今年も恒例、2017年のベスト10冊を選びました。
経済・社会に関する新刊の中で価値の高いものです。
研究者と違い、新味ではなく政策における有用性を重視しています。
猶、タイトルでは文字数制限のため正式なタイトルではありません。
「デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか」と
「子育て支援と経済成長」が正式の名称です。
今年のダイヤモンド合併号の「ベスト経済書」とは内容が全く違います。
中室女史の新刊は大学のゼミ程度の内容と判断したのでリストに入っておりません。
(自著を売るマーケティングの上手さは感心するのですが、政策提言として判断しました)
…当ウェブログのリストは純粋に、
日本経済や日本社会にとって重要な本だけを選び抜いております。
今年は高等教育と技術革新についての優れた新刊が目立ちました。
予想できることながら、安倍政権の政策のあれこれが根本的に間違っていることも
これらの優れた新刊によって証明されたも同然と言えるでしょう。
↓ これまでのベスト10
2016年/社会・経済書ベスト10 -『グローバリズム以後』『子育て支援が日本を救う』『教育超格差大国』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/0a2d0b434eed9677d1697b4a732267d8
2015年/社会・経済書ベスト10 -『奇跡の村』『日本国債暴落』『新・観光立国論』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/60231fb53c5f0c34481596636d9b8f89
2014年/社会・経済書ベスト10 -『日銀、「出口」なし!』『米軍と人民解放軍』『社会保障亡国論』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/15fdce254ff70decccdc1cae539cd752
さて、それでは今年のトップ10です。
第1位 『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか』
→ この本に注目しないエコノミストや評論家は節穴だと断言しても良い。
技術革新やイノベーションによっても先進国では所得が上昇しないこと、
先進国で大学への進学率を上げると「大卒プレミアム」が低下すること、
労働者の賃金が下がって「教育では格差問題は解決しない」こと。
愚劣な安倍政権の大学教育政策が失敗することは
この著者が予言(或いは警告)していると言っても良い。
第2位 『子育て支援が日本を救う』
→ こちらは真の意味で日本経済を救う決定的な一冊。
日本のエコノミストや経済評論家でこの著書の価値を理解できない者は
偽者か三流以下と言っても過言ではない。
経済政策で最も予算対効果に優れているのは育児支援であること、
現金給付より現物給付の方が経済効果・出生率向上・貧困率低下等において優れていること、
フランスの出生率急回復の原因は「認定保育ママ」制度であったこと。
(矢張り安倍政権の待機児童対策は根本的に間違っているのだ)
昨年は以下の本がかなり売れたらしいが、その内容は極めて凡庸である。
柴田悠氏の研究に比べると、稚拙な水準でしかない。
▽ 対策が「第3子への現金1000万円給付」だそうだ、研究不足にも程がある
第3位 『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』
→ 当ウェブログはこの本について以下のように書いた。
「間違いなくトランプ政権は早期に崩壊すると確信した一冊」、
「トランプが僅差で大統領になれたこと自体がアメリカ経済が斜陽になった証拠」、
「反グローバリズムやナショナリズムを支える貧困と憎悪のどす黒いエネルギーが米国で高まっている」
その所感は現在もいささかも変わっていない。
しかも、この本の価値を高めているのは末尾にミラノビッチの「象の鼻」論を取り上げた点だ。
また、先進国の教育年限は限界に達しつつあり、高等教育で経済や格差を改善することも難しい
という極めて重要で決定的な指摘を行っている点も絶対に見逃せないところだ。
第4位 『オックスフォードからの警鐘 - グローバル化時代の大学論』
→ グローバルな大学ランキングがイギリスの留学生集めに多大な貢献、
つまり「産業」になっていると慧眼な著者は見抜いた。
また、日本の高等教育が経済効果に繋がらない理由として
「生産性の低いサービス業での大卒労働者の増加」を挙げている。
だから人的資本が所得上昇ではなく過剰サービスに「浪費」されているのでとの仮説を提起、
あらゆるエコノミストや経済学研究者を超えるような鋭さを示している。
第5位 『アメリカの大学の裏側 「世界最高水準」は危機にあるのか?』
→ アメリカの大学の実情を記した、研究者親子の共著。
日米ともに長所も短所もあることを冷静に分析しており素晴らしい。
日本で言われるアメリカ型の大学改革の内実が、空虚で嘘ばかりであることも分かる。
米では「軍拡競争」とも称される大学の設備投資のチキンレースが学費を高騰させている。。
第6位 『大学大倒産時代 都会で消える大学、地方で伸びる大学』
→ 日本の大学が抱える最大の問題は、自民党政権と文科省による高等教育の量的拡大にあり、
少子高齢化が分かっていたのに無駄に大学を増やした「政府の中長期的視野の欠如」こそが元凶なのだ。
(だから加計問題が胡散臭く、失敗の予兆に満ちているのは当たり前だったのである)
第7位 『デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論』
→ 日本の生産性が低い原因は経営者の競争不足と女性就業にあると本質を衝いた一冊。
安倍政権の「働き方改革」がいかに低次元であるか一目瞭然である。
ただ惜しむべきことに著者は北欧の政策について充分に研究していないようだ。
第8位 『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』
→ ポチ右翼と反米右翼は安倍政権と同様、安全保障の現実を理解していない。
日本は独立国ですらなく、改憲論者が現実を直視しない幻想に囚われていることが分かる。
事実に照らせば、安倍政権が完全に米軍に支配されているのは明白だ。
▽ 対米従属構造に無知な原理主義者が、今まさに日本の政治を歪めようとしている
第9位 『スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家』
→ 非常に面白いドキュメンタリーで、IPOによってボロ儲けするのは一部の大株主だけで、
夢を見る大勢の若者を使い捨てにしているという苦い現実を書いている。
起業に幻想を見ている多くの若者に推薦したい。狡猾な連中に騙されないように。
第10位 『知立国家 イスラエル』
→ 年末に出た本だが非常に重要性が高い。
イスラエルは驚くべき経済成長率とイノベーションの国だが、
1人当たりGDPは日本と同程度でしかない。
格差も大きく、大勢の移民を受け入れてもこのざまなのだ。
日本は人口減少・少子高齢化でもイノベーションで成長できると
日本国内の無責任な連中が喧伝しているが、間違いなく嘘だ。
日本よりイノベーションにおいて勝るイスラエルの現状が証左である。
イノベーションを騙って一部の連中だけが儲かるだけで、
日本全体が豊かになる訳ではない、それをイスラエルの現状が示している。
次点 『AIが人間を殺す日 車、医療、兵器に組み込まれる人工知能』
→ 所謂シンギュラリティがすぐにでも来るように論じている者は根本的に間違っている。
AIの現状を知るには現時点でこれ以上の本はない。
次点 『錬金術の終わり 貨幣、銀行、世界経済の未来』
→ 御存知、元BOEトップの著書である。難解な内容でよく読み込む必要があるが、
「日本は本格的な構造改革を何も行っておらず、インフレで公的債務を帳消しにするしかない」
とアベノミクスとその愚かな金融政策を断罪しているのは流石である。
経済・社会に関する新刊の中で価値の高いものです。
研究者と違い、新味ではなく政策における有用性を重視しています。
猶、タイトルでは文字数制限のため正式なタイトルではありません。
「デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか」と
「子育て支援と経済成長」が正式の名称です。
今年のダイヤモンド合併号の「ベスト経済書」とは内容が全く違います。
中室女史の新刊は大学のゼミ程度の内容と判断したのでリストに入っておりません。
(自著を売るマーケティングの上手さは感心するのですが、政策提言として判断しました)
…当ウェブログのリストは純粋に、
日本経済や日本社会にとって重要な本だけを選び抜いております。
今年は高等教育と技術革新についての優れた新刊が目立ちました。
予想できることながら、安倍政権の政策のあれこれが根本的に間違っていることも
これらの優れた新刊によって証明されたも同然と言えるでしょう。
↓ これまでのベスト10
2016年/社会・経済書ベスト10 -『グローバリズム以後』『子育て支援が日本を救う』『教育超格差大国』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/0a2d0b434eed9677d1697b4a732267d8
2015年/社会・経済書ベスト10 -『奇跡の村』『日本国債暴落』『新・観光立国論』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/60231fb53c5f0c34481596636d9b8f89
2014年/社会・経済書ベスト10 -『日銀、「出口」なし!』『米軍と人民解放軍』『社会保障亡国論』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/15fdce254ff70decccdc1cae539cd752
さて、それでは今年のトップ10です。
第1位 『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか』
『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか』(ライアン・エイヴェント/月谷真紀 訳,東洋経済新報社) | |
→ この本に注目しないエコノミストや評論家は節穴だと断言しても良い。
技術革新やイノベーションによっても先進国では所得が上昇しないこと、
先進国で大学への進学率を上げると「大卒プレミアム」が低下すること、
労働者の賃金が下がって「教育では格差問題は解決しない」こと。
愚劣な安倍政権の大学教育政策が失敗することは
この著者が予言(或いは警告)していると言っても良い。
第2位 『子育て支援が日本を救う』
『子育て支援と経済成長』(柴田悠,朝日新聞出版,2017) | |
→ こちらは真の意味で日本経済を救う決定的な一冊。
日本のエコノミストや経済評論家でこの著書の価値を理解できない者は
偽者か三流以下と言っても過言ではない。
経済政策で最も予算対効果に優れているのは育児支援であること、
現金給付より現物給付の方が経済効果・出生率向上・貧困率低下等において優れていること、
フランスの出生率急回復の原因は「認定保育ママ」制度であったこと。
(矢張り安倍政権の待機児童対策は根本的に間違っているのだ)
昨年は以下の本がかなり売れたらしいが、その内容は極めて凡庸である。
柴田悠氏の研究に比べると、稚拙な水準でしかない。
▽ 対策が「第3子への現金1000万円給付」だそうだ、研究不足にも程がある
『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること 』(河合雅司,講談社) | |
第3位 『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』
『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』(金成隆一,岩波書店) | |
→ 当ウェブログはこの本について以下のように書いた。
「間違いなくトランプ政権は早期に崩壊すると確信した一冊」、
「トランプが僅差で大統領になれたこと自体がアメリカ経済が斜陽になった証拠」、
「反グローバリズムやナショナリズムを支える貧困と憎悪のどす黒いエネルギーが米国で高まっている」
その所感は現在もいささかも変わっていない。
しかも、この本の価値を高めているのは末尾にミラノビッチの「象の鼻」論を取り上げた点だ。
また、先進国の教育年限は限界に達しつつあり、高等教育で経済や格差を改善することも難しい
という極めて重要で決定的な指摘を行っている点も絶対に見逃せないところだ。
第4位 『オックスフォードからの警鐘 - グローバル化時代の大学論』
『オックスフォードからの警鐘 - グローバル化時代の大学論』(苅谷剛彦,中央公論新社) | |
→ グローバルな大学ランキングがイギリスの留学生集めに多大な貢献、
つまり「産業」になっていると慧眼な著者は見抜いた。
また、日本の高等教育が経済効果に繋がらない理由として
「生産性の低いサービス業での大卒労働者の増加」を挙げている。
だから人的資本が所得上昇ではなく過剰サービスに「浪費」されているのでとの仮説を提起、
あらゆるエコノミストや経済学研究者を超えるような鋭さを示している。
第5位 『アメリカの大学の裏側 「世界最高水準」は危機にあるのか?』
『アメリカの大学の裏側 「世界最高水準」は危機にあるのか?』(アキ・ロバーツ/竹内洋,朝日新聞出版) | |
→ アメリカの大学の実情を記した、研究者親子の共著。
日米ともに長所も短所もあることを冷静に分析しており素晴らしい。
日本で言われるアメリカ型の大学改革の内実が、空虚で嘘ばかりであることも分かる。
米では「軍拡競争」とも称される大学の設備投資のチキンレースが学費を高騰させている。。
第6位 『大学大倒産時代 都会で消える大学、地方で伸びる大学』
『大学大倒産時代 都会で消える大学、地方で伸びる大学』(木村誠,朝日新聞出版) | |
→ 日本の大学が抱える最大の問題は、自民党政権と文科省による高等教育の量的拡大にあり、
少子高齢化が分かっていたのに無駄に大学を増やした「政府の中長期的視野の欠如」こそが元凶なのだ。
(だから加計問題が胡散臭く、失敗の予兆に満ちているのは当たり前だったのである)
第7位 『デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論』
『デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論』(デービッド・アトキンソン,東洋経済新報社) | |
→ 日本の生産性が低い原因は経営者の競争不足と女性就業にあると本質を衝いた一冊。
安倍政権の「働き方改革」がいかに低次元であるか一目瞭然である。
ただ惜しむべきことに著者は北欧の政策について充分に研究していないようだ。
第8位 『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』
『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(矢部宏治,講談社) | |
→ ポチ右翼と反米右翼は安倍政権と同様、安全保障の現実を理解していない。
日本は独立国ですらなく、改憲論者が現実を直視しない幻想に囚われていることが分かる。
事実に照らせば、安倍政権が完全に米軍に支配されているのは明白だ。
▽ 対米従属構造に無知な原理主義者が、今まさに日本の政治を歪めようとしている
『「天皇機関説」事件』(集英社,山崎雅弘) | |
第9位 『スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家』
『スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家』(ダン・ライオンズ/長澤あかね,講談社) | |
→ 非常に面白いドキュメンタリーで、IPOによってボロ儲けするのは一部の大株主だけで、
夢を見る大勢の若者を使い捨てにしているという苦い現実を書いている。
起業に幻想を見ている多くの若者に推薦したい。狡猾な連中に騙されないように。
第10位 『知立国家 イスラエル』
『知立国家 イスラエル』(米山伸郎,文藝春秋,2017) | |
→ 年末に出た本だが非常に重要性が高い。
イスラエルは驚くべき経済成長率とイノベーションの国だが、
1人当たりGDPは日本と同程度でしかない。
格差も大きく、大勢の移民を受け入れてもこのざまなのだ。
日本は人口減少・少子高齢化でもイノベーションで成長できると
日本国内の無責任な連中が喧伝しているが、間違いなく嘘だ。
日本よりイノベーションにおいて勝るイスラエルの現状が証左である。
イノベーションを騙って一部の連中だけが儲かるだけで、
日本全体が豊かになる訳ではない、それをイスラエルの現状が示している。
次点 『AIが人間を殺す日 車、医療、兵器に組み込まれる人工知能』
『AIが人間を殺す日 車、医療、兵器に組み込まれる人工知能』(小林雅一,集英社) | |
→ 所謂シンギュラリティがすぐにでも来るように論じている者は根本的に間違っている。
AIの現状を知るには現時点でこれ以上の本はない。
次点 『錬金術の終わり 貨幣、銀行、世界経済の未来』
『錬金術の終わり 貨幣、銀行、世界経済の未来』(マーヴィン・キング/遠藤真美,日本経済新聞出版社) | |
→ 御存知、元BOEトップの著書である。難解な内容でよく読み込む必要があるが、
「日本は本格的な構造改革を何も行っておらず、インフレで公的債務を帳消しにするしかない」
とアベノミクスとその愚かな金融政策を断罪しているのは流石である。