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WSJに嘲笑される藤沢数希「富裕層への増税案は控えめなもの」- 米英の所得税引き上げに沈黙する二枚舌

2013-01-21 | いとすぎから見るこの社会-全般
数日前に藤沢数希氏が所得税の税率引き上げを狂ったように批判し、
「富裕層の所得税率を引き上げれば逆に税収は減る」と主張している。
当ウェブログは愚劣なイデオロギーではなくリアリズムに立脚しているので、断言しよう。
藤沢数希氏は日本経済にとっての逆指標であるので、税収は僅かながら増える。

例えば氏は迂闊にもFIT導入が日本にとっての禍根になると言い切っていたが、
実際には再生可能エネは順当に拡大し、氏の大好きな原発がほぼ全停止なのに東証は急騰している。
事実を虚心坦懐に見る限り、氏は実体経済にとって逆指標であると言えよう。

↓ 参考

月100円で慌てる藤沢数希説が面白過ぎる件 - フランス会計院にも惨敗、知的貧困層しか支持してない?
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/e6f79e819ef4a18911b68766bc0bd359

また、氏は所得税の最高税率の引き上げで日本が衰退すると叫んでいるが、
オオカミ少年は信用されないので早めに主張を撤回した方が賢明であろう。
海外から見た日本経済に対するコンセンサスは
少子高齢化で先進国から転落するというものである。
最高税率引き上げの影響度などゼロに近い。

▽ エコノミスト誌の方が藤沢氏より遥かに信用できる

『2050年の世界 英「エコノミスト」誌は予測する』(文藝春秋)


氏はまだまだそこまで理解が及んでいないようだが、
賢明な者は人口政策の死活的重要性を察知している。

↓ 参考

高齢化で衰退する日本、成長率は年マイナス1.2%、労働生産性は0.2~0.4%下押し - 日銀の試算
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/f4f97a7872a2668da0770f0767a1ca39

少子高齢化で日本が先進国から脱落する日 - 2030年以降マイナス成長、一人当たりGDPで韓国に敗北
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/9130d6d3ae6d51f2a73cf900559123fc


所得税の最高税率引き上げで日本は衰退の道を転げ落ちる - 藤沢 数希(アゴラ)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130117-00000302-agora-bus_all
”政府与党の自民・公明は、14日夜の税制協議で、消費税を現行の5%から10%に引き上げるのに先立ち、2015年1月から所得税の最高税率を現行の40%から45%に引き上げることで合意した。低所得者の負担感が強い消費税増税を2015年4月から実施するのに伴い、高額所得者の税負担を強化するのが狙いだ。現在、日本では1800万円以上の所得に対して所得税40%、住民税10%の計50%の所得税率が課されている。さらに所得の3000万円以上(この金額に関してはまだ議論されている)の部分に、所得税45%、住民税10%の計55%を課すことになる。これで日本の高額所得者は、江戸時代では農民一揆が起こるギリギリの税率であるといわれている五公五民を超える重税に耐えていくことになる。筆者は、これは極めて愚かな税制改悪であり、このままでは日本経済の衰退は必定ではないかと危惧している。理由はみっつある。
 まず、ひとつ目の理由は、そもそもこのような最高税率の引き上げで、税収が増えることは全く期待できないからである。五公五民を超える重税による勤労意欲の低下、国外への富裕層の流出、大小様々な節税対策により、おそらく税収は減ることになる。その証拠として、世界では、最高税率を引き下げても、税収は減らなかったり、むしろ増えていることの方が圧倒的に多いのである。香港などは毎年のように税金を安くしているのに、税収は増え続けている。シンガポールも同様だ。陸続きで文化も似通っている欧州では、税金を安くしないと富裕層が簡単に移住してしまうため租税競争が活発だが、こうした税率の引き下げにも関わらず税収は減っていない。拙著『グローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』にも書いたが、ロシアでは、2001年1月1日に13%のフラット・タックスを導入した結果、2001年の個人所得税の税収がなんと47%(インフレ調整済みで25%)も上昇し、驚くことに2002年はそこからさらに40%(インフレ調整済みで25%)も税収が増加した。この程度のフェアな税率なら、脱税や手の込んだ節税など行わずそのまま申告した方がいいので、一気に税収増につながった。上に政策あれば下に対策あり、なのである。
 このように日本での所得税の最高税率の引き上げは、政府の狙いとは真逆で、むしろ税収が減る可能性が極めて高いが、百歩譲って、上記のような効果が全くなく、今の申告される所得が全く変わらず、新たな税率で皆が税金を払うと仮定しても、税収増は微々たるものである。
〔中略〕
 これは税収増のベスト・シナリオであり、実際には、前の段落で説明したように、むしろ税収は減る。つまり、所得税の最高税率の引き上げは、税収を確保するためではなく、富裕層を狙い撃ちして、国民の人気を得ようという、純粋な政治パフォーマンスなのである。
 ふたつ目の理由は、アジアでの租税競争である。シンガポールや香港をはじめ、アジア各国は、企業誘致、富裕層の誘致のため、法人税や所得税の引き下げ合戦をしている。シンガポールや香港では、所得税の最高税率は10%台である。これと比べると、日本の55%というのがどれほど高い税率か分かろう。これらのアジア諸国に対向するために税率を引き下げるならともかく、引き上げるというのは、全くもって自殺行為に他ならない。
〔中略〕
 みっつ目の理由は、このわずか0.1%ほどのビジネス・リーダーたちこそが、これからの先進国の経済において必要な人材だからである。工場での組立作業など、低付加価値の労働は、否が応にも、賃金の低い新興国に移っていく。こうして新興国の国民は豊かになり、先進国の国民は、低付加価値の労働から開放され、新たな成長産業に移っていけるのだから、この事自体は悪いことではなく、むしろ喜ぶべきことだろう。そこで先進国では、高付加価値の研究開発の拠点、多国籍企業の戦略拠点、文化の発信拠点などが重要になってくる。こういったクリエイティブな分野において重要なのは、一握りの突出した人材である。彼らの周りに多くの人が集まり、産業が起こるのである。
 さて、最初に述べたように、この所得税の最高税率の引き上げは、税収になんら貢献しないだろう。一方で、最高税率引き上げというニュースが、日本や世界に発するメッセージは強烈である。日本は、努力して成功し、多くの富を生み出した人材を罰する、というメッセージだ。こうして日本から富裕層が海外に流出し、優良企業も次々と海外に拠点を移していくだろう。世界から才能ある人材や、卓越した企業を誘致するどころではない。政府与党は一刻も早く、このひどく間違った税制の改悪案を撤回すべきだ。”

「対向」という誤字はさておくとしても、
企業の海外移転の主因は市場縮小である。どの専門家に聞いても同じだ。
自らへの課税が強化されそうだからといって、いい加減な話を振りまくのはやめてほしい。
所得税も法人税も遥かに今より高かった80年代に、企業の海外移転が増えたとでも言うのか?

「一握りの突出した人材」と「0.1%のビジネスリーダー」を同一視する
陳腐な論理のすり替えも何とも言えず不快な臭気を発している。

また、相変わらずロシア経済の急回復を減税要因であるかのように書いているが、
これは完全な間違いであり、愚かな大衆へ向けた見え透いた情報操作である。

当時のロシア経済はハイパーインフレが収束したため納税を先延ばしにする必要がなくなり、
石油価格が上昇に転じたので急激に経済状況が好転していた。この二つが主因である。
所得税を引き下げたためなどではない。

地下経済が日本と比較にならないほど大きいロシアに事例として固執する理由は、
氏にとって好都合な事例が他に見当たらないからである。

例えばレーガン政権が当初の減税のために財政赤字に陥り、
減税路線を修正せざるを得なかったのは有名な話だ。

氏が不都合な事実を無視してプロパガンダを展開する理由は、利益誘導に他ならない。

ニコラス・シャクソンは、タックスヘイブンを詳細に研究したリポートで、
金融業の高収益がタックスヘイブンと不可分に結びついていることを明らかにした。
タックスヘイブンを擁護する金融業の人間の言説は、
ほぼ間違いなく自らへの利益誘導と考えた方がよい。

▽ タックスヘイブンを使えば金融業はたやすく収益を増やせる

『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』(ニコラス・シャクソン,朝日新聞出版)


上掲書では、ジャージーやケイマン諸島だけでなくシティ、デラウェア、フロリダも、
そしてアジアではシンガポール・香港等のタックスヘイブンは全て、
脱税やドラッグマネーのような黒いカネの流入によって支えられていることが明記されている。
残虐な独裁者であるピノチェトを「正しい手段で富を蓄えた立派な職業人」などと称するのが
タックスヘイブンの実態なのである。


日本も最富裕層の所得税、相続税引き上げへ―税収増はわずか(jp.wsj.com)
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323942504578234572592632166.html
”【東京】日本の巨額の政府債務に対する懸念が続く中で、安倍晋三新政権は、米国やフランスに続いて最富裕層に対する所得税引き上げを決める見通しだ。
 安倍首相が打ち出した景気浮揚対策は世界の注目を集め、株価が上昇した。例えば日銀に対する金融緩和圧力や、大型財政支出を含む緊急経済対策がそれだ。
 しかし、それほど目立たないものの、与党・自民党は財務省と連携して最高所得層への増税と相続税の最高税率引き上げも検討している。
 政府当局者が10日明らかにしたもので、自民党と連立パートナーである公明党との協議で今月中に正式に発表される予定だ。
〔中略〕
 この増税案は、安倍首相率いる自民党が「保守的」とみられる一方で、日本での経済政策論議が米国での論議と極めて異なった様相を呈していることを示している。
 米国では、共和党はいかなる増税にも反対の立場で、民主党のオバマ大統領からの強力な圧力を受けてようやく所得税引き上げを受け入れた。
 日本では、主要政党には公然たる増税反対論議はあまりなく、経済刺激策は主として減税よりも政府支出増加が中心だ。
 ある政府当局者は、自民党が最富裕層に対する増税を受け入れた動機について「自民党は、普通の人々の痛みを理解する同情的な保守政党とみられたいのだ」と述べた。しかし同時に「自民党は日本に必要なのはダイナミックなビジネスマンであることも承知している。大きな所得格差は望ましくないが、われわれはあらゆる人を平等に貧しくしようとは思っていない」と語った。
〔中略〕
 この増税の種がまかれたのは、麻生太郎首相(現副総理兼財務・金融相)時代の2009年にさかのぼる。当時、国会は社会保障支出急増に対処するため、消費増税を実施する場合には、所得税と相続税の引き上げを同時に実施しなければならないとの条項を可決した。現在提案されている所得税と相続税引き上げが実現すれば、昨年国会で承認されて来年から施行される見通しの消費税の10%への引き上げの道筋ができる。
 富裕層への増税案は控えめなものだ。2015年から増税が実施されれば、年間2000億円(約23億ドル)の税収が生まれるが、これは40兆円を優に上回る日本の年間赤字規模からみれば大海の一滴にすぎない。しかし政府は、こうした増税は消費増税に対する国民の反感を和らげる効果があると期待している。
 政府当局によれば、最高所得層に対する所得税率は現在の40%から45%に引き上げられる公算が大きい。ちなみに米国の最高税率は最近35%から39.6%に引き上げられている。フランス政府は富裕層の最高税率を45%から75%に引き上げようとしており、俳優のジェラール・ドパルデューさんはこれに反発してロシア国籍を取得しようとして話題を呼んでいる。
 現行の所得税の最高税率は40%で課税所得1800万円(約20万ドル)以上の層を対象としている。これは米国の45万ドルを大きく下回る。連立与党は課税所得数千万円超の層を対象に45%の最高税率を設定する見通しだ。
 また、相続税については、控除額を基本的に5000万円から3000万円(約34万ドル)に引き下げる方針。米国では控除額は一人当たり500万ドルだ。”

所得税の最高税率引き上げについては、WSJの記事の方が
藤沢氏のプロパガンダよりも遥かに信頼できる。

引き上げ幅は日本よりフランスの方が遥かに大幅であろうこと、
あの税嫌いのアメリカですら所得税を引き上げていること。

尚、WSJでは触れられていないが、英国は既に数年前に所得税の税率を50%に引き上げている。
藤沢氏の主張が正しければ英国から富裕層が流出しているはずだが、
言う迄もなくそのような話は一向に聞かれない。

また、北欧の合理主義を体現したスウェーデンは、
イケアの創業者がスイスに出国しても経済成長を続けている。

▽ 日本よりも生産性が3割高い北欧モデルを取り入れることこそ合理的判断





『スウェーデン・パラドックス』(湯元健治/佐藤吉宗,日本経済新聞出版社)


↓ 参考

日本のGDPが16%増える真の成長戦略は「女性雇用増加」- 韓国と同類の不平等さ、中国にすら負ける
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/3e998a613e089a435b2e5bfd8c374dce

日本経済の最大の問題は税制などでは全くなく、
破滅的な人口動態と高齢層バラマキであることは明らかである。
所得税を論じるより資産課税して積極的雇用政策に投入した方が日本経済への寄与が大きい。
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