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ロースクールを失敗させた文科省、専門職大学院もアクティブラーニングも同じ運命に - 反省皆無の惨状

2016-05-23 | いとすぎから見るこの社会-全般
日本の文教政策の最大の特徴は、農政以上の「猫の目」で
明らかに失敗した政策でも全く検証されず誰一人として責任を取らない点だ。

周知のようにロースクールが惨憺たる失敗になりつつあるのに、
中教審は「専門職業大学」を構想しているらしい。

理由としては「職業人に求められる能力も高度化・多様化している」とのことだが、
「実務経験のある教員の配置」やインターンシップのように陳腐なメニューばかりだ。
なぜ学部学科や課程の改変ではなく「大学」が必要なのか、まともな説明がない。
そもそも審議会メンバーの能力に疑問があると言わざるを得ない。

従来の文教政策も中教審の役割も厳しい検証が必要である。
今までの失敗を誤摩化すために、安倍内閣のように
新しい政策を打ち出して看板を代えるだけで終わっているなら税の無駄でしかない。

文科相の「脱ゆとり宣言」も同じような無責任体質の象徴だ。
「強靭化」というただの言葉遊びに過ぎず指標も数値目標も皆無、
予算対効果も成果検証の概念も全く理解していない始末だ。

おまけに流行のアクティブ・ラーニングまで持ち出して、
政策検証ばかりかアクティブ・ラーニングも欠落しているのが
中教審や官庁であることを自ら立証するものである。

アメリカの公教育の重大な欠陥の一つは、トップが代わると
すぐに制度も激変し、碌に検証もなされない点である。
日本の文教政策と全く同じである。

▽ こちら参照

『「教育超格差大国」アメリカ』(津山恵子,扶桑社)


アメリカでは既に、大卒者の48%が大卒資格が必要ない職に就いている。
文科省や中教審にそうした重大な警告が届いていないし、
理解する能力も欠けているのは言う迄もない。

「愚劣な責任転嫁を平然と行う中教審の議論の「猫の目ぶり」を見れば
 文教政策が頭の悪い「モグラ叩き」でしかないことは明白だ」

「大学乱立は自民党政権時の愚かな規制緩和の必然の結果である」

「日本では教育問題の議論が常に目先のことばかりで
 利害関係者の方では必死に姑息な情報操作を行い、
 しかもメディアや国民がそれを見抜けないという情けない状況にある」

「文科省の審議会や認可が大学の質向上において
 殆ど無意味に近いのは、議論の余地のない明白な事実である」

「だから文科省が認可した大学でも次々と定員割れと経営危機を起こしている。
 最近では法科大学院の惨状は100%間違いなく文科省の制度設計に原因がある」

「文科省はそもそも大学教育の質や大学運営の質を評価する指標を持たないし、
 指標に基づいて政策調整しなければならないとの意識が全くない」

「計量経済学や計量社会学の専門家を雇い、
 若年人口の変動が大学経営に与える影響を測定し、
 労働市場の変化と人材需要に基づいて政策決定をしなければ
 日本の大学は悲惨な状況に追い込まれてゆくだろう」

「自民党は今年春に「理数系教育の強化」を提唱していたが、
 図に乗ったそうした低次元の論をあざ笑うかのような報道があった」

「PIAAC(国際成人力調査)で日本が世界一となり、
 「数的思考力」もフィンランドを上回りトップだった」

「現代日本の停滞や閉塞の原因が教育にあるとする連中は
 基本的に大嘘つきであると立証されたと言って良かろう」

「そもそも日本の競争力ランキングを見ると教育水準や技術力は
 向上余地はあるものの常に高く評価されている。
 評価が低いのは公共部門(政府・自治体等)の非効率性と財政赤字である」

「PIAACの結果からは日本はブルーカラーや中卒者の高い能力を
 経済分野で活用できていないことが推測されるが、
 これも日本の政治と行政、つまり公共部門の抱える問題点と言える筈である」

「少なくとも「失われた20年」を招いた責任が教育にないことは明らかであり、
 教育を犯人扱いしてきた低能な論者を黙らせる効果はありそうだ」

「確かに日本の高等教育には多くの課題がある。
 しかし日本の病巣は教育ではなく寧ろ程度の低い教育論議と政策にあるのである」

と当ウェブログは指摘したが、文教政策そのものがその正しさを証明してしまった。

▽ 日本の教育改革論議は、基本的に場当たりで愚かな政治の横やりによって左右される

『格差社会と教育改革』(苅谷剛彦,岩波書店)


今回の「脱ゆとり」でも「専門職大学」でも
学習能力のない愚かな失敗を繰り返すしかない。

「日本では教育(特に初等)は質が高いのに、
 教育政策と教育論議の質は恥ずかしくなるほど低い」

「権力に弱い官僚は、傲慢不遜な自民の圧力に負けて
 人文系学部と大学院の規模を縮小するそうだ。
 己の失態の責任も取らず、よくも若者に責任転嫁できるものだ」

「大学の粗製濫造やロースクールの大失敗は自民党と文科省が「A級戦犯」であり、
 これから確実に問題になるであろうポスドク量産の元凶も自民党と文科省である。
 平然と歳費や給与を得ている厚顔無恥な態度と無神経はおぞましいとすら言える」

「責任を取って役立たずの与党議員の歳費大幅カット、
 キャリア官僚の給与・退職金の大幅カットは理の当然であろう。
 どうして成果も出さずに国民のカネを受け取っているのか」

「これから確実に労働者の需要が増えるのは介護士と保育士、そして観光関連人材だ。
 (全て労働集約型なので、確実に労働力を必要とする)
 基本的にはみな人文系であり、自民と文科省のスタンスは根本的に間違っているのである」

「危険なほど速い少子化を放置して大学の粗製濫造を続けてきた自民党と官僚が、
 己の大失敗を隠して国民に責任をなすりつけている」

「教育・保育分野において雇用を創出したスウェーデンの積極的労働市場政策と比較すると、
 我が国の保守退嬰・自己保身の「選良」達は恥ずかしくなるほど程度が低い」

「福祉関連学部の惨状を見よ。
 労働者を低賃金でこき使い、選挙のためカネを高齢者にバラ撒き、 
 福祉利権と癒着してきた自民党と官庁がこの大失態を招いた元凶である」

「「社会的要請の高い分野」であるにも関わらず学生が集まらないのは、
 明らかに政策の失敗であり、与党政治家と官僚の能力が低く制度設計を間違えたからだ」

とした当ウェブログの指摘通りの展開だ。

 ↓ 参考

人文系学部・大学院の規模縮小は、与党政治家と文科省の明白な失態 - 議員と官僚の給与カットが先だ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/5d58dfd0b31485c330f9e500b003241e

教育世界一でも日本経済停滞、教育改革論者は信用できない - 国際成人力調査PIAACの結果より
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/0f0655df5ffb8fbd6d173b2ec18ecaea

文科省が認可した大学でも、続々と定員割れになっている - 問題の本質は田中真紀子大臣の不認可ではない
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/6839b2d4f7aa07d1ad724d2146a3415e‎

大学生に責任転嫁する中央教育審議会、自らの分析不足を認識せず -「勉強時間」しか判断基準がない貧弱さ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/62943717b497b8613c43f5d980ed62b1

▽ 日本より遥かに賢明で合理的な北欧では、大学教育がキャリアアップに直結する

『スウェーデン・パラドックス』(日本経済新聞出版社)


文科相:「脱ゆとり」を宣言…探究学習、全面導入で(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20160510/k00/00e/040/185000c.html
”馳浩文部科学相は10日、今年度中に予定されている次期学習指導要領改定に向け、授業内容を減らしたかつての「ゆとり教育」には戻らないとする見解を公表した。次期指導要領では、児童・生徒が討論や体験などを通じて課題を探究する学習形態「アクティブ・ラーニング」の全面的な導入を目指しているが、教育関係者の一部から「ゆとり教育の理念を復活させる」と誤解されていることを受けた対応という。
 馳氏は10日の閣議後の記者会見で「『ゆとり教育』が『緩み教育』というふうに間違った解釈で現場に浸透してしまった。どこかで『ゆとり教育』との決別宣言を明確にしておきたいと思った」と話した。
 馳氏は「教育の強靱(きょうじん)化に向けて」と題する見解で「学習内容の削減を行うことはしない」と強調。「『ゆとり教育』か『詰め込み教育』かといった、二項対立的な議論には戻らない。知識と思考力の双方をバランスよく、確実に育む」とした。そのうえでアクティブ・ラーニングについて「知識が生きて働くものとして習得され、必要な力が身につくことを目指すもの。知識の量を削減せず、質の高い理解を図るための学習過程の質的改善を行う」と説明している。
 指導要領の改定はほぼ10年ごとに実施される。前回の2008年は、詰め込み教育の反省で1970年代から軽減されてきた授業内容を約40年ぶりに増やし、「脱ゆとり」と呼ばれた。〔中略〕【佐々木洋】”

これが典型的な言葉遊びの宣言。
あまたの前任者と同じく、パフォーマンスばかりで
業績を針小棒大に言い立てるお飾りで終わるのは必至だ。

アクティブラーニングは時間をかけてディテールを磨かないと質が向上しないし、
自民党や文科省自身がアクティブラーニングができていないのだから話にならない。


専門職業大学:実践重視、4年制は前・後期も 中教審素案(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20160213/k00/00m/040/131000c.html
”中央教育審議会(中教審)は12日、実践的な職業教育に特化した新たな高等教育機関「専門職業大学」(仮称)の中間まとめ素案を示した。企業と連携したカリキュラムや企業で実務経験がある教員の配置を義務づけるなど実践を重視するほか、社会人が入学しやすいよう4年間の修業期間を前・後期に分けるなど弾力化を図る。早ければ2019年の創設を目指す。
 素案は「産業の高度化・複雑化に伴い、職業人に求められる能力も高度化・多様化している」と指摘。専門職業大学では、福祉や観光、情報通信技術(ICT)などの分野での現場リーダーや、新規事業を創出できる人材を養成する。
 現在の専門学校は技術習得が中心。専門職業大学ではそれらに加え、経営のノウハウや高度な技能の習得に重点を置き、実務経験のある教員を一定割合配置するほか、企業内実習(インターンシップ)など企業と連携した授業も一定時間以上義務づける
 修業年限は2~4年。4年なら「学士」、それ以外は「短期大学士」に相当する学位を授与する。4年制は前期と後期に分け、▽前期修了後に就職し、必要な時期に後期に編入学▽大卒の会社員が後期から編入学--など企業や学習者のニーズに応じた学習形態を提供する。
〔中略〕
 現行の専門学校が専門職業大学に移行したり、大学が学内に併設したりすることが想定される。【三木陽介】”

中教審もひどいものだ。
具体的に何が足りなくて、どう補うべきかも明示できず、
先進的事例や海外の範例を分析することもなく、ただの空疎な作文でしかない。
中教審は提言や政策案を検証されもしない状態であるばかりか、
現実社会で起きている問題を理解しないで文書にしているのが明白である。

▽ 環境劣化の著しい介護の現場で研修させるべき

『崩壊する介護現場』(中村淳彦,ベストセラーズ)


法科大学院受験者数が1万人割れ 競争倍率も2倍切る(共同通信)
http://this.kiji.is/40288632372559873
今春、学生を募集した法科大学院54校の受験者は延べ9351人で、初めて1万人を下回ったことが11日、文部科学省の集計で分かった。受験者数を合格者数で割った競争倍率も、昨年度から0.13ポイント減の1.87倍で2倍を切った。
 法科大学院が開校した2004年度入試では受験者が4万人を超えていた。学生の法科大学院離れに歯止めがかかっていない状況が浮き彫りになったことで、今後も募集停止や定員の見直しが続きそうだ。〔以下略〕”

典型的な失敗例であるロースクール。
現実を無視し空理空論でおかしな制度設計がなされた典型だ。
人生を狂わされた人間が多いのだが、誰一人として責任を取っていない。


法科大学院「適性」廃止へ…受験者減少で容認(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160507-OYT1T50168.html
”法科大学院の志願者減少に歯止めをかけるため、文部科学省の中央教育審議会・作業部会は、受験者の第一関門になっている共通テスト「適性試験」を各校が任意で利用する方式に転換する方針を固めた。
 11日の中教審・特別委員会に報告書を提出し、2018年度の実施を目指す。これにより、適性試験は廃止に向かう見通しで、法曹としての資質を入り口でチェックしてきた法科大学院は当初の制度設計から一層乖離(かいり)が進むことになる。
 適性試験は法律家に必要な思考力や表現力を問う内容で、各法科大学院が個別入試の際、成績提出を義務付けている。
〔中略〕
 法科大学院の受験者は、一斉開学した2004年度の約4万人から15年度は約9300人に激減。当初の74校のうち31校が廃止を決めた。文科省が昨年10月、学生募集を継続していた45校を対象に調査したところ、41校が「適性試験が志願者確保の障害」と回答。「実施場所や回数が限られており、受験しにくい」などを理由に挙げた。合否への影響が3割未満という大学院も半数以上に上った。”

この報道からも、文教政策が現実から遊離していて、
お粗末な制度設計による機能不全を後追いで修正させられている惨状だ。

傲慢で現実を無視した軍上層部が無数の兵士を死なせた
太平洋戦争とまさに同じ図式である。
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