民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

真藤順丈著『宝島』読了

2020-03-13 16:50:12 | 読書

妹の力、ウタキ、ユタ、グスク、祖霊、ニライカナイ、沖縄戦、占領政策、基地問題、沖縄返還、コザ暴動等、これらの沖縄の問題を混ぜ合わせて沖縄方言をふりかけたら、こうなるというすごい小説でした。随分前に買っておきながら、自分の文章を書くのにかまけてほって置いた小説を、ようやくにして読了しました。期待にたがわない面白さでした。こんなにも沖縄の人々の思いに沿いながら、エンタメに仕上げた作者が、本土の人間だということが、また驚きです。本土復帰への熱い願望と、本土に復帰したところで何が変わるのかというシニカルな思い。そんな複雑な沖縄の心を、本当によくわかっています。今年の直木賞の『熱源』-まだ読んでないのですがーも多分そうだと思うのですが、境界領域には人の想像力を刺激する何物かがあるんですね。支配がゆるやか、価値が多元的、混沌とした人の動きがある、それだけにむき出しの欲望がぶつかり合う、てなことで。

普天間基地の移転は辺野古埋め立て以外にないとの方針で、硬直したままです。コロナウィルスに注目が集まり、最近は全く報道されませんが、どうなっているんでしょう。軟弱地盤で相当に時間がかかるとわかっても、政府はそれをごり押しするのでしょうか。もし、韓国から米軍が撤退するとしたら、軍事力のバランスはどうなるのでしょうか。本土の自衛隊基地を含めて、沖縄の基地問題を国民が考えなければいけない時期が、すぐそこにあるような気がします。