ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋

2012-10-30 23:32:50 | あ行

マドンナが監督。
本人は出てません(笑)


「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」71点★★★★


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1998年のニューヨーク。

医師の夫を持つウォーリー(アビー・コーニッシュ)は
誰もがうらやむ“玉の輿婚”をしていたが

実は夫婦関係に悩みを抱えていた。

しかし
周囲にそれを言い出せない。

いっぽう
1936年、イギリス。

離婚歴のあるアメリカ人女性
ウォリス・シンプソン夫人(アンドレア・ライズブロー)は
英国王エドワード8世(ジェームズ・ダーシー)と惹かれあう。

が、エドワード8世は
王室と首相から
「王冠を取るか、愛を取るか」を迫られて・・・

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マドンナが監督した作品。

もっとナニかなアと思ってたんですが
これが予想以上によかった。


感覚的だけど、書きたいものの筋がメチャクチャ通っているという
“男っぽい女らしさ”があって

これはまさに
彼女ならではの特徴であり美点だなあと思いました。


「世紀のロマンス」と言われ
愛のために王位を捨てたエドワード8世は
映画「英国王のスピーチ」主人公の兄としてチョロ出した人物。


その相手の女性ウォリスは
「世紀の悪女」とされているけど

実際、そこんところどうなのよ?彼女が悪いんか?
というフェアな視線で
史実を探りながら描いている。

それだけでなく
現代に生きるもう一人の女性を登場させて

時代を超えた繋がりを持たせるのが
なかな巧い。

状況がわかるまで30分はかかるけど
単なる「自伝」にしない工夫は買えるし

「いつの時代にも弱者になりがちな女性」の存在をアピールし
エールを贈ろうという姿勢がよく伝わってきました。

“音”にこだわりがあるのも
マドンナならではでしょうね。


★11/3(土)から新宿バルト9、TOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」公式サイト
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黄金を抱いて翔べ

2012-10-29 22:09:31 | あ行

さ~すが井筒監督。
映画好きの粋(すい)が詰まってる!


「黄金を抱いて翔べ」74点★★★★

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舞台は大阪。

久々に帰郷した幸田(妻夫木聡)は、
旧友のトラック運転手・北川(浅野忠信)と会う。

北川は幸田に
ある計画を持ちかける。

それは銀行にある240億円の金塊を強奪する計画だった――!

システムエンジニアの野田(桐谷健太)や
謎のジイちゃん(西田敏行)らを仲間に加え、
計画はスタートするが――?!

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井筒和幸監督が
1990年の原作発表以来、惚れ込んでいたという
村薫氏のデビュー作(デビュー作なんだ!知らなかった!)を映画化。


「黄金を狙う泥棒」という古典題材を、
シリアス100%でなく、
普通4、ズッコケ4、シリアス2くらいの
軽妙比率で描いた快作になりました。


超古典な強奪作戦はじめ
「実行されるまでがミソ」な展開といい、
さまざまな名作強盗モノのいいところを踏襲している感じ。


自然な突っ込みやギャグ、
小さなセリフのおもしろさなども
大阪ならではという気がするなア。

暴力描写がキツすぎないのも助かるし

出てくる男たちの顔がみな浅黒く
すすけてる感じだったり
気取ったところ一切無い、ざっくりさがよい。


特に浅野忠信氏のキャラは
いままでにない感じで特筆モノ。

東方神起のチャンミン氏も
バンビ顔ながら
マッスルな体に説得力がありました。

妻夫木氏とチャンミン氏の関係も
ちょっとイイネ(笑)


★11/3から全国で公開。

「黄金を抱いて翔べ」公式サイト
コメント (4)
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北のカナリアたち

2012-10-28 18:41:21 | か行

湊かなえの原作を
読むのをガマンして観ました。

「北のカナリアたち」61点★★★


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現代。

東京で図書館司書として働くはる(吉永小百合)のもとを
刑事が訪ねてくる。

彼らはある青年(森山未來)を探していた。

それは、はるのかつての教え子だった。

はるは20年前、北海道の小さな島で
小学校の先生をしていたのだ。
教え子はわずか6人だけだった。

しかし、ある理由で彼女は島を離れた――。

はるは青年を探すため、
当時の教え子たちに会いに行くが――。

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……う~ん。
期待が高すぎたか、というのが率直なところ。

ある事情で島を追われた先生が
20年後、教え子を訪ね歩き、
さまざまな秘密が少しずつ明らかになる――なんて
超・おもしろそうな設定だもんねえ。


確かに話はいいと思うんですが
この映画で一番のネックになってしまったのは
主演の吉永小百合さんだと思う。

個人的には大好きだし
確かに年齢を超えているし
凄いし、キレイなんだけど

こういう作品で彼女に40歳代をやらせる時点で、
時系列がどうも混乱し
それ自体がミステリーになってしまう。

「いったいこれ、いつの話をしてるんだ?」的なね(苦笑)


さらに小百合オーラが、
男女の生臭さなんかを、キレイに消臭してしまっているので、
事件の根本にあるものが不鮮明な感じ。

つまり、湊ミステリーのドロドロ的なものが
キレイに相殺されてしまっているというか(笑)

ただ阪本順治監督は
そういう映画にはあえてしなかったとも思えます。

花畑を先生と生徒たちが
合唱しながら歩くシーンとか
名画を彷彿とさせるような雰囲気もたくさんあったのも
狙いを感じます。

満島ひかり、宮あおい、小池栄子と
俳優陣もよい選出。

松田龍平氏も
けっこうダークホースでした。


★11/3(土)から全国で公開。

「北のカナリアたち」公式サイト
コメント (5)
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リンカーン/秘密の書

2012-10-27 23:05:17 | ら行

ティム・バートン製作。

主役級のスターが誰も出てない、というところに
気概を感じますね、ハイ。
(まあドミニク・クーパーは主役あったけど・・・笑)


「リンカーン/秘密の書」3D版 46点★★☆


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1800年代のアメリカ。

貧しい開拓農民の家に生まれたリンカーンは
少年時代に、最愛の母を亡くしてしまう。

母親を死に至らしめたのは
地元の名士バーツ(マートン・ソーカス)だった。

母の復讐を誓い成人したリンカーン(ベンジャミン・ウォーカー)は
バーツと対峙する。

しかし、バーツは銃弾を浴びても倒れない!

重症を負ったリンカーンを救ったのは
謎の男ヘンリー(ドミニク・クーパー)。

リンカーンはヘンリーから
驚くべき事実を聞く。

バーツは強大な力を持つヴァンパイアで、
しかもヴァンパイアは全米に暮らしているというのだ――。

「彼らを殺すハンターにならないか」と
ヘンリーに持ちかけられたリンカーンだが――?!

*************************


あのリンカーンが、
ヴァンパイアを相手に戦っていたという
仰天のストーリー。

それを
「ウォンテッド」の監督らしく
斬新な構図とグリグリ&ゴリゴリな映像で
体験型の“3Dアクション”として魅せます。

特に騎乗での戦いは見応えあるし、
アクションを長引かせず、
割りにアッサリけりをつける引き際も退屈せずに済む。

ただ、やっぱり話は
いかんせん、ぶっ飛びすぎかな(笑)

ヴァンパイアとの合戦が
黒人解放、そして南北戦争につながるいう構想――
いや~ぶっ飛んでるよねえ(笑)

まあラストまで破綻することがないのは
なかなかスゴイなとは思うし

中身より、なにより“絵”で楽しむものかと。

リンカーンの時代背景や、
彼が劇場に向かうラストは
「声をかくす人」を観たおかげで
理解できました。

映画って
何が、どこでつながるかわからないのが
やっぱりすごいねえ。


★11/1(木)から全国で公開。

「リンカーン/秘密の書」公式サイト
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危険なメソッド

2012-10-25 23:32:01 | か行

ユングとフロイトの違いが
「ふうん」とわかりました。なーる。

「危険なメソッド」69点★★★☆

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1904年、スイス。

若き精神科医ユング(マイケル・ファスベンダー)は
18歳のザビーナ・シュピールライン(キーラ・ナイトレイ)という患者を担当する。

フロイト(ヴィゴ・モーテンセン)の理論に刺激を受けていたユングは
彼が提唱する“談話療法”を
ザビーナに試すことに。

そして、ザビーナは誰にもさらすことのなかった
心の奥底をユングにさらし、

ユングはそんなザビーナに
特別な感情を抱いていく。

やがて二人は
超えてはいけない一線を越えることになり――?!

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デヴィッド・クローネンバーグ監督の最新作。

ユング、フロイト、そしてユングの患者であり愛人であり、
のちに精神科医となった女性、
ザビーナ・シュピールラインの史実に基づく物語です。

シュピールラインという人は
相当にユングに、そしてフロイトにも
インスピレーションを与えた女性だったらしいんですが

1980年代まで、その存在は葬られていたそう。

なもんで
今回、いろいろ勉強になりました。


パキッとした色調、カリッとした構図、
倒錯する愛や、フロイト役のヴィゴ・モーテンセンの苦みなど

映像トーンはいたって気持ちよく“クローネンバーグ”だけど
キツい描写などはなく、かなり正調といえます。


ザビーナ役のキーラ・ナイトレイが
独白しながら変貌する様子を正面から映すシーンなど
かなり挑戦的でいいし、

質問に直感的に答えることで深層心理を暴くという
「言語連想テスト」のシーンは
すごいおもしろかった。


フロイトの説を「何でも性衝動に結びつける」と
ユングがプンプンするシーンに、
「あー、やっぱり当時からそう思われてた?」とか(笑)

ユダヤ人だったフロイトの葛藤など
「へえ」がいっぱいでした。

フロイトとあの音楽家マーラーの話
「マーラー・君に捧げるアダージョ」
裏付けるようなところがあって、おもしろかった。


ただ中盤までは集中できたんですけど、
フロイトとの決別あたりから失速するのが残念。


20世紀の偉大な心理学者であるユング先生ですが
高尚な研究といいながら
やってることは単なる不倫なわけで(失笑)


結局、自分の良心と倫理にがんじがらめになる様子は
いつの世も変わらない“人間らしさ”であり
悲哀、にも見える。

まあ、それがなかったら
彼はここまでに到達しなかったかもしれないし。

人間って単純なのか
複雑なのか、やっぱりわかんねー(笑)


★10/27(土)から全国で公開。

「危険なメソッド」公式サイト
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