民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

村井康彦『出雲と大和』を読む

2020-02-24 14:08:48 | 読書

国立博物館の展示見学以来気になっている、「出雲と大和」ですが、この二つを関連付ける書物を見つけて読みました。村井康彦著『出雲と大和―古代国家の原像をたずねて』(岩波新書)です。歴史家が書いたとは思われないような、文献にとらわれずに想像力を刺激する内容でした。一言でいうならば、出雲の復権を訴えた本です。ざっとあらすじを述べますと、紀元前後あたりでしょうか、朝鮮半島からの金属器と金属技術者の流入により出雲のあたりに強力な勢力が生まれます。それは、未だ国家といえるような形態をとらず諸豪族の連合勢力でした。この勢力は日本海沿いに東に力を拡大し、丹後のあたりから内陸に進んで、奈良盆地に達します。出雲からきた幾つかの氏族は奈良盆地を開発し、ここに氏族連合の王権がうまれました。それが邪馬台国です。4世紀になると、九州から新しい勢力が瀬戸内海ぞいに東に制服を進め(神武東征神話はこの戦いを反映している)、邪馬台国はこの勢力に屈服します。そして成立したのが大和王権です。邪馬台国と大和王権は非連続なのです。だから記紀神話には邪馬台国は登場しないというのです。

なかなか壮大な国家の誕生についての仮説です。大国主の国譲りとは何か、邪馬台国が記紀神話に登場しないのはなぜか、といった疑問に総合的に答えを出そうとしています。それにしても、出雲で出土したたくさんの青銅器はどういう劇的な社会の変化を表しているのか。出雲大社は古代から地上50メートルもの場所にあったのかなど、出雲には深く深く心ひかれる物があります。