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橘玲氏がたった1冊を鵜呑みにしてエネルギー問題を語る - 問題は効率と低コスト技術、節電ではない

2013-01-17 | いとすぎの見るこの社会-地球環境を考える
橘玲氏がダイヤモンド・オンラインでエネルギー問題についてのコラムを書いている。
多分ネタ切れなのだろうと思って読んでみると、案の定だった。
この分野に関する知識が限定されている川島博之氏の本を鵜呑みにして書いているため、
半分以上が間違った内容になっている。関係者もぜひ誤りを指摘して欲しいものである。

エネルギー分野は非常に細かく専門分化しているので、
よくよく注意して分析や主張を対比しないと騙される。
(おまけに日本では利権勢力の喧しいプロパガンダも邪魔してくる)

橘玲氏の主張で完全に正しいのは「人口減少で自動的に脱原発可能」という点だけで、
(これは野口悠紀雄氏も既に指摘されている)
他は何らかの誤った内容を含んでいる。

例えばエネルギー効率の問題に全く触れていない。
日本国内のエネルギー効率を向上させれば簡単に兆円単位の燃料輸入が節減でき、
省エネ関連産業の伸長で日本経済の成長にも貢献できるのである。

既にコージェネや風力開発に熱心な欧州国では
エネルギー消費と経済成長のディカップリングが実現している。
正しくは「経済成長のため原子力利権・電力利権を撃滅する必要がある」なのだ。

▽ 設備更新を怠って原子力に傾斜した日本の発電部門は、エネルギー効率が悪い

『国民のためのエネルギー原論』(植田和弘/梶山恵司,日本経済新聞出版社)


 ↓ 参考

太陽電池の国内需要が7割超の急拡大、地方自治体も歓迎 - 国産パネル援護のためメガソーラー排除が必要
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/bb0f58cd3f59e2065d20e60626193817

年間3000万円の売電収入、大和ハウス工業が太陽光発電に本格参入-楽天も太陽電池を大幅値下げで攻勢に
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/8c620a01100f935c6b2a9d60de375996


[橘玲の日々刻々] エネルギー危機はなかった! 報道されない"不都合な真実"(diamond.jp)
http://diamond.jp/articles/-/30377
”エネルギー問題について“常識の嘘”を暴いた川島博之氏の書籍を取り上げたい。エネルギー資源は「無尽蔵」にある
 システム分析を専門とする川島氏は、マクロのデータから世間一般の常識を覆す“コロンブスの卵”的な結論を導き出す。それはとても説得力があって、「なんでこんなことに気がつかなかったんだろう」と不思議に思うほどだ。
 本書の主張は、端的に1行で要約できる。
「人口が減れば、電力消費も下がる」
 日本は2005年前後を境に人口減少社会に移行し、2015年からは世帯数も純減に転ずる(これまでは独居世帯の増加で人口減でも世帯数は増加していた)。その影響を考えれば、30年ほどで原発からの電力供給は必要なくなる。「卒原発」は荒唐無稽でもなんでもない。
 もちろん、「そんなのは机上の計算で、将来、エネルギー資源が枯渇したらどうなるのか?」という批判があるだろう。
 だが全世界の石炭の可採埋蔵量は9000億トンで、世界の石炭消費量は2009年で35億トンだから、それだけでも257年分ある。地質学的埋蔵量はなんと3兆4000億トンで、いまと同じだけ使いつづけてもあと1000年はなくならない。地質学的埋蔵量というのは現在の価格では採掘しても採算がとれない資源のことで、石炭価格が上昇すれば可採埋蔵量に変わるから、石炭資源に関していえば「無尽蔵」と考えていいだろう。
 石油の埋蔵量については諸説あるが、価格が上がれば地質学的埋蔵量が可採埋蔵量に変わるのは同じだ。一般に石油の可採埋蔵量は1兆バレルといわれるが、オイルシェールやオイルサンドに含まれる石油は確認されている分だけで4兆バレルもあり、これはまだまだ増えていく。天然ガスについても、シェールガス革命によって可採埋蔵量が飛躍的に増えており、2035年までにはアメリカがエネルギーの純輸出国になるという試算もある(国際エネルギー機関IEA報告書)。”

これは間違ってはいないのだが、「輸入できるエネルギー」と
「国内でいかにエネルギーを効率的に利用しているか」は全く異なる。

石炭を初め化石燃料を国内で自給する目処が全く立たず、
(メタンハイドレートは実用化に問題があり、恐らく相当の高コストになる)
資源量が豊富な天然ガスは高コストのLNGで輸入せざるを得ない日本の現状を理解していない。

”福島原発事故を受けて自然エネルギーへの転換が叫ばれたが、川島氏は、日本はもともと水力以外の自然エネルギーには適していないという。
 スペインは「太陽光発電の先進国」といわれるが、日本は降雨量が多く、発電効率はスペイン南部の半分しかない(もちろん砂漠の国はもっと有利だ)。デンマークで風力発電が行なわれているのは、強い偏西風の吹く中緯度地方の極地の手前(50~60度)にあるからで、日本はそれより南の20~45度に位置していて、世界的に見て風の強い国ではない
 日本は火山国で地熱発電が有利だといわれるが、候補地の多くが温泉観光地となっており、開発はほぼ不可能だ。アイスランドが地熱発電で成功したのは、北海道よりも大きな国土に32万人しか住んでいないからだ。
〔中略〕
 自然エネルギーへの代替にはもともと実現可能性はなかった。それを象徴するのが、バイオマス発電プロジェクトだ。
 ほとんど知られていないが、日本では過去5年間に6兆5500億円もの巨額の予算が、「下水処理や生ゴミ、間伐材などを燃料や堆肥、素材として再生する」バイオマス研究プロジェクトに投入されている。それを震災前の2011年2月に総務省が政策評価したところ、「見るべき成果は何もなかった」というきわめて厳しい結論が出された。
 役所が他の官庁の事業を全否定するようなことはめったにないが、その実例には目を覆わんばかりの惨状が並んでいる。
 たとえば農水省の「バイオマスタウン構想」。廃材や森林の間伐材などを原料にバイオチップを生産し、これを使って火力発電を行なうというものだが、バイオチップの原料となる丸太の値段は石炭とほぼ同じなのに、重量当たりの熱量が石炭の半分しかない。実用化などできるはずがないことは、始める前からわかっていた。
「休耕田にコメを植え、これをバイオエタノール化して燃料とする」というプロジェクトも行なわれたが、日本のコメは1トンあたり 2000~3000ドルでトウモロコシの10倍もする。バイオエタノールの問題は熱効率が悪いことで、トウモロコシ1トンから石油200リットル分の熱量しか取り出せない。これでは石油よりもはるかに割高で、アメリカでも補助金がなければ成り立たないのに、それを10倍もコストの高いコメでやろうとしたのだ。もっとも研究者は研究費が欲しいだけで、結果などどうでもよかったのだろうが。
 震災後に、太陽光発電や風力発電への転換を求める大合唱が起きたが、そこからバイオマスが巧妙に排除されていたのは、「自然エネルギー利権」にむらがる官僚や研究者、企業にとって触れてはならない汚点だったからだ。
 川島氏が述べるように、すぐれた技術ならなにもしなくても自然に広まる。戦艦の動力は、石炭から石油へわずか15年で転換した。原子力発電が半世紀以上たっても国の援助なしでは成り立たないように、条件に恵まれたごく一部の例外を除いて、日本では自然エネルギーはもともと無理だったのだ。”

地熱発電については概ね正しい。(但し開発余地がないわけではない)
しかし風力に関する指摘は完全な間違いである。
日本でも東北と北海道はスペインと同じ緯度にあり、
偏西風が直上を通過する風力発電の好適地
である。
利権勢力が全力で妨害していなければもっと普及していた筈だ。

 ↓ 参考

電力大手6社、風力発電の買取量を意図的に抑える策動 - 諸悪の根源は原子力利権への固執にある
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/0438d105d3ef64a2fdc8d54db655d597

▽ 風力発電を妨害してきたのは原発を持つ事業者とその利害関係者だった

『総力取材! エネルギーを選ぶ時代は来るのか』(NHK出版)


また、バイオマスに関する説明はかなり間違っている。
バイオ燃料では最も効率の高い砂糖黍に言及されていないだけでなく、
(ブラジルでは安いエタノールで車が走っている)
バイオマスの主力が熱利用であることを理解していない。

 ↓ 参考

木質バイオマス・ボイラーで年間5000万円の費用節減効果! - コージェネで電力供給も可能
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/0d447b2d616b3ed6d539648bf685524e

▽ 欧州では木質バイオマス・コージェネで多くの雇用を生み出している

『日本林業はよみがえる―森林再生のビジネスモデルを描く』(梶山恵司,日本経済新聞出版社)

”環境や人口などの諸条件を考えれば、自然エネルギーにシフトしていくことも難しい。石油や石炭などの化石燃料はとうぶん枯渇しないだろうが、CO2排出量が問題になる。
 だったら、日本のエネルギー問題を解決するために私たちになにができるだろうか?
 川島氏は、これも簡単だという。節電すればいいのだ。
 そもそも日本人は、世界的にみても電力を使いすぎだ。それも、日本の電力消費は工業部門ではなく家庭部門で急速に伸びている。
 工業部門の一人あたりの電力消費量はアメリカやドイツより低いが、家庭部門では、1970年頃にはヨーロッパの先進国より少なかったのに、1990年頃に逆転し、今ではヨーロッパより一人あたりの電力消費量が多くなっている。日本の家庭は電気をムダ使いしているのだ。これはオール電化住宅など、コストの高い(贅沢な)電力を多消費するライフスタイルに変わってきたからだ。
 部門ごとの電力消費量を調べると、住宅(家庭)部門とともに、飛びぬけて増加が目立つのが公共・商業部門だ。これも1970年代にはヨーロッパよりも少なかったものが、80年代から増加しはじめ、いまやヨーロッパを大きく超えてその差はいまも開きつづけている。
 商業部門の電力消費の伸びは、コンビニなどの24時間営業の影響が考えられるが、川島氏はそれよりも商業用の売り場面積の増加に原因があるという。流通業は生き残りを賭けて次々と大規模店舗をつくっているが、売上げが伸びないかわりに電力だけが浪費されているのだ。
 公共サービスの電力消費量が5割ちかく増加しているのも同じ理由で、1990年以降、景気対策として行なわれた公共事業によって、地方を中心に経済発展にはまったく寄与しない不要な公共施設が建設され、それらの「箱物」が照明や空調で電力を消費しているのだ。
 だとしたら、無駄な公共施設を閉鎖するとともに、商業部門や家庭の電力消費量を90年のバブル最盛期並みに戻せばいい。もちろん電力会社の地域独占を見直し、発送電を分離するなど、効率的なエネルギー供給システムもつくらなければならない。
 そのうえで将来の人口減を勘案すれば、京都議定書を達成するばかりか、「実現不可能」といわれた25%削減の鳩山プランも2050年頃には達成できてしまうと川島氏はいう。原子力や自然エネルギーがなくても、エネルギー問題はけっこうかんたんに解決できるのだ。”

そもそも、電力大手の無駄だらけの火力発電の電気を使って冷暖房を行うからこそ
膨大なエネルギーロスが生まれるのである。

重要なのはエネルギー効率の向上であって節電ではない。
快適さを保ってエネルギーコストを減らすことは幾らでもできる。

まず昼間しか使わない施設は太陽光で自家発電を行うことである。
(大規模施設ならガスヒートポンプが低コスト)
夏の電力消費ピークへの対応は太陽光の自家発電がベストである。
発電コストも急速な勢いで下がっている。

より低いコストで効果が出るのはコージェネレーションである。
給湯もしくは暖房の熱を使って発電すれば良いのである。
電力利権勢力を除いては皆に多大な恩恵が及ぶ。

 ↓ 参考

ガス会社が原発を抹殺し、東電を圧倒する日 -「2030年には1000万kW分のコージェネ導入」と宣戦布告
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/416259413bd719c5f3987882f1720897

北海道での大規模停電の混乱は、コージェネで防げた筈だ - 効率的な分散発電で停電に強くなり原発も不要
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/29a9c30b942923ae344cddd752dfc4cb

▽ ガス火力ならコンバインドサイクル、家庭用ならホンダのガスコージェネが経済的

『原発ゼロ社会へ! 新エネルギー論』(広瀬隆,集英社)


また馬鹿らしい節電を行うくらいなら、
省エネを進めて快適な生活を送った方が遥かに賢い。
日本では急激な勢いで省エネの技術開発が進んでいるからだ。

 ↓ 参考

材料コスト40分の1の新型LED開発に成功、シリコン製で明るさ3倍 - 東大の大津教授と川添研究員ら
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/e91c24558a796f9fd82715f62999e3e2

最も安い電気は火力でも原子力でもなく「省エネ」-「発電以上に効率的な選択肢」と
検証委員会
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/71a51460825a3bebb39d56340c41c860

▽ 日本の環境技術は世界最高水準である

『ニッポンの環境エネルギー力 ―IT産業立国からエコ産業立国に大変身を遂げる「日本の底力」』

テクノロジーの進歩が余りにも早過ぎて、5年後、10年後の予測すら難しい程なのである。
ただ劇的にコストの安い太陽電池と燃料電池が開発される可能性が極めて高いのは確かだ。
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