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野口悠紀雄氏「TPPは日本の製造業に深刻な悪影響」- 対アジア輸出が相対的に不利になる

2011-10-11 | いとすぎから見るこの社会-対アジア・世界
TPP推進への批判は主に国内農業保護の立場でなされてきたが、
つい最近、経済学の世界から注目すべき批判が出てきた。
TPPが日本の製造業に悪影響を与えるという
驚愕すべき、しかし無視できない論拠のある説である。

早大ファイナンス総合研究所の野口悠紀雄氏が
週刊ダイヤモンド9月24日号へ寄稿された論考では、
アメリカが輸入工業製品へ課している関税が既に低いため
日本の対米輸出は増えない可能性が高いと主張されている。

『週刊ダイヤモンド』2011年 9/24号


この論考はまだ詳細な検討を重ねたものではないため、
あくまでも視点のひとつに過ぎないが
対中輸出にどのような影響があるかを含め、
TPPの効果を冷静に考察する上で価値がある。

他国の大統領が熱心に進めようとする政策で
日本経済が成長できると本気で信じる連中は
国際社会における三歳児も同然と言えるだろう。


事実問題としては、為替水準の方がダイレクトに貿易に影響する。
今週の週刊ダイヤモンド(P20)を見れば明白だ。
ドル安、ユーロ安で欧米の輸出がぐいぐい伸びている。

『週刊ダイヤモンド』2011年 10/15号


もし真剣に日本の輸出を梃入れしたければ、
暫く前に当ウェブログで書いたように
政府当局が「日本円を韓国ウォンにペッグする」と
本気で宣言した方が遥かに効果的である。

金融市場関係者が一瞬で顔色を変えて
ドル円が急落するのは間違いない。

対アジア貿易での日本の強敵は韓国である。
日本が国内での多少のインフレに耐えれば輸出競争力は回復できる。


▽ ウォンペッグは大和総研の原田泰チーフエコノミストの発案

『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(原田泰,新潮社)



TPP 参加が日本の成長に不可欠だ(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20111005-OYT1T01444.htm

”日本の成長戦略を推し進めるため、政府は新たな自由貿易圏となる環太平洋経済連
 携協定(TPP)への参加を早期に決断すべきだ。
 「例外なき関税撤廃」を原則とするTPPの締結に向け、米国や豪州など9か国が、
 11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)での大枠合意を目指している。
 TPPの基本的枠組みが日本抜きで固まれば、将来、日本が参加する場合、不利な
 ルールであっても受け入れざるを得なくなる。
 経団連の米倉弘昌会長がAPECまでの参加表明を政府に促しているのは、そのた
 めだ。
 最大の問題は、農業である。
 関税が段階的に下がることで外国産品は競争力を増し、国内市場を席巻しかねない。
 全国農業協同組合中央会の万歳章会長は、野田首相に「TPPに参加すると日本農
 業は壊滅する」と訴えた。
 だが、農業は担い手の高齢化が著しく、衰退する一方だ。このままでは展望が見え
 ない。
 TPP参加を機に、大胆な農業改革に踏み出して、自由化に耐えられるような強い
 農業への転換を進めなければならない。
 民主党は、鉢呂吉雄・前経済産業相を座長とする、TPPに関するプロジェクトチ
 ームを設置した。遅きに失した感はあるが、議論を急いでもらいたい。
 党内のTPP反対派の会合では、参加によって工業製品の規格や医療・医薬品など
 の規制緩和を迫られ、大打撃を被るのではないか、と警戒する声が相次いだ。
 政府はそうした疑念を払拭し、TPP参加が日本にどのようなメリットをもたらす
 のかを明確に説明する必要がある。
 気がかりなのは、政府・民主党内に「交渉に参加し、言い分が通らなければ離脱す
 れば良い」との「途中離脱論」があることだ。
 反対派をなだめる方便だろう。だが、参加する前から離脱をちらつかせる国の言い
 分が、交渉の場で説得力を持つとは思えない。
 民主党内には、アジア・太平洋地域の安定を図るという視点がないことも懸念材料
 である。
 TPP参加によって、日本や東南アジア各国、豪州などは、米国を基軸に経済的な
 連携を強化できる。それは、膨張する中国をけん制することにもつながろう。
 臨時国会では、TPP問題が論戦の焦点となる。自民党も意見を集約して臨むべき
 だ。
 民主党内の論議と並行して、政府はTPP参加へ閣内の意思統一を図ることが急務
 だ。”

 → TPPがアジア・太平洋地域の安定に寄与するという珍説である。
   それに相手国による利害関係の相違を殆ど分析していないので、
   正直言ってこの程度の論拠では役に立たない。

   「自由化に耐えられるような強い農業」への転換推進は結構だが、
   その場合、離農者の急増を覚悟しなければならない。
   TPPに参加し政策転換すればバラ色の未来が来るものではない。

   典型的な規制産業で国際競争力の低い大手メディア(給与は高い)が
   自由化を救世主のように崇拝するのは理解し難いものである。
   自ら自由化を実践し「強いメディア」に変貌してから言ってはどうか。


TPP「農水相の弱腰困る」=復興特区、無条件で法人税ゼロに―経団連会長(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2011101100656

”経団連の米倉弘昌会長は11日の記者会見で、環太平洋連携協定(TPP)交渉参
 加をめぐる鹿野道彦農林水産相の慎重姿勢について「農業をつかさどる大臣が弱腰
 では困る」と厳しく批判した。民主党内の参加反対論にも「選挙等々を考えずに、
 国益を考えて農業をいかに強くするかだ」とけん制した。
 その上で、農業強化策に関して「お金を積めばいいというわけではない」と強調。
 「農水省は自分で農業をやっている気持ちで、必死で改革を進めるべきだ」と訴え、
 農家への「ばらまき」でなく、国際競争力の向上や担い手育成など抜本改革に取り
 組むよう求めた。
 一方、復興特区の新規立地企業の法人税を5年間無税とする方針について、政府税
 制調査会が打ち出した参入条件を「使い勝手が悪い」と指摘。「形だけでなく本当
 に、事業を興して雇用を創出できるようにしてほしい」と述べ、企業の進出を促す
 ために無条件で免税とすべきだと強調した。”

後半はまあ制度改善に活かせるなら結構なことだが、
経団連が「国益」を語るのには正直、驚いた。

「日本の農業が大混乱に陥っても我々企業が有利になれば良い」と
考えているのであればはっきりとそう明言すべきだろう。

数年前の三角合併への強硬な反対や、
役員報酬公開への反発を見れば圧力団体の本音は明らかである。
明白なダブルスタンダードであり実態は農水省と何ら変わらない。

財界の受けている巨額の租特はバラマキではないのか。
国際競争力の向上や担い手育成など抜本改革が必要だと
地盤沈下している多くの日本企業にこそ言うべきではないのか。
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