-写真の部屋-

奥野和彦

たまたま

2023-12-15 20:48:16 | 光の籠


訳あって神社を巡っているが
写真を撮らせて貰うお礼にお賽銭をし
頭を垂れているからか
なんか良い写真が撮れる。
寺社仏閣では、誰が撮っても似たような
物になるだろうと、積極的にカメラを向けた事が
無かったが、むしろ自分に向いているのか。
はたまた、歳のせいか感覚が鈍ったか
寺社仏閣で誰もが撮るような写真を良いと
思うようになっているのか。

たまたま今の気分に合っていて
たまたま撮れているのだと思うけれど
柚子やみかんと言い、花手水と言い、
神様のもとに集まる人々の気持ちが
撮らせてくれているのであって
それが神様の力と言えば力だし
ご利益と言えばご利益だし
でも人が形作るから目に見えるのだし
私はたまたま行って、その懐に迎えられて
子供のように両手を広げて
たくさん、受け取ってくるばかりだ。

シダが「ほら、あなたはこの色が好きでしょう、お撮りなさい」
手水が溢れて落ちて溜まって透き通って
「ほら、きれいでしょう、撮りなさい」
そしてまた次のお宮に行けば
手水に満々と花が浮かべられて
「さあいらっしゃい、待ってましたよ」と

手水の鉢からこぼれ落ちた水が
石の敷いてある足元の受けに溜まって澄んでいる。
透き通り過ぎていて、
私にはその水を写すことが出来ない。
一滴、二滴と落ちて、波紋が起きた時に撮れば
と思っても、波紋すら澄み過ぎていて写せない。
少し濁っているぐらいで無いと
俺にはその水は写せ無いんだろうな。


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