ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ノーマ、世界を変える料理

2016-04-28 23:56:31 | な行

最近、映画の公開数も増え、
より注目されてる北欧。

なかでも、この「ノーマ」は
北欧ツウも含め、誰もが話題にしていました。


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「ノーマ、世界を変える料理」72点★★★★


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デンマーク出身の
カリスマシェフ、レネ・レゼビ氏(38歳)の
ドキュメンタリーです。

彼はかの「エル・ブリ」出身で
デンマークだけでなく北欧料理に革命をもたらした
すごい人。


彼のレストラン「ノーマ」は
「世界ベストレストラン50」の第1位に4回も輝いてる。
昨年は日本で1ヶ月だけ「ノーマ東京」をオープンして
大人気となったそうです。


しかし、そんな頂点の影には事件もあった。

フランス出身のピエール・デュシャン監督は
4年間、レネ氏に密着し
「いったい、何がそんなにカリスマなのか?」を
探っていきます。


その映像は見栄え良く、
スタイリッシュでカッコいい。

料理の一皿を
アーティスティックに切り取るテクも素敵ですが

かつ
ちゃんと「美味しそう」なのが
大事なポイントです。


レネ氏の料理は
蟻(アリンコね)がのっていたり(!)
血を発酵させたものだったり(!)
相当変わっていて

盛り付けもアッ!と驚かせるものなんですが、

エル・ブリのように人工的なイメージがなく
有機的で
「食べ物」を感じさせる。

北欧の豊かな森の恵みや、海の恵みが伝わってくるので
カッコだけじゃなくて、
ちゃんと味覚に訴えてくるんですね。


料理ドキュメンタリーでは
その味を、映像から想像するしかないので
これはとても大切なことだと思います。


さらに、
そんなカリスマシェフ・レネ氏が
マケドニア(旧ユーゴスラビア)からデンマークに渡った
イスラム系移民であること、
それによってどれだけの差別を受けたか・・・など
その出自もしっかり語られる。

さらに、世界一のレストランから
陥落した顛末なども盛り込まれ、

想像よりドラマが詰まっていて
おもしろかったです。

さまざまな苦難を乗り越えてきた
レネ氏が言う
「うまくいかないときでも
嵐はいずれ過ぎ去る。必ず何とかなる」が胸にしみました。

少し勇気もらえたかな。

ちなみに。

おなじみ「週刊朝日」ツウの一見で
レネ氏とも親しいコラムニスト中村孝則さんに
取材をさせていただきまして

最も気になった
アリンコを使う料理の意味を聞いたのですが

蟻には独特の酸味があり、
最初に使ったのは、おそらく
ブラジルのアレックス・アタラというシェフだそう。

彼のアマゾンの蟻を使った料理は
レモングラスの風味がぶわっ!とするほどだったそう。
また「環境」を考えさせる
メッセージ性もあるのでは、とのことでした。

なーる。謎が解けた~


★4/29(金)から新宿シネマカリテほか全国順次公開。

「ノーマ、世界を変える料理」公式サイト


さらにちなみに。

2006年から、10年にわたって連載してきた
『週刊朝日』「ツウの一見」ですが4/29号を持ちまして
終了することになりました。

映画を各界の専門家や
その道の“ツウ”の視点で語っていただく試みは
ワシのライフワークともなっていたので
終了は残念ではありますが

今後も
「映画を切り口に、社会を探る」をテーマに掲げ、
がんばっていきたいと思っております。

どうぞよろしくお願いいたします!

『週刊朝日』の映画欄では発売中の5/6-13号から
「今週のもう1本」という小コラムを書かせていただいております。
ご参考になれば幸いです。
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追憶の森

2016-04-27 23:58:39 | た行


ガス・ヴァン・サントも
けっこうカメレオン監督。

“繊細さ”は
共通もしてるけどね。


「追憶の森」60点★★★☆


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大学で物理を教える
非常勤講師アーサー(マシュー・マコノヒー)は
アメリカから日本にやってきた。

彼が向かったのは
富士山のふもとに広がる青木ヶ原の樹海。

自殺の名所として知られるこの場所に
なぜ、彼はやってきたのか・・・?!


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日本の樹海に死に場所を求めてやってきた
アメリカ人(マシュー・マコノヒー)が
鬱蒼とした森のなかで
同じような立場の日本人(渡辺謙)に出会い、

ともに樹海をさまよう・・・という展開。


ざっとしたあらすじから想像するものを
まったく裏切らないけど

その分、
想定を超えてもこないのが残念。


なぜ、わざわざアメリカから樹海に?!と思うけど
ネットでは有名な「死に場所」らしいですね。

マシュー・マコノヒーと日本、という
結びつきは嬉しくもあるし
(いや、実際に樹海には入ってないだろうけど)
渡辺謙さんとの絡みも嬉しいし、

森のなかの光りの淡さ、美しさ、人の心の繊細さに
ガス・ヴァン・サント印を感じもします。


でもやっぱり
おっさん二人が樹海をさまよい、
その合間に、マコノヒーが
「なぜ死のうと思ったか」を回想するシーンが挟まる、という構成は
あまりに定石すぎるというか。

うまくいかなかった夫婦生活、そして
失ってから大切なものに気づくオレ!――というのは、もう、ねえ。
(遅いっつの!笑)

ただ、マコノヒーと妻役ナオミ・ワッツの
冷えた夫婦のトゲトゲした会話や
ささくれ立つ気持ちを抑えられずに
相手にケンカをふっかけてしまう様子などは

どんなカップルでも
多少は「覚えあり」なものだと思う。

とにかく嫌になるほど、そこがリアルでした。


★4/29(金)から全国で公開。

「追憶の森」公式サイト
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シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ

2016-04-26 23:46:46 | さ行

見たてホヤホヤ。
おもしろかったっす。


「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」73点★★★★


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人類の平和を守るため戦うヒーロー軍団
<アベンジャーズ>。

国境も越え、世界の人々を救ってきた彼らだが
超人的パワーによる戦いのために
多くの人が犠牲にもなっていた。

そんななか、アベンジャーズを
国際的な政府組織の監視下に置くべきだ、との声があがる。

アイアンマンことスターク(ロバート・ダウニー Jr.)は
賛成するが

「戦う相手は、自分が責任を持って決める」という
キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)は
その信念を曲げようとしない。

そんなとき、二人を分つ
ある事件が起こり――?!


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キャプテン・アメリカVSアイアンマン?
スーパーヒーロー軍団が、二分して対戦?

マンガかよ!(マンガだけどさ。笑)と思う展開だけど
いやあ、おもしろかったす。←単純。

ダダダダダッと戦ってばかりでなく
(最近、これが眠くなってしまう原因。苦笑)

なぜ、アベンジャーズが二分するのかを
ちゃんと描いているから
無理なくストーリーを追える。

もし自分でチーム分けしたらどうなるだろう?とか
考えるのも楽しいんですが(笑)
この脚本には「なるほど、こう分けるか」と納得。

さらに
「いざバトル!」となったとき
「味方同士だから・・・」と手加減してもつまらないけど
あまりにシリアスでも「え?ちょっと・・・」となってしまいますよねえ。

そんな微妙な加減が、うまいんですよ。

特に
両チームがリクルート合戦をして
自分のチームに新ヒーローを加入させるくだりには
笑っちゃいました。


やっぱりスターク(ロバート・ダウニー Jr.)のキャラ立つ
「アイアンマン」シリーズは
ハズレないけど

キャプアメ(クリス・エヴァンス)も
優等生キャラから、より立ってきて、いい感じ。


ただ、クライマックスの展開は
予想と違いましたねー。

ひねりあるなとも思うけど
もしかしたら先行した「バットマンVSスーパーマン」の展開に
影響されたのかなあとか思っちゃいました。


★4/29(金)から全国で公開。

「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」公式サイト
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フィフス・ウェイヴ

2016-04-21 23:58:26 | は行

ディザスター映画なので
公開延期になるかな?と一瞬思ったのですが
なさそうですね。


「フィフス・ウェイヴ」61点★★★☆


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アメリカ、オハイオ州。

女子高校生キャシー(クロエ・グレース・モレッツ)のありふれた日常は
ある日を境に変わった。

突如、巨大な飛行物体が上空に現れたのだ。

人々はそれを<アザーズ>と名付けるが
アザーズは攻撃を仕掛けてくるわけでなく
ただ浮かんでいるだけ。

しかしその静寂は
「第一波」の始まりに過ぎなかった――。


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「アリス・クリードの失踪」(09年)が非常におもしろかった
J・ブレイクソン監督の作品。

しかし
SFとしては久々の「うへ?」パターンなのですが
あまり怒る気にはなりません。


クロエ・グレース・モレッツちゃんは
期待どおりかわいいし(笑)

地球滅亡ディザスターかと思いきや
“青春ラブ・ムービー”だったと。

いや
両者がバトルして、ラブモードが勝った……という感じ?(笑)


ごく普通のハイスクールライフを送っていた
主人公たちの上空に
巨大な宇宙船が、いきなり現れる。

まんま漫画「デッドデッドデーモンズ~」な状況に驚きますが

そこからも
わかりやすく攻撃されるとかでなく

敵は
第一波、第二波、と、段階を追って
人類を「駆逐」しようとしてるらしいんです。

日常の延長にありそうな
自然災害や、ウィルスなどが、その攻撃に使われ
さらに
第四波では「疑心暗鬼」という人間心理を突いてくる。

そして、第五波は・・・?という展開。

どこか日常と地続きな点も、とっかかりも
おもしろいと思います。


ただ問題は
最初は地球規模のデカいスケールだったはずの話が
だんだん「オハイオ州のいち軍隊」規模に
小さくなっていってしまうところ(苦笑)。

せっかく
リーヴ・シュレイバーも出てるのに(苦笑)


最近、こうした作品でド派手な失速は珍しいので
まあ「昔はこういう感じ、ときどきあったよな」とか
若干微笑ましく思ったりもして

けっこうVFXしっかりして、サバイバルも学べる
青春映画として見るとよいかと。


★4/23(土)から全国で公開。

「フィスフ・ウェイヴ」公式サイト
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緑はよみがえる

2016-04-20 23:42:16 | ま行

「木靴の樹」エルマンノ・オルミ監督(84歳)の最新作!


「緑はよみがえる」74点★★★★


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1917年、冬。
第一次大戦下のイタリア北部。

雪に囲まれた高原で
イタリア軍と、敵対するオーストリア軍は
膠着状態にあった。

塹壕から一歩出れば、狙撃兵に打たれる状況のなかで
イタリア軍の兵士たちは寒さと飢え、病気に苦しめられている。


だが状況を知らない司令部から
「外に出て、通信ケーブルを引け」という
非情な命令が届き――。


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まずオープニングの
モノクロームのシーンがハッとするほど美しい。

ロウソクに照らされるそのシーンだけで
写真集が作れそうなくらい。

しかも写っているのは
ブリキの缶やカップなど
なんでもない、貧しいものなのに。


そして、やがてそのシーンが
この映画の舞台となる、1917年、
イタリアの高原の塹壕だとわかる。

そう、この映画は塹壕で過ごす兵士たちの
たった一晩を描いたものなのです。

しかも
オルミ監督の父が従軍した第一次大戦の経験に
基づいているそうなんです。


冒頭のモノクロームの世界は
本編に入るとカラーになるんですが
雪と月明かりに照らされた風景は、ほとんど全編モノクロームのようで
悲惨だけど、冷たく美しい。


しかし実際は
外に顔を出しただけで、すぐさま狙撃されるような状況。

しかも塹壕のなかの兵士たちは
理不尽な司令部からの命令で退くことも許されない。

そのなかで、兵士たちは何を思ったのか?
どんな状況だったのか?

監督は我々を
その塹壕なかへと連れていくんです。

そこは
寒さと、絶望と、死しかない世界。


でもそのなかで
兵士たちのまだ消えない“生”の息づかいが、胸に迫る。

特に
兵士たちがベッドの枠を走るネズミや
塹壕の窓から見える木やキツネに送る視線に

わずかな生の証や、安らぎを見出そうとする思いを感じて
切なくなりました。

84歳のオルミ監督が父から聞いた話を
ほぼ100年を経て、いま、映像化したということ。
そこに大きな意味があると思うのです。


★4/23(土)から岩波ホールほか全国順次公開。

「緑はよみがえる」公式サイト
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