ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

パッション

2013-09-30 12:42:21 | は行

ブライアン・デ・パルマ監督、久々の手応え!


「パッション」72点★★★★


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若くして広告代理店のエグゼクティブにのぼりつめた
クリスティーン(レイチェル・マクアダムス)は

部下のイザベル(ノオミ・ラパス)と
新作スマートフォンのCMを手がけていた。

クリスティーンを尊敬しているイザベルは
彼女の期待に応えようと
あるグッドアイデアを思いつき、クライアントのプレゼンに望む。

成功を確信したイザベルだが、
しかし、思わぬ裏切りが待っていた――。


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いかにも官能サスペンスっぽい宣伝ビジュアルに
正直あまり期待していなかったので(失礼!)
「おおっ?」度が高く、おもしろかったです。

クラシカルなというか、しっかり手応えあるミステリー。


フランス映画「ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて」(10年)のリメイクだそうで
それは未見なんですが

設定を女VS女の闘いに変えたり
ラストにデ・パルマ節を盛り込むなどして
成功していると思います。

なにより
スリラーの動機が恋愛沙汰だとイマイチだったかもしれないけど
職場でのパワーゲームっていうところが
好みだった点。


特にレイチェル・マクアダムスが
こんなに怖ええとは!(笑)


ふんわり巻き毛に愛されファッションで女子力高く、
しかしやり手で

笑顔で相手を懐柔し、操り、おいしいところはいただき
自分に驚異となってくれば全力でツブす(苦笑)

ディフォルメされているけど
ないとは言えない女の出世道の怖いこと!(苦笑)


タイトルは「悪魔のような女」がピッタリだと思うんですが
あ、そうですね、もうありますね(笑)


敵同士の視覚的な対比やベタな音楽など、わかりやすさもよく
そして仕掛けも忘れない。

ただ、終盤
デ・パルマ流になっていくのはいいんですが
あとさらにもう一歩、女のしたたかな頭脳戦が見たかったかな。


★10/4(金)からTOHOシネマズみゆき座ほか全国で公開。

「パッション」公式サイト
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ツウが語る映画この一本 2

2013-09-29 12:02:41 | た行

本ができました~!

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『ツウが語る映画この一本 2』(SCREEN新書)


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『週刊朝日』に連載中の
「ツウの一見」から50作品を選び、加筆&再構成した
通称“ツウ本”第2弾です。

さまざまな分野の専門家が
独自の視点から映画を語ってくださっています。

映画を見ていなくても
「へえ~、作家ってこんなふうにネタを拾うこともあるんだ」とか
「へえ~、あの俳優にこんな一面があるのか・・・」などなど
おもしろネタが満載と思います。

945円(税込み)です。

書店または
ネットでぜひ!


作品名と、ご登場いただいた方々を紹介いたしましょう

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「ファンタスティックMr.FOX」伊藤有壱
「蜂蜜」中村 純
「ニーチェの馬」広川泰士
「ベイビーズ -いのちのちから-」本橋成一
「素敵な相棒 -フランクじいさんとロボットヘルパー」古田貴之

「ピュ~ぴる」橋口亮輔
「サルトルとボーヴォワール 哲学と愛」ドラ・トーザン
「危険なメソッド」鏡リュウジ
「ジュリエットからの手紙」鴻上尚史
「ゲーテの恋」松永美穂

「テイク・シェルター」樺沢紫苑
「マーサ、あるいはマーシー・メイ」島薗 進
「ルルドの泉で」諏訪敦彦
「レッド・ライト」石川幹人
「白いリボン」池内 紀
「ブリューゲルの動く絵」三潴末雄
「偽りなき者」斎藤 環

「ゲット・ラウド ジ・エッジ、ジミー・ペイジ、ジャック・ホワイト×ライフ×ギター」野口広之
「ピアノマニア」岸ミツアキ
「ジョン・レノン,ニューヨーク」森川欣信
「情熱のピアニズム」菊地成孔
「25年目の弦楽四重奏」岩田ななえ
「最後のマイ・ウェイ」小松成美

「アリス・クリードの失踪」有栖川有栖
「サヴァイビング ライフ -夢は第二の人生-」ケラリーノ・サンドロヴィッチ
「宇宙人ポール」花くまゆうさく
「チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~」山崎ナオコーラ
「ハハハ」柴崎友香
「青い塩」なかむらるみ

「眠れぬ夜の仕事図鑑」谷崎テトラ
「キリマンジャロの雪」湯浅 誠
「スーパー・チューズデー~正義を売った日~」越智道雄
「アンダー・コントロール」三島憲一
「いのちの子ども」山路 徹
「故郷よ」管啓次郎
「コンプライアンス-服従の心理-」辻 泉

「イラン式料理本」ショーレ・ゴルパリアン
「二郎は鮨の夢を見る」柴田光滋
「天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”」福岡伸一
「エル・ブリの秘密 世界一予約の取れないレストラン」金丸弘美
「ル・コルビュジエの家」小池一子
「明りを灯す人」小長谷有紀
「スタンリーのお弁当箱」阿部 了

「星の旅人たち」黛まどか
「戦火のナージャ」野上照代
「WINWINダメ男とダメ少年の最高の日々」菅原哲男
「カンパニー・メン」堀田佳男
「少年と自転車」石井小夜子
「東ベルリンから来た女」サッシャ
「ヒッチコック」手塚 眞

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どうぞ、よろしく!
コメント (2)
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タンゴ・リブレ 君を想う

2013-09-28 11:51:35 | た行

タンゴを知ってる方は
「おおっ」と思うのかも。


「タンゴ・リブレ 君を想う」58点★★★


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刑務所の看守J.C.(フランソワ・ダミアン)は
マジメで几帳面な独身中年男。
趣味は週に一度、タンゴ教室に通うことだ。

そんなある日、
教室にアリス(アンヌ・パウリスヴィック)がやってくる。

彼女に惹かれるJ.C.。

しかし、彼は刑務所の面会室で
彼女と再会することになる。

アリスには刑務所に夫と愛人がいたのだった――。

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タンゴの持つパッションが
寡黙な中年看守の人生を変えていく話。

といっても
タンゴのレッスンシーンがそんなにあるわけではなく、
一人の女性をめぐる男たちの物語。

刑務所のなかで
アルゼンチン出身の受刑者が
黙って、男同士で、熱いタンゴを踊り出すシーンには
「おおっ」と思ったんですが


ほかはちょっといまひとつ。


全体的に
味のある役者たちにすべて背負わせているだけで
(“もみあげ”俳優セルジ・ロペスとかね)
映画的な組み立てや余韻のおもしろみがないんですよね。


舞台がどこの町だかまったく不明だけど
ヒロインの愛人と夫が共犯者で
同じ監房にいるとか(そういう雑なことするものなの?苦笑)

破れかぶれのように転がっていくラストといい
なんとも言いがたい作品でした(苦笑)

タンゴを披露する受刑者役の男性は
アルゼンチンタンゴ界のカリスマダンサーだそうで
(その相方役も、やはり有名ダンサー)
知る人が見れば、より「おおっ」度が増すと思います。


★9/28(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開。

「タンゴ・リブレ 君を想う」公式サイト
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椿姫ができるまで

2013-09-27 21:08:53 | た行

オペラができるまでを追った
舞台裏ドキュメンタリーです。


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「椿姫ができるまで」68点★★★☆


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オペラ無知なワシですが
さすがに曲は聴いたことあるものばかり。

それに
演出家・シヴァディエ氏の演出はとても現代的で

衣装も舞台装置も含め、けっこう予想を裏切って
コンテンポラリーダンスのような印象があり

「へえ、この舞台、おもしろそう!」と思った。

ドキュメンタリーは
ほとんどがシュバディエ氏と
歌姫ナタリー・デセイのリハーサルシーンで

トム・ハンクス似(と思うんだけど。笑)のシヴァディエ氏は
自らが俳優でもあり
かなーりねちこく、俳優に表現を追求する彼の演技指導に

デセイが懸命に、ときに舌を出しつつ(笑)応え、
“芸術”が最終型になっていく。

その過程には、やはり見応えがありました。

さらに
改めて思ったのは
“自分が楽器”である歌い手たちの素晴らしさ。

合唱団の人々(特に男性チーム)は
リハーサルで、みな私服はポロシャツに短パンの
そこらにいるオヤジたちなのに(失礼!)

その歌声の素晴らしさといったらない!

ただ
シュバディエ氏の指導シーンが長くて退屈してしまうのと
本番の映像がないこと(それも演出だと思いますが)

さらに、もっと様々な裏方の様子も見たかった、ので
この点数です。


★9/28(土)からシアターイメージフォーラムほか全国で公開。

「椿姫ができるまで」公式サイト
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地獄でなぜ悪い

2013-09-25 23:36:41 | さ行

祝!トロント映画祭観客賞受賞!


「地獄でなぜ悪い」65点★★★☆


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ヤクザの組長・武藤(國村隼)は
獄中にいる妻(友近)の夢を叶えるため
娘ミツコ(二階堂ふみ)を主演に映画を制作していた。

が、撮影中にミツコは
男と失踪してしまう。

一方、
少年時代から映画監督を夢見ている
映画狂の平田(長谷川博巳)は

「一世一代の映画を撮れるならば、命を捧げてもいい」と
映画の神様に願い続けていた。

そんなヤクザと映画狂の運命が
あるところで交わることに――?!

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園子温監督の新作。

ヤクザの血みどろ抗争と、映画狂の若者たちをごちゃ混ぜにした
すちゃらかバイオレンスコメディ(ワシ命名。笑)

「うーん、バイオレンスはちょっと……」という方でも
「ん?意外にイケるかも?」と思えるのは

まず
「冷たい熱帯魚」的なド黒ではなく、
とにかく初っぱなからテンポよく、笑いがあるところ。

そして「桐島」のように、映画に情熱をかける若者を登場させ、
“映画愛”が大きなテーマにかぶってるところですね。

当然、腕も飛ぶは血も飛ぶは、の
切った張ったシーンもあるんですがどこか笑えたり(笑)

とりわけ素晴らしいのが
ヤクザの娘役の二階堂ふみさん。

立ち回りも見目麗しく、
「キックアス」のクロエ・グレース・モレッツちゃんか
「キル・ビル」か、という
パンチある、印象的な破壊キャラを演じてます。

しかし。

いかんせん
本筋にたどり着くまでが長すぎる!(失笑)こともあり

すみません、この点数です。


★9/28(土)から新宿バルト9ほか全国で公開。

「地獄でなぜ悪い」公式サイト
コメント (2)
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