今週の『週刊ダイヤモンド』のメイン特集はかなり良かった。
地政学入門は、先週の東洋経済の特集よりも明らかに優れている。
EU内の「南北問題」を取り上げるだけに留まらず、
P58の「極右と極左が南北を分断」が素晴らしい。
イスラム過激派のテロ事件で、この政治分断はより深刻なものとなっているものと思われる。
ただ中核国ドイツがユーロから余りにも大きな恩恵を受けているため
EU分裂は考えられないが、混乱を抑制するシステムがないので騒動は続くだろう。
見逃せないところとしてはP65の「2015年のリスクトップ10」。
ブラックストーンが「日銀の金融緩和の影響力低下」を、
サクソバンクが「日本のインフレ率が5%上昇」をリスクとして挙げている。
後者は極端なリスクシナリオではあるが
(サクソバンクはドラギECB総裁の辞任もリスクシナリオとして提示している)
前者の可能性はかなり高いと見てよい。
(ブラックストーンは中国の成長率7%割れという至極妥当なシナリオを挙げている)
もし本当に日本のインフレ率が5%に上昇したら、(可能性は勿論ゼロではない)
日本経済は重大な打撃を受け、安倍政権は権力の座から引きずり降ろされ罵声の嵐だろう。
リスクーな政策を推進した自業自得なので当然のことではあるが。
仰天させられたのはサブ特集「住友不動産〝非常識経営〟の功罪」だ。
最初は企業レポートの拡大版かと見ていたが、後半を見て飛び上がった。
住友不動産には重大な経営リスクがあると言わざるを得ない。
はっきり言うと、かつてのオリンパス以上の打撃を受ける可能性がある。
代休も有休も事実上存在せず、公然とサービス残業を行わせていたようだ。
住不販では嘘のチラシを大量に撒き、勿論のこと「両手取引」が原則とか。
労働組合も社外取締役も存在せず、トップを神格化している。
このダイヤモンド誌の内容が正確であれば、
一部上場の名門企業に激震が走る可能性が高い。
次週のダイヤモンドでは「大手不動産の不正行為」をスクープするようなので、
こちらは同じ件で決定的なネタを掴んだのかもしれない。
◇ ◇ ◇ ◇
今週の『週刊東洋経済』の貧困特集は懸念した通りに重要な指摘が抜けている。
「反貧困関係者の話に引っ張られ、負担とモラルハザードの問題を忘れないよう願いたい」
と先週に書いたが、見事にその点がすっぽり抜けている。
日本の反貧困派は欺瞞的と言うか、無意識だろうが偽善的なスタンスであり、
欧州の貧困対策を政府に求めながら欧州並みの国民負担の必要性を語らない。
P45で「社会保障が手厚いほど貧困率は低い」と書いてあるが、
これはひと目見ればすぐ分かる典型的な情報操作である。
「税率が高いほど(再分配の原資が増え)貧困率が低い」の誤りである。
何度か書いているが、貧困対策を求めるなら
反貧困派が自ら税負担の引き上げを求めるべきである。
政府や社会の責任ばかり追求するのは
口では綺麗事ばかり並べて正義の味方を装う責任転嫁でしかない。
P78の問題にしても同様に偽善的で、
正規公務員の年功賃金カーブが世界最高水準であるために
非正規公務員の待遇が悲惨な状況になっているのだ。
彼らを助けたければ、税負担を引き上げて非正規の賃金に回すか、
正規公務員の年功賃金や退職金を削減して非正規に回すか、
その二択しかないのは明白である。
この問題でも、フリーライダーは絶対にあり得ない。
執筆した藤田和恵女史は、元地方紙記者なのだから
地方では正規公務員家系と医師家系が「富裕層」であるのを
絶対に知っている筈だ。(住んでいる家を見れば明白である)
彼らから所得移転をとどうして言えないのか。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊エコノミスト』の特集は、不動産投資家には実用的だろう。
そうでなくとも、P30「2025年以降に氷河期到来」は絶対に目を通すべき。
青山財産ネットワークスの高田吉孝氏による優れた分析だ。
矢張り、日本経済の最大の敵は人口動態の急速な劣化であることが一目瞭然だ。
特に都市郊外の不動産市場は壊滅的な打撃を受けるだろう。
実はマクロ経済・投資関連ではP94の藻谷俊介氏の分析がいち押しだ。
中国の「李克強指標」(発電量・電力使用量・貨物輸送量)や
鉱工業生産指数の逓減から見て、中国経済は実は5%成長程度ではと氏は示唆している。
おまけに日本から中国への輸出もほぼ垂直に急落しており、
今年の中国経済への疑念を強めるのに充分な内容である。
◇ ◇ ◇ ◇
次週はダイヤモンド、メインでは「東大病院で医師が大量辞職」サブでは「揺れるグノシーの大型上場」に注目。
▽ スクープ「大手不動産が不正行為か」が大手柄かも
▽ 東洋経済は、表紙の迫力に中身が負けそうな予感がひしひしと。。(業界の内輪ネタ感が強い)
▽ エコノミストは内容を見ないと何とも言えない
イエメン問題の分析レポートは見ておきたい。
地政学入門は、先週の東洋経済の特集よりも明らかに優れている。
EU内の「南北問題」を取り上げるだけに留まらず、
P58の「極右と極左が南北を分断」が素晴らしい。
イスラム過激派のテロ事件で、この政治分断はより深刻なものとなっているものと思われる。
ただ中核国ドイツがユーロから余りにも大きな恩恵を受けているため
EU分裂は考えられないが、混乱を抑制するシステムがないので騒動は続くだろう。
見逃せないところとしてはP65の「2015年のリスクトップ10」。
ブラックストーンが「日銀の金融緩和の影響力低下」を、
サクソバンクが「日本のインフレ率が5%上昇」をリスクとして挙げている。
後者は極端なリスクシナリオではあるが
(サクソバンクはドラギECB総裁の辞任もリスクシナリオとして提示している)
前者の可能性はかなり高いと見てよい。
(ブラックストーンは中国の成長率7%割れという至極妥当なシナリオを挙げている)
もし本当に日本のインフレ率が5%に上昇したら、(可能性は勿論ゼロではない)
日本経済は重大な打撃を受け、安倍政権は権力の座から引きずり降ろされ罵声の嵐だろう。
リスクーな政策を推進した自業自得なので当然のことではあるが。
『週刊ダイヤモンド』2015年 4/11号 | |
仰天させられたのはサブ特集「住友不動産〝非常識経営〟の功罪」だ。
最初は企業レポートの拡大版かと見ていたが、後半を見て飛び上がった。
住友不動産には重大な経営リスクがあると言わざるを得ない。
はっきり言うと、かつてのオリンパス以上の打撃を受ける可能性がある。
代休も有休も事実上存在せず、公然とサービス残業を行わせていたようだ。
住不販では嘘のチラシを大量に撒き、勿論のこと「両手取引」が原則とか。
労働組合も社外取締役も存在せず、トップを神格化している。
このダイヤモンド誌の内容が正確であれば、
一部上場の名門企業に激震が走る可能性が高い。
次週のダイヤモンドでは「大手不動産の不正行為」をスクープするようなので、
こちらは同じ件で決定的なネタを掴んだのかもしれない。
◇ ◇ ◇ ◇
今週の『週刊東洋経済』の貧困特集は懸念した通りに重要な指摘が抜けている。
「反貧困関係者の話に引っ張られ、負担とモラルハザードの問題を忘れないよう願いたい」
と先週に書いたが、見事にその点がすっぽり抜けている。
日本の反貧困派は欺瞞的と言うか、無意識だろうが偽善的なスタンスであり、
欧州の貧困対策を政府に求めながら欧州並みの国民負担の必要性を語らない。
P45で「社会保障が手厚いほど貧困率は低い」と書いてあるが、
これはひと目見ればすぐ分かる典型的な情報操作である。
「税率が高いほど(再分配の原資が増え)貧困率が低い」の誤りである。
何度か書いているが、貧困対策を求めるなら
反貧困派が自ら税負担の引き上げを求めるべきである。
政府や社会の責任ばかり追求するのは
口では綺麗事ばかり並べて正義の味方を装う責任転嫁でしかない。
『週刊東洋経済』2015年 4/11号 | |
P78の問題にしても同様に偽善的で、
正規公務員の年功賃金カーブが世界最高水準であるために
非正規公務員の待遇が悲惨な状況になっているのだ。
彼らを助けたければ、税負担を引き上げて非正規の賃金に回すか、
正規公務員の年功賃金や退職金を削減して非正規に回すか、
その二択しかないのは明白である。
この問題でも、フリーライダーは絶対にあり得ない。
執筆した藤田和恵女史は、元地方紙記者なのだから
地方では正規公務員家系と医師家系が「富裕層」であるのを
絶対に知っている筈だ。(住んでいる家を見れば明白である)
彼らから所得移転をとどうして言えないのか。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊エコノミスト』の特集は、不動産投資家には実用的だろう。
そうでなくとも、P30「2025年以降に氷河期到来」は絶対に目を通すべき。
青山財産ネットワークスの高田吉孝氏による優れた分析だ。
矢張り、日本経済の最大の敵は人口動態の急速な劣化であることが一目瞭然だ。
特に都市郊外の不動産市場は壊滅的な打撃を受けるだろう。
『週刊エコノミスト』2015年 4/14号 | |
実はマクロ経済・投資関連ではP94の藻谷俊介氏の分析がいち押しだ。
中国の「李克強指標」(発電量・電力使用量・貨物輸送量)や
鉱工業生産指数の逓減から見て、中国経済は実は5%成長程度ではと氏は示唆している。
おまけに日本から中国への輸出もほぼ垂直に急落しており、
今年の中国経済への疑念を強めるのに充分な内容である。
◇ ◇ ◇ ◇
次週はダイヤモンド、メインでは「東大病院で医師が大量辞職」サブでは「揺れるグノシーの大型上場」に注目。
▽ スクープ「大手不動産が不正行為か」が大手柄かも
『週刊ダイヤモンド』2015年 4/18号 | |
▽ 東洋経済は、表紙の迫力に中身が負けそうな予感がひしひしと。。(業界の内輪ネタ感が強い)
『週刊東洋経済』2015年 4/18号 | |
▽ エコノミストは内容を見ないと何とも言えない
『週刊エコノミスト』2015年 4/21号 | |
イエメン問題の分析レポートは見ておきたい。