ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ココ・シャネル 時代と闘った女

2021-07-24 01:53:23 | か行

シャネルの伝記映画は

けっこう観てきた気がするけど

知らなかったことが明らかにされてたなー。

 

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「ココ・シャネル 時代と闘った女」71点★★★★

 

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言わずと知れた、ココ・シャネルの人生を

新たな事実ともに描くドキュメンタリーです。

55分とコンパクトなのですが

これが思った以上に、見応えアリ。

 

いままで3本ほどシャネルの伝記映画を観た気がするのですが

(シャーリー・マクレーンがシャネルを演じた

「ココ・シャネル」(08年)

そして

「ココ・アヴァン・シャネル」(09年)

「シャネル&ストラヴィンスキー」(10年)

かな)

 

しかし、この映画では

知らなかったことがかなり明らかにされていたと思う。

 

というのも、本作は

これまでの伝記映画や物語を一新する

「沈黙の謎が確証をもって、暴かれた」

2011年以後の彼女への研究を経て、描かれたものだそう(プレス資料より)

なるほど、たしかに、これまでのはみんな2011年前の映画だわ・・・。

 

その「知られざる~」な部分もポイントですが

映画のつくりも

ドキュメンタリーの定番たる

関係者の顔出しのインタビューの羅列ではなく

 

様々な過去映像や映画のシーンを

リズミカルに紡いでゆくスタイルで

退屈させず、いい。

 

 

1883年にフランス南西部に生まれた彼女が

孤児→修道院、としていた経歴も「?」だったり

 

シャネルを築き上げた彼女の鋭角的なデザインセンスが

修道院の建物に影響されていたりとか

そして

あのシャネルのロゴマークにも、

修道院にモチーフがあったとかわかり

いろいろびっくりします。

 

それに

気性の激しい人であったことは

これまでの映画でも描かれていたけれど

パーティでライバルのデザイナーをダンスに誘い

彼女のドレスをロウソクの火に近づけて燃やした――とか

どんだけ?!な驚きが(苦笑)

 

そして「戦争」も、今回の大きなテーマ。

1940年、すでにブランドを築き上げていた57歳の彼女が

第二次大戦をどう生き延びたのか。

そこには今まで知られざる10年の沈黙があった――という部分が

本作の目玉ですね。

 

なにより

「過去の人」とされつつあった71歳で

あのシャネルスーツを生み出したのか――!とあらためて知り

恐れ入りました。

 

ココ・シャネルといえば

その強く凜としたキャラで

破天荒ながら「窮屈なドレスから女性を解放した旗手、女性の味方」

というイメージだったのですが

 

実は1930年代、お針子女性たちによる

「労働改善」の要求ストに激怒して

全員を解雇した、とか

 

人種や階級への差別意識を隠そうともしないキャラだった、とかが証言されて

やや複雑な気分に。

 

それでも彼女が紛れもなく

ファッション界の偉人であり

女性の立ち位置に大きな影響を与えた先駆者であることに、かわりない。

 

しかし、どんなに名声や財産を手に入れても

彼女は、満足しなかった、ということも

よくわかった。

 

何かを渇望し、仕事をし続けた。

 

その原動力は、どこにあったのだろう。

 

それはやっぱり「怒り」だったのかなと

思ったりするのでした。

 

★7/23(金・祝日)からBunkamura ル・シネマほか全国順次公開。

「ココ・シャネル 時代と闘った女」公式サイト

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17歳の瞳に映る世界

2021-07-23 17:10:35 | さ行

ぜひ若い世代に伝えたい映画。

 

「17歳の瞳に映る世界」76点★★★★

 

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ニューヨークのすぐ下にある

ペンシルベニア州。

 

なんだか時が止まったような風情の小さな町で

17歳のオータム(シドニー・フラニガン)は

母と義父と、年の離れた妹と暮らしている。

 

地元のスーパーでレジ打ちのバイトをし

セクハラされながらも

「世の中なんて、こんなものよ」と

どこか割り切ってる。

 

が、オータムは最近、体の不調を感じていた。

 

地元のウィメンズクリニックで

まさか、と試した妊娠検査薬の

結果は陽性――。

 

悩んだオータムは

仲良しのいとこ、スカイラー(タリア・ライダー)に

状況を打ち明ける。

 

そして早朝、二人は

ある決断をするために

NYへと向かうのだが――?!

 

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「ティーンの予期せぬ妊娠」という

題材は、そう珍しくないかもしれない。

 

でも、この映画はすごく新しく

かつ「いま」だと思いました。

淡々と、どこかドキュメンタリーのようで

リアルな17歳のヒロインに、多くの女性の思いが重なるような。

 

といっても「現代の話」って

最初はわかんなかったんですよ(苦笑)

 

冒頭、

ヒロインのオータム(シドニー・フラニガン)が

高校の文化祭で歌ってる。

そこに男子生徒がヤジを飛ばしてくる。

 

カントリーチックな人々の服装、ファミレスや町の風景、

なにより男たちのマチズモ感に

1980年代くらいが舞台なんだと思って観てた。

 

しばらくしてメルアド、と会話があり、

Google検索してるし、あ、スマホが出てきた!で

ようやく、いまの話だってわかった。

 

このタイムスリップ感は、多分に意図的だと思う。

 

ニューヨークまで長距離バスで数時間、という場所なのに

この時の止まった感はなに?

いや、これが現実で

#MeTooやTime's Upにほど遠いアメリカが

まだまだたくさんあるんだ、と痛感させられました。

 

日本だって、同じだよね。

 

で、そんな世界で

17歳のオータムが予期せぬ妊娠をする。

 

このオータム、なかなか地に足ついた感じのキャラで

決して愛想がいいわけじゃないけど

そこそこしっかりしてて(歌もうまい!)

すごく魅力的。

 

でも妊娠のことは、親にも言えないし

しかもペンシルベニア州では「未成年の中絶には親の同意が必要」。

そこで

彼女はいとこに相談し、

二人でニューヨークに行くことにするんです。

 

オータムが経験する、こうしたことすべてが

女性が被る理不尽や不利益の象徴であり

彼女が被る心の傷も、身体的な傷も重い。

 

重いけど

彼女は自分で行動し、自分で決断する。

 

その一歩一歩が、力強く

こちらも力をもらえる。

 

それにそこには女性たちからのヘルプがたしかにある。

いとこのスカイラーとのシスターフッドをはじめ、

地元のウィメンズクリニックの様子や

NYの医師やカウンセラーたちのサポートなどなど。

 

「こういうときに、こういうヘルプがあるよ」

同じ思いをするかもしれないティーンに向けての

メッセージが多分に含まれていると感じました。

 

エリザ・ヒットマン監督は

2012年、中絶が違法なアイルランドで

体調を崩した女性が中絶手術を受けられずに

亡くなった事件をきっかけに、本作を生み出したのだそう。

込められた想いが、よく伝わってきました。

※ちなみにその後、国民投票の結果

2018年にアイルランドでは妊娠24週までの中絶は認められているそうです(映画プレスより)

 

★7/16(金)からTOHOシネマズ シャンテほかで公開中。

「17歳の瞳に映る世界」公式サイト

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プロミシング・ヤング・ウーマン

2021-07-22 14:46:42 | は行

ひとつの正義のしめし方。

応援する!

 

「プロミシング・ヤング・ウーマン」74点★★★★

 

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真夜中のクラブ。

酔っ払った男たちの目が

ソファーでだらしなく酔い潰れる

キャシー(キャリー・マリガン)に注がれていた。

 

「お前、いってこいよ」

一人の男性がタクシーで、キャシーを送り届けることに。

彼はフラフラに酔っているキャシーを自宅に連れ込み、

ベッドに押し倒す。

が、そのとき

キャシーがカッと目を見開いた――!

 

キャシーは実家暮らしの29歳。

昼間はカフェでだるーく働く彼女は

夜な夜なバーに出かけては

「酔った女には何をしても許される」と思っている男たちに

鉄槌を下していた。

 

なぜ、彼女はそんなことをしているのか?

そして、

物語は意外な方向へ――?!

 

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キャリー・マリガン主演、マーゴット・ロビーが製作、

女優でもあるエメラルド・フェネルの

長編監督デビュー作。

 

女性たちのパワーが集結した快作です。

 

ピンク色のファンシーと

過激っぽくみえる印象で、ピンとこない方もいるかもと思うけど

これは、意外に意外なことになるので

ぜひ観ていただきたいなぁ。

 

ひとつの正義のしめし方、手痛いお仕置きって感じなのです。

 

ネタバレはしないように

ちょっと内容を説明してみる。

 

主人公キャシー(キャリー・マリガン)は

夜な夜なバーで酔ったフリして、わざわざ「お持ち帰り」され

そこで彼らに鉄槌を下す、ということをしている。

 

何の目的で?は、この時点ではよくわからず

加えて、普段の彼女は

カフェで働きつつも

すべてにダル~くて、つまらなそうで

あまり感情移入できないんですよね。

 

やっていることも、かなりモラルすれすれ(笑)

 

でも、だんだん彼女が

なぜそんなふうになったか、が明かされていく。

 

彼女は7年前、医大に通う

有望な若い女性(=プロミシング・ヤング・ウーマン)だったんですね。

しかし、ある事件がきっかけで大学を辞めてしまった。

 

夜な夜なの危険なミッションも

そのへんに理由があるのかな、と明かされていく。

 

しかし、このへんは、まだまだ一層め。

この話の地層は、まだまだ10はあります(笑)

 

そんなある日、キャシーはカフェにやってきた

大学時代の知り合い・ライアン(ボー・バーナム)と再会するんです。

 

ぜーんぜん興味なかった男だけど

意外に「いいヤツ」っぽく

ここで映画はなんだかロマンチックラブストーリーの方向に転調していく。

世の中、ロクな男いないと思ってたけど

意外に、当たりもあるかも?

 

そして、ライアンとの再会で

キャシーはある行動を始める――のですが

いやいや、ここからもまだまだ、話は転がっていく。

 

「ほ~ら、”女だてら”にやりすぎるから・・・・・・」なんて思わせて

そこもまた罠だったり。

 

逆回転していくとパーツがピタリとハマる

オリジナルな構成がうまく

アカデミー賞脚本賞受賞も納得です。

 

それに物語は、過激に、映画的にしてあるけれど

いや、日本を見回しても

この話はリアルに多く、ニュースにもなっている。

 

すねに傷ある男ども、

それを「見ていただけ」の男たち

さらに

そんな男性社会に同調してきた女たちに対しても

居心地悪さを味わいやがれ!という強烈な挑戦状。

 

そして

「もうこんなことは許さない!」という

若い女性たちへの約束、という思いが

映画に込められていると感じた。

 

キャリー・マリガンが

この役を引き受けたってのも

理解できるなあと、思うのでした。

 

★7/16(金)からTOHOシネマズ日比谷、シネクイントほかで公開中。

「プロミシング・ヤング・ウーマン」公式サイト

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ライトハウス

2021-07-12 02:23:48 | ら行

ロバート・パティンソン×ウィレム・デフォーの

演技バトルが最高!

 

「ライトハウス」72点★★★★

 

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1890年代。

ニューイングランドの孤島に

二人の灯台守が赴任してくる。

 

長年、この仕事をしてきた

クセのある先輩トーマス(ウィレム・デフォー)と

今回が初めての若者イーフレイム(ロバート・パティンソン)。

 

孤島に二人っきりなのにも関わらず

そりが合わない二人は 

険悪なムード。

 

さらに嵐がやってきて

二人は完全に島に取り残され、孤立してしまう――。

 

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A24製作のスリラー。

 

サイレント映画やヒッチコックなど

さまざまな古典の匂いをまといつつも

斬新で

 

おっ!と驚かされました。

 

1983年生まれ、「ウィッチ」(15年)で評価された

ロバート・エガース監督は

1801年に実際に起きた事件にインスパイアされて

本作を創り上げたそう。

 

 

イギリスの孤島に赴任してきた二人の灯台守。

年かさで、ちょっとヤバい感じのウィレム・デフォーと

若いのにワケありっぽい

ロバート・パティンソン。

 

ただでさえ閉塞感ある状況に加え、

二人が全然歩み寄らず、不仲だという(失笑)

もうピリピリするなあ!!

 

 

で、さらに大嵐のために

島が完全に孤立してしまい

さらに極限状態に陥っていくんですね。

 

閉じ込められた二人の運命やいかに?!

 

モノクロームでコントラストのある映像は

ひどく陰鬱で、しかし美しく

 

常に不気味に鳴り響く「ボー、ボー」の音が

海鳴りなのか、警告音か、

終始、神経を逆なでしてくる。

 

そんななかで、次第に精神的に追い詰められていく二人。

現実なのか?幻覚なのか?

 

そんな「際(きわ)」が怖ろしい。

 

ウィレム・デフォーのヤバく深い演技は

「永遠の門 ゴッホの見た未来」(19年)でも十二分に味わっていましたが

ロバート・パティンソンの旨みは

「TENET テネット」(20年)後で、より確かになった感じ。

 

その二人の極限ギリギリな演技合戦が最高で

モノクロームの世界に白い火花が散るような

感覚を味わいました。

 

いやいや

ホラージャンルって

ホントに映画界に「新しい」ものをくれるから

目が離せないんだよね・・・怖いんだけどね・・

いや、これはそんなに「ギャー!!」って系じゃないんだけどね・・・

 

★7/8(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「ライトハウス」公式サイト

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83歳のやさしいスパイ

2021-07-10 00:49:44 | は行

リアル映像に

スパイ映画の音楽かぶせるのやめてくれ!(爆笑)

 

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「83歳のやさしいスパイ」79点★★★★

 

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いや~最高です。

笑って泣いたドキュメンタリー。

というか、開始10分ほどはフィクション劇だと思って観てた(笑)

それほどにオモシロイ設定なんですよ。

 

舞台はチリ。

ある面接会場に「80歳〜90歳の老人募集」という新聞の求人告知をみて

応募してきた男性たちが集まっている。

 

募集主は、探偵事務所。

彼らは

「うちのおばあちゃん、ちゃんとケアされてる?」という依頼主のため

ホームに潜入し、調査をしてくれる人材を探しているんですね。

 

で、本作の主人公

セルヒオ(83歳)が合格。

 

スマホやペン型カメラの使い方を覚えて、

いざスパイとしてホームに潜入――!?

って、フィクションみたいでしょ?

 

しかしホントにドキュメンタリーで

しかも、監督自身が探偵事務所でバイトしていたときに

こういう調査依頼が実際に多くあったことから、着想したんだそう。

 

 

で、本作の主人公セルヒオは

妻に先立たれ、新たな生きがいを探していたところ

この広告を見て応募してきた。

 

品よく、優しく、

なかなかのジェントルマン。

 

スマホやメールの使用法の特訓を受け、クリアするも

でも、その手つきはやっぱりおぼつかなくて

かなりハラハラさせられる。

 

で、そんな彼が

いよいよターゲットのいるホームに潜入・・・・・・ってところで

スパイ映画の音楽かぶせるのやめてくれ(笑)

 

ツボを心得た演出がたまらん(笑)

 

で、潜入したセルヒオはターゲット女性の様子を探る――はずなのですが

「あの紳士はだれ?」「知的でハンサムよね」と女性陣にモテモテ。

ついには告白されて――?!

なんだか、想定外の方向へ進んでいく。

 

ユーモラス&コミカルな風合いが

実に楽しいのですが

反面、映画には常に悲しみや寂しさが同居してもいる。

 

面会にこない子どもたち。「帰りたい」と言うのに、帰れない老人。

入居者たちは「そんなものよ」と割り切っているけれど

でも、じゃあ

人は何のために子を残すんだろう?――って

考えずにいられない。

 

 

どんな結末が待っているのか?!は

観てのお楽しみですが

 

 

同じ痛みを分かち合い、真に共感できるのは、

やっぱり同じ痛みを知る人なのか、と

笑いながら、真理にたどり着いたりもして。

 

これは、いつか、みな行く道。

まずは親ごさんを大切に!(ワシもね・・・)

 

★7/9(金)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「83歳のやさしいスパイ」公式サイト

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