんど実話だったことがわかりました。それで少し疑問が解けました。アイヌ、ロシア人、日本人には相当な差別があったと思います。小説でも差別には触れていますが、物語で活動する人物たちは、いい人なのです。特に、日本人がアイヌの人々の事を思って活動しているように描かれています。取材した人物を物語に実名で登場させるのですから、悪くは書けなかったのでしょう。それにしても、2冊の本がぴったりと重なったことに驚きました。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿