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教育世界一でも日本経済停滞、教育改革論者は信用できない - 国際成人力調査PIAACの結果より

2013-10-15 | いとすぎから見るこの社会-雇用と労働
選挙で大勝した自民党は今年春に「理数系教育の強化」を提唱していたが、
図に乗ったそうした低次元の論をあざ笑うかのような報道があった。

PIAAC(国際成人力調査)で日本が世界一となり、
「数的思考力」もフィンランドを上回りトップだった。

現代日本の停滞や閉塞の原因が教育にあるとする連中は
基本的に大嘘つきであると立証されたと言って良かろう。

そもそも日本の競争力ランキングを見ると教育水準や技術力は
向上余地はあるものの常に高く評価されている。
評価が低いのは公共部門(政府・自治体等)の非効率性と財政赤字である。

PIAACの結果からは日本はブルーカラーや中卒者の高い能力を
経済分野で活用できていないことが推測されるが、
これも日本の政治と行政、つまり公共部門の抱える問題点と言える筈である。

また、
日本は最上位層の人材がやや薄いという欠点も見えており、
近年の世界的な人材獲得競争で劣位に陥るのではないかと憂慮される。

▽ アメリカは世界中から優秀な人材を集めるという国家戦略を持っている

『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由』


成人力調査世界一で舞い上がっている場合ではない。
日本の教育は世界的にレベルが高くとも、政策と教育論議は果てしなく程度が低い。

「愚劣な責任転嫁を平然と行う中教審の議論の「猫の目ぶり」を見れば
 文教政策が頭の悪い「モグラ叩き」でしかないことは明白だ」

「大学乱立は自民党政権時の愚かな規制緩和の必然の結果である」

「日本では教育問題の議論が常に目先のことばかりで
 利害関係者の方では必死に姑息な情報操作を行い、
 しかもメディアや国民がそれを見抜けないという情けない状況にある」

「文科省の審議会や認可が大学の質向上において
 殆ど無意味に近いのは、議論の余地のない明白な事実である」

「だから文科省が認可した大学でも次々と定員割れと経営危機を起こしている。
 最近では法科大学院の惨状は100%間違いなく文科省の制度設計に原因がある」

「文科省はそもそも大学教育の質や大学運営の質を評価する指標を持たないし、
 指標に基づいて政策調整しなければならないとの意識が全くない」

「計量経済学や計量社会学の専門家を雇い、
 若年人口の変動が大学経営に与える影響を測定し、
 労働市場の変化と人材需要に基づいて政策決定をしなければ
 日本の大学は悲惨な状況に追い込まれてゆくだろう」

と当ウェブログは批判してきたが、状況は全く変わっていない。

 ↓ 参考

文科省が認可した大学でも、続々と定員割れになっている - 問題の本質は田中真紀子大臣の不認可ではない
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/6839b2d4f7aa07d1ad724d2146a3415e‎

大学生に責任転嫁する中央教育審議会、自らの分析不足を認識せず -「勉強時間」しか判断基準がない貧弱さ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/62943717b497b8613c43f5d980ed62b1

東大が海外留学生に蹴られ、欧米有力大学への劣後が明確に - 秋入学効果を盲信する愚かな論者に警鐘
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/326d77615f6ee0bfbc1f72f8f9c0c145

▽ 日本の教育改革論議は、基本的に現実を無視している

『格差社会と教育改革』(苅谷剛彦,岩波書店)


国際成人力調査:日本、読解力と数的思考力で首位(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20131009k0000m040025000c.html
”経済協力開発機構(OECD)は8日、加盟国を中心に世界24カ国・地域を対象に、社会生活に必要な能力を調べた初の「国際成人力調査(PIAAC、ピアック)」の結果を発表した。調査は「読解力」「数的思考力」「IT(情報技術)活用力」の3分野で、日本は読解力、数的思考力の平均点で1位。「IT活用力」は、高い習熟度を持つ人の割合は10位だったが平均点では1位となり、全3分野で平均点がトップだった
〔中略〕
 テストはコンピューター(使えない人は紙のテスト)で実施し、正しい情報や数値を選ぶ問題や情報を分析させる問題を解かせた。読解力(文章を理解、評価、利用する力)▽数的思考力(統計などの数学的な情報を利用、解釈、伝達する力)▽ITを利用した問題解決能力(コンピューターやインターネットを使い、実生活に活用する力)--の3分野について、各0~500点の間で採点した。
 日本は、読解力が平均296点で、2位のフィンランドに8点差をつけて1位。数的思考力でも2位フィンランドに6点差の288点でトップだった。
 IT活用力は、全解答者(コンピューターと紙テストの合計)のうち、得点上位のコンピューター回答者の割合で、国民の能力を測った。日本は35%で、20カ国・地域中10位。1位はスウェーデン(44%)だった。これとは別に、日本の国立教育政策研究所でコンピューター回答者だけで平均点を独自算出したところ、日本は294点で、2位(フィンランド289点)を引き離してトップだった。
 また、年齢や学歴などを考慮して分析すると、日本の成績はOECD平均より上位と下位の差が小さい▽中高年になってもレベルが落ちない▽中卒者の読解力は、高卒者のOECD平均とほぼ同等--などが確認された
 文科省生涯学習政策局政策課の亀岡雄・主任社会教育官は「義務教育をはじめとする日本の教育の成果が大きく反映されており、企業の職員研修も影響していると考えられる」と分析している。【福田隆】

◇ことば【国際成人力調査(PIAAC、ピアック)】
 経済協力開発機構(OECD)が加盟国・地域などの15歳の子供(日本では高校1年)を対象に3年おきに実施している国際的な学習到達度調査「PISA(ピザ)」の成人版で、今回初めて実施した。24カ国・地域の16~65歳、約15万7000人を対象に、2011年8月~12年3月に調査。〔以下略〕”

毎日新聞がPIAACの簡潔な解説も添えた記事を出している。
但し文科省の「企業の職員研修も影響している」とのコメントに根拠はない。
多くの日本企業が研修にコストや労力をかけられなくなっているのが現状である。

ただ、少なくとも「失われた20年」を招いた責任が教育にないことは明らかであり、
教育を犯人扱いしてきた低能な論者を黙らせる効果はありそうだ。


日本の「成人力」世界で突出 「読解力」「数的思考力」トップ OECD調査(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/131008/edc13100823540003-n1.htm
”■少ない成績下位者、社会適応力高く
 社会生活で求められる成人の能力を測定した初の「国際成人力調査」(PIAAC(ピアック))で、経済協力開発機構(OECD)加盟など先進24カ国・地域のうち、日本の国別平均点が「読解力」と「数的思考力」でトップだったことが8日、分かった。
〔中略〕
 この調査は、OECDが平成23年8月から翌年2月にかけ、世界24カ国・地域の16~65歳の成人約15万7千人を対象に実施。日本では男女1万1千人を対象に5173人が回答した。(1)社会に氾濫する言語情報を理解し利用する「読解力」(2)数学的な情報を分析し利用する「数的思考力」(3)パソコンなど「ITを活用した問題解決能力」-の3つの社会適応能力を調べた。
 日本は「読解力」の平均点が500点満点中296点で、OECD平均273点を大きく上回り1位になった。「数的思考力」も、OECD平均269点に対し日本は288点で、2位のフィンランドに6点差の1位だった。
 読解力と数的思考力の得点を「レベル1未満」から「レベル5」まで6段階にわけて分析したところ、日本は下位の「レベル1未満」と「レベル1」の回答者の割合が各国の中で最も少なく、逆に上位の「レベル3」と「レベル4」の割合が最も多かった。最上位の「レベル5」の割合は読解力で4番目、数的思考力で6番目だった。
 職業別にみると、各国では現場作業員や農林水産業者らいわゆるブルーカラーの平均点が、事務職やサービス業などいわゆるホワイトカラーの平均点に比べて明らかに低かった。しかし日本ではブルーカラーのレベルも高く、各国のホワイトカラーと同程度か、それ以上だった
 一方、「レベル1未満」から「レベル3」まで4段階で評価された「ITを活用した問題解決能力」は、パソコン回答が前提だったため、筆記回答者が多かった日本は「レベル2」と「レベル3」の上位者の割合が35%にとどまり、OECD平均の34%とほぼ同じだった。ただ、パソコン回答者だけで比較した平均点では日本がトップだった。
 文部科学省では、「全体的なレベルが高かったのは基礎基本を重視する義務教育の成果だ。今後もこのレベルを維持し、向上していきたい」としている。”

産経報道は毎日ほど詳しくないが、最上位の割合が相対的に低いとの指摘は重要だ。
これは国際的な人材獲得競争において、閉鎖的な日本が今後不利になる可能性を示唆している。

そして、ブルーカラーの水準が高いのにも関わらず、我が国の一人当たりGDPや労働生産性が
スウェーデンよりも劣っていることから、日本は政策・制度面に問題を抱えていると推測される。

▽ 北欧は大学教育を常に再構築し、新しい産業分野に進む社会人の職業教育の場として活用する

『スウェーデン・パラドックス』(日本経済新聞出版社)

確かに日本の高等教育には多くの課題がある。
しかし日本の病巣は教育ではなく寧ろ程度の低い教育論議と政策にあるのである。
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